タンパク質というのは、人の体の様々な組織をつくる材料になる。そのため、赤血球の材料が少ないと「貧血」になり、また、血管を作る材料が少ないと「脳出血」、免疫細胞を作る材料が不足すると「肺炎」「結核」の発症リスクを高める。「骨折」や「転倒」などは、筋肉を作る材料が少ないと起きてしまうのだ。
 「現代の“新栄養失調”は、カロリーは摂っているが、ビタミン類、中でも神経機能を正常に保ち疲労回復に役立つビタミンB群、ミネラル、免疫機能の調整に役立ち粘膜を強くするビタミンD、そして体を作るタンパク質が決定的に足りていません。加えて、男性は亜鉛、女性では鉄分が少ないため、いろいろな不調が出て当然です」(久富院長)

 こんな報告がある。秋田県大仙市では、平均寿命が非常に低かった。そこで、アルブミン値を積極的に上げる食事指導が取られた。
 1日の目標値は、成人男性60g、成人女性50gとし、牛肉なら300g、卵なら10個、魚の切り身なら3〜4切れに相当するが、毎日摂るのは難しい。しかし肉、魚、卵、乳製品、大豆のタンパク質を少しでも食べたら指導に従って用紙に丸を付けるようにした。結果、万遍なく十分な量のタンパク質を摂ることができ、アルブミン値は上昇。動脈硬化が減り、平均寿命がグンと上昇したという。

 “新栄養失調”を改善するには、前述した通り「ビタミン」「ミネラル」「タンパク質」を取り入れた食事を徹底する以外に手はない。“安く腹いっぱい”だけを考えていると、糖質中心になってしまうため、むしろ糖質は食事の最後に食べ、極力減らす意識を持つべきだという。
 新潟大学病院の元管理栄養士で料理研究家・林康子氏はこう言う。
 「新栄養失調と言われるものは食事に偏りがあると生じますが、その大きな原因は“野菜不足”です。ただし、野菜をただ食べるだけではなく、野菜の持つ栄養素をしっかり吸収できているかどうかを考える必要があります。野菜によっては、生で食べるよりも、切ったり潰したり、あるいは加熱するなど、しっかりと調理した方が吸収率の高まるものがあるからです」

 海外の研究結果によると、調理することでリコピン(トマトの赤い色素)は3.8倍、β-カロテンは1.5倍も吸収率が上がるという。最近の調査では、普段生野菜で野菜を摂っている人は約90%いるものの、「調理した方が吸収率の上がる栄養素に浸る」ことを知っている人は1%にも満たないというから問題だ。
 林氏によると、野菜の栄養は細胞壁に包まれており、加熱・破砕など調理することで、細胞壁が壊れ、栄養が吸収されやすくなる。
 また野菜などは旬の時期に栄養価が高く、これから夏にかけてはトマト、菜の花、春人参がリコピンやβ-カロテンの豊富な旬の野菜なので、例えばトマトと卵を使ったトマトスクランブルエッグなどがおススメだという。また、「調理法が面倒だ」「時間がない」という人には市販の野菜ジュースも有効だ。

 “飽食の時代”だからこそ、自分の体に必要な食と栄養は何かを真剣に考えるべきなのだ。