“今度は”成功するか、Facebookの新サーヴィス「Instant Articles」

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Facebookのアプリ上で、フィードに表示されたニュースを読むことのできる新サーヴィス「Instant Articles」。オンラインメディアのあり方を変えうるこの新機能のベースには、ある“失敗作”の存在が見え隠れする。

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フェイスブックが2014年3月にリリースした「Paper」は、奇妙なアプリだった。このアプリは、豊富な機能をもったニュースリーダーで、Facebookアプリからニュースフィードの機能だけを取り出したものだったが、すぐに姿を消してしまった。しかしいま、このアプリの開発がようやく身を結んだようだ。少なくとも、フェイスブックにとっては。

フェイスブックは5月12日(米国時間)、「Instant Articles」と呼ばれる機能を発表した。これは、大手メディアのニュース記事をFacebookのiPhone向けアプリ内ですべて表示できる機能であり、ユーザーはリンクをクリックしてどこかのWebページに飛ぶ必要がない。つまり、『The New York Times』『The Atlantic』『The Guardian』といったメディアの最新記事を読むのに、“アプリ外に出なくても済む”のである。

フェイスブックがこのような機能を準備しているという噂はかなり前からあったが、メディアが自社のコンテンツをコントロールする力が失われると懸念する声もあり、議論になっていた。しかしフェイスブックにとっては、これは理にかなった取り組みだ。

なにより、Instant Articlesをつくったのは、あのPaperをつくったチームなのである。

「Paper」という失敗作に学んだ

新しいタイプのメディアである「BuzzFeed」は早くも5月12日の夜、このプログラムに参加したことを明らかにし、Instant Articles向けの記事サンプルを掲載。この小さなサンプル記事はPaperと見た目がそっくりで、デザインもソフトウェアの設計も、ユニークで印象深いものに仕上がっている。

「TechCrunch」の記事によれば、Instant Articlesの開発を指揮したのは、Paperのプロジェクトマネージャーを務めたマイク・レックハウと主任デザイナーを務めたマイク・マタスだったという。「われわれは、(Paperから)学んだ多くのことをこのプロジェクトに生かしました」とレックハウはTechCrunchに語っている。学んだ内容には、記事上の画像やフォントの処理方法などが含まれるという。

また、Paperのエンジニアであるベン・カニンガムは、Twitterでさらに具体的なことを明らかにした。カニンガムによれば、Instant Articlesの開発に利用した「AsyncDisplayKit」というツールは、iPhoneのマルチコア・プロセッサーを生かして、Paperの複雑なユーザーインターフェースですばやい操作と応答を実現するために使われたものだという。Instant Articlesがウェブブラウザーより優れていることを示すには、何といっても、スピードが最も重要な要素になるのだ。

Instant Articlesでは記事内の広告収入は100%メディアのものになるが、メディアが記事の横に自社の広告ではなくフェイスブックの広告を掲載することを選んだ場合は、フェイスブックは30%の手数料を取ることができる。つまりフェイスブックは、Paperという金銭的利益をもたらす手段をもたない無料アプリを、広告収入を生み出す新たな実験作として発表したのだ。

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フェイスブックのやり方

このアプリが生まれた経緯は、フェイスブックがどのように経営されているのか、そして、これまでどのように経営されてきたのかをよく思い起こさせる。

「テクノロジー」が先に来て、収益を含む「目的」は二の次。このようなやり方をとっているのは、フェイスブックも、ほかの多くのインターネット企業も同じだろう。しかしフェイスブックは、シリコンヴァレーにある多数の競合他社とは異なり、このようなやり方から実際にお金を稼ぐ方法を見つけ出している。

マタスが、少数のデザイナーやエンジニアとともにPaperのアイデアを考え出したのは、彼の前の会社である電子書籍出版会社Push Pop Pressがフェイスブックに買収されたあとのことだった。Paperのチームメンバーでアップルの元従業員であるスコット・グッドソンは2014年3月、Paperの目的は独立したニュースリーダーアプリをつくることにとどまらないと述べている。「目標は、モバイルデヴァイス上でのFacebook体験を、最初から再検討することでした」

Paperは、幅広いユーザーを獲得できなかった。「青色の大きなFacebookアプリ」からは完全に独立したアプリだったし、「Facebook Messenger」のようなすぐに使える手軽さがなかったからだ。しかし、デザインと技術の面ではかなりの進歩を見せたアプリで、表示のされ方はもちろん、動作のすばやさという点でも素晴らしいものだった。このアプリが次に続くアプリのモデルとなりうることは、最初から明白だったのだ。そしていま、このアプリは実際にモデルとなっている──青色の大きなFacebookアプリでニュースを表示する方法も含めて。つまり、「当初の目標」からかけ離れているわけではないのだ。

Paperは、「Facebook Creative Labs」と名づけられた取り組みの下で開発された初のアプリだった。名前に「Lab」とあるが、実際に研究施設があるわけではなく、専従のチームさえいない。つまるところこれは「アイデア」だ。取り組みの目的は、うまくいくかいかないかはともかく、新しいアイデアを探求することにある。

Paperは、多くのユーザーを獲得するという点ではうまくいかなかった。Instant Articlesはうまくいくかもしれないし、そうではないかもしれない。しかしこの新たな機能は、「フェイスブックのやり方」をとてもよく示すメタファーだといえるだろう。

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