【NBAプレーオフ2015・カンファレンス・ファイナル展望】

 新時代の到来を告げるかのように、近年のプレーオフ上位陣とは一変して、今季のカンファレンス・ファイナルにはフレッシュな4チームが駒を進めた。

【カンファレンス・ファイナル対戦カード】
[イースト] アトランタ・ホークス(1位)対クリーブランド・キャバリアーズ(2位)
[ウェスト] ゴールデンステート・ウォリアーズ(1位)対ヒューストン・ロケッツ(2位)

 クリーブランド・キャバリアーズのカンファレンス・ファイナル進出は、2008−09シーズン以来6年ぶり。アトランタ・ホークスの進出は、1970年に東西カンファレンス制が導入されて以来、初の快挙である。対するウェストも、ゴールデンステート・ウォリアーズは1975−76シーズン以来39年ぶり。そしてヒューストン・ロケッツは1996−97シーズン以来、18年ぶりのカンファレンス・ファイナル進出となった。

 まずはイーストのカンファレンス・ファイナルに進出した、ホークスとキャブスの勝ち上がりを振り返ってみよう。

 第1シードのホークスは、カンファレンス・セミファイナルで第5シードのワシントン・ウィザーズと対戦。結果、ホークスがウィザーズを4勝2敗で退けたものの、勝者と敗者を分けたのは、ほんのわずかな差だった。

 第3戦はポール・ピアース(SF)のブザービーターでウィザーズが勝利すれば、第5戦はアル・ホーフォード(C)が残り1.9秒でオフェンスリバウンドからシュートをねじ込み、逆転でホークスの勝利。そして第6戦はホークスの3点リードで迎えた試合終了寸前、ブザーが鳴り響くと同時にピアースが体勢を崩しながらスリーポイントシュートを放つと、ボールはネットの中へ。しかし、リプレイ判定の結果、ピアースの手からボールが離れる直前に試合が終了していたことが判明し、ホークスが薄氷の勝利でカンファレンス・ファイナルへの切符を掴み取った。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 試合後、ホークスのデマール・キャロル(SF)は、「バスケの神様が、俺たちの味方をしてくれたようだ」とコメント。対する敗者となった37歳のピアースは、「現役を続行するかどうかは未定だ」と語り、コートを後にした。もし、このままピアースがユニフォームを脱ぐことになれば、あれが現役最後のシュートとなる。そうなれば、あのシーンは後世まで語り継がれることになるだろう。

 また、第2シードのキャブスと第3シードのシカゴ・ブルズが対戦したカンファレンス・セミファイナルも、壮絶な激戦だった。

 1勝1敗で迎えた第3戦はデリック・ローズ(PG)のブザービーターでブルズが勝利し、第4戦はレブロン・ジェームズ(SF)のブザービーターでキャブスが勝利。さらに第5戦も残り49秒、キャブス2点リードの場面で、ローズのシュートをレブロンがブロックして試合を決した。

 そして迎えた第6戦。第2クォーターにキャブスのカイリー・アービング(PG)が左ひざのケガを悪化させてロッカールームへ。ファーストラウンドでケビン・ラブ(PF)が肩を脱臼して戦線離脱しているキャブスは、「ビッグ3」のふたりを欠く状況となり、絶体絶命かと思われた。しかし、ここで「ゴートゥーガイ(※)」が現れる。オーストラリア出身の2年目ガード、マシュー・デラベドバだ。この日、11本中7本のシュートを沈め、チームハイの19得点をマーク。さらに好ディフェンスでローズを封じ、キャブスが4勝2敗でブルズとの接戦を制した。

※ゴートゥーガイ=大事な場面で力を発揮する選手。

 ホークス対キャブスのレギュラーシーズンの対戦成績は、ホークスの3勝1敗。しかし、キャブスはレギュラーシーズンからスターターが様変わりしているため、どちらが有利とは一概には言えないだろう。現地アメリカでは、「キャブス有利」の声が多い。

 勝敗を分けるポイントは、以下の3点ではないだろうか。

 ひとつ目は、爆発的な攻撃力で自ら得点を奪うアービングと、ホークスの全員バスケットを統率するジェフ・ティーグとのポイントガード対決。チームを勝利に導くのは、どちらのタイプのポイントガードなのか。ふたつ目は、ディフェンスに定評のあるホークスのキャロルが、「完璧に抑えるのは不可能」と言われているレブロンを、どの程度抑えることができるか。そして3つ目は、リーグ屈指のスリーポイントシューター、ホークスのカイル・コーバー(SG)の復調はあるのか。レギュラーシーズンで49.2%を誇ったコーバーのスリーポイントシュート成功率が、ウィザーズとの第5戦では5本中1本(20%)、第6戦で7本中0本(0%)と、極度のスランプに陥っている。

 今回のシリーズは、「対照的なチームカラーの激突」でもある。キャブスのようなスター中心のチームと、ホークスのように選手全員で勝負するチーム、どちらがNBAファイナルの切符を手にすることができるのか。今後のNBAのトレンドを占う一戦とも言えそうだ。

 一方、ウェストで勝ち上がってきたウォリアーズとロケッツのカンファレンス・セミファイナルを振り返ってみよう。

 第1シードのウォリアーズは、第5シードのメンフィス・グリズリーズとの第1戦を101対86で先勝し、ファーストラウンド(対ニューオーリンズ・ペリカンズ)のようにスウィープするかと思われた。しかし、第2戦でグリズリーズのマイク・コンリー(PG)が顔面骨折から復帰すると、ディフェンスの激しさを取り戻したグリズリーズが勝利。さらに第3戦もグリズリーズが制し、ウォリアーズは1勝2敗と追い込まれる展開となった。

 そんな中、爆発的な攻撃力でウォリアーズを蘇(よみがえ)らせたのが、今季のレギュラーシーズンMVPを受賞したステファン・カリー(PG)だ。第4戦で33得点の活躍を見せたことで、再び息を吹き返すことに成功。その後、3連勝でグリズリーズを下し、カンファレンス・ファイナル進出を決めた。

 そして、第2シードのロケッツと第3シードのロサンゼルス・クリッパーズとのカードは、唯一カンファレンス・セミファイナルで第7戦までもつれ込んだ。レギュラーシーズン成績は同じく56勝26敗。対戦成績も2勝2敗。ほぼ同じ戦力を有す両者を分けたのは、「勢い」だったのではないだろうか。

 優勝候補のサンアントニオ・スパーズを破って波に乗るクリッパーズは、司令塔のクリス・ポール(PG)をケガで欠いていたものの、ブレイク・グリフィン(PF)が第1戦で26得点 14リバウンド 13アシストのトリプルダブルを記録して先勝。第2戦はロケッツのジェームズ・ハーデン(SG)の活躍で勝利を奪われるも、第3戦は復帰したポールが12得点7アシストとチームを牽引して勝ち越し。さらに第4戦も33得点差でクリッパーズに大勝し、3勝1敗でシリーズに王手をかけた。

 しかし、ここからロケッツが意地を見せる。第5戦、ハーデンが26得点11リバウンド10アシストのトリプルダブルをマークして2勝目を挙げると、第6戦は第3クォーター終盤に19点のリードを奪われる絶望的な状況から、ジョシュ・スミス(SF)やコーリー・ブリューワー(SG)の活躍で追いつき、最終的には12点差の逆転勝利。シリーズの対戦成績を3勝3敗のタイに戻したのである。

 こうなると勢いは、完全にロケッツだった。第7戦、エースのハーデンが31得点、トレバー・アリーザ(SF)が6本のスリーポイントを沈めて22得点を奪う猛攻を披露。第7戦までもつれ込んだ激闘は、ロケッツが制してカンファレンス・ファイナルへと進んだ。

 ウォリアーズ対ロケッツの注目は、間違いなく「カリー対ハーデン」の対決だろう。今季のレギュラーシーズンMVPを決める記者投票で、ハーデンはカリーに次ぐ2位という結果だった。このシリーズは、NBAファイナルに進出するチームを決めるだけでなく、現在リーグで最も価値のある選手を再び決める、「ファイナルMVP」に一歩近づくための戦いでもある。チームを勝利に導くことのできる「真に価値のある選手」は、カリーか、ハーデンか――。直接対決で雌雄を決する。

 NBAファイナルの第1戦は、カンファレンス・ファイナルの進行具合にかかわらず、現地6月4日に行なわれることが決定した。約2週間後、コートに立っているのは、どのチームだ?

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro