映画『スキゾポリス』予告編スクリーンショット

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世界で最も有名な映画祭「第68回カンヌ国際映画祭」が5月13日からスタートを切り、現在、祭りの熱狂の真っ只中、毎日のようにスター俳優や有名監督らの華やかな姿が現地から伝えられてきている。

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映画ファンなら誰しも、あのレッドカーペットを歩いてみたいと思っていることだろう。

そんな憧れの銀幕の世界の裏では、「低予算映画」、「B級映画」と呼ばれる作品も星の数ほど生み出されていることを忘れてはならない。

将来の映画業界を担う監督たちのキャリアの原点ともなるB級映画では、低予算であるからこそアイデアや技巧が問われ、若手監督たちは日夜その才能が競い合われている。

今回は、ホラーやスプラッターなどの王道B級映画だけでなく、低予算ながらも製作陣の独創性あふれる作品を紹介しよう。

巨匠が手がけた低予算映画『スキゾポリス』


本作が収録されているDVD「スキゾ・ポリス/グレイズ・アナトミー」


本作が収録されているDVD「スキゾ・ポリス/グレイズ・アナトミー」



1996年に初公開された『スキゾポリス』は、スティーブン・ソダーバーグ監督というハリウッド屈指の映画監督が手がけたアヴァンギャルド(前衛)映画という、映画史でも他に類を見ない作品だ。

ソダーバーグ監督は処女作『セックスと嘘とビデオテープ』で、1998年、カンヌ国際映画祭の最高賞となる「パルムドール賞」を受賞。衝撃的な映画界デビューを果たしたが、意外にも以降の作品は興行的な成功を収められず、ハリウッドから見放されていた時期があった。

そんな時に、ソダーバーグ監督が親友5人と資金を集めてつくった映画が本作である。スタッフが少ないこともあり、監督自身がカメラマンや俳優を兼任している。

低予算かつ、小規模な製作環境ゆえか、一見すると、学生映画と見間違えてしまうような作品だが、その自由な創作スタイルは、実験性と前衛性に溢れている。また、監督自身にとってもブレイクスルーを起こすきっかけとなった作品とも言える。

『スキゾポリス』から4年後の『トラフィック』でソダーバーグ監督は「アカデミー賞」監督賞を受賞。その後も、「オーシャンズ」シリーズなどヒット作を立て続けに完成させた。

デビュー作でカンヌを制した天才映画監督が、飽くなき探求心を焼き付けた隠れた名作である。

B級映画がエモい?『プレスリーVSミイラ男』


『プレスリーVSミイラ男』



2002年に製作された『プレスリーVSミイラ男』は、タイトル通りの王道B級映画とも言うべきコメディホラー映画だ。

「世間には亡くなったと思われている、エルヴィス・プレスリーが、実は老人ホームで余生を送っていた」という強引な設定の上に、エジプト展で展示されていたミイラが突然生き返り、突如老人ホームを襲いはじめ、エルヴィスは施設内の友達、ジョン・F・ケネディと共にミイラ男に立ち向かっていく……。

ここで、従来のB級映画ならば笑われて終わってしまうところだが、本作はアメリカのホラー作家協会が主催する「ブラムストーカー賞」の脚本賞を受賞しており、なぜか評論家から高評価を受けている。

古き良きアメリカ文化を再構築し、コメディホラーに見事に仕上げたあたりは、たしかにB級映画と呼ぶには惜しいだろう。

また、老人とミイラのダウンテンポなアクションシーンは、ただ笑い飛ばすだけではもったいない、どこかノスタルジックな感動すら覚えてしまう。

日本の伝説的学生映画『鬼畜大宴会』


『鬼畜大宴会』



鬼畜大宴会』は、モスクワ映画祭で最優秀作品賞に輝いた映画『私の男』などで知られる、熊切和嘉監督の大学時代の卒業制作作品だ。

低予算はもちろんのこと、学生たちが手がけた映画だが、国内映画祭での受賞をはじめ、ベルリン映画祭に招待されるなど輝かしい功績を残した。

70年代の学生運動の様子を描いた本作は、実際にスタッフ陣や俳優たちが学生ということもあり、妙な生々しさを醸し出している。

学生時代から垣間見えた熊切監督の映画センスは、映画ファンを惹きつけるのはもちろんのこと、日本の学生映画界におけるひとつの到達点を示しているだろう。

お馬鹿カルト映画のドキュメンタリー『悪魔の毒々映画をカンヌで売る方法』


dokudoku



最後に紹介するのは、人気B級映画「悪魔の毒々モンスター」シリーズで知られる、映画制作会社のトロマ・エンターテインメントがカンヌ国際映画祭でプロモーションする様子を収めた、『悪魔の毒々映画をカンヌで売る方法』だ。

映画のメイキングであれば、目にする機会も数多くあるが、実際に映画を売りさばく宣伝や買い付けの段階を収めたドキュメント映像は貴重である。

日本国内では、B級映画よりさらに下品で強烈なインパクトを与える「Z級映画」とまで形容されるトロマ社の映画だが、格式高いカンヌ映画祭の舞台でどのように自社映画をアピールするのだろうか。

意外にもしっかりとした敏腕広報が映画を売りさばいている姿を期待するところだが、実際は、まったくそんな事はなく、むしろ逆。

社長自身が映画祭に乗り込み、なぜかフランスの海で血糊まみれになり、自らが連れてきた美女に馬乗りにされ、最終的には人工呼吸されるという展開……。

プロモーション以前に、全く意味が分からないが、ここまでくるとZ級映画の製作会社のブランディングとしては完璧なのかもしれない。