『普通の人がお金持ちになりたくなったら』(井口晃著、ワニブックス)の著者は、中学、高校ではいじめにあって計5回も転校し、大学は引きこもりで2度も中退。さらには就職経験もないという人物。

にもかかわらず、「人生を変えるメッセージを発信する"エキスパートコーチ"」という立場にいる現在は、お金に困らない理想のライフスタイルを手に入れているのだそうです。それは、「お金持ちが必ず持っている、お金に関しての正しい思考法、つまり『お金持ち思考』を身につけたから」なのだとか。


最初の一歩となるのが、今の自分が持っている「貧乏思考」を捨て、本書が提唱する「お金持ち思考」を身に付けることです。(中略)あとはお金を稼ぐためのスキル向上と、それを可能にするための人間関係の構築、自分を取り巻く環境を変えることに全精力を注いでいくべきです。(「まえがき」より)


では、「貧乏思考」と「お金持ち思考」の違いとはどのようなものなのでしょうか? 第1章「お金持ちの思考 貧乏人の思考」から、いくつかを引き出してみます。

教科書ベースか、実社会ベースか


「お金を稼ぐためには儲かっている企業で出世をしないといけない。そのためには人よりどれだけ多く勉強したかにかかっている」

著者によれば、これが「時代遅れのお金持ち発想」。特に大企業偏重の日本では、お金を稼ぎたいなら「一流大学を出て、大企業で出世するエリートにならなければいけない」と考えてしまいがち。教科書的なこの考え方を、「アカデミック(学術的)エリート」と呼ぶそうです。

しかし現実的に、アカデミックエリートとして頂点をとってお金を得られる人は、ほんのひと握り。また、教科書的なお金儲けの仕組みは、いまの時代では通用しないといいます。

一方、いまの時代のお金持ちはこう考えるのだとか。


「組織や体裁にとらわれず、時代が求めることを自分たちから情報発信していけば、お金は儲かる」(44ページ)


つまり、現在のリアルな社会で、消費者が本当に求めている商品を売ることに注力すればいいという発想。アカデミックに対抗したこの考え方は、「ストリートスマート」。

従来型の発想と大きく異なるのは、所属組織からお金をもらうのではなく、自らのアイデアやスキル、ノウハウによって社会に価値を与え、自らお金を生み出していく姿勢を持っていること。ベンチャー企業ほど魅力的な商品を生み出しているのがその証拠だと、著者は主張しています。

だからこそ、お金持ちを目指す第一歩は、「雇われ発想」を真っ先に捨て、自分の力でマーケットをつくり出すためのアイデアやスキル磨きに集中することだといいます。(42ページより)


他人を利用するか、人間関係を大切にするか


「お金を稼ぐことが人生の目標である。そのためには利用できる人は利用しつくし、日頃から自らの支出を減らして相手からの収入を増やすことに専念すべきである」

これが、失敗する起業家の考えることだといいます。お金自体を最優先する人は、ビジネスパートナーとの関係にしても、単発で終わるケースが多くなるもの。ビジネスの世界ではコスト意識を持つことが基本だとはいえ、そこだけを追求するのは間違いだということ。

お金を優先する人の頭のなかでは、人間関係よりも「自分をいかに守るか」が優先されているもの。でも、それでは信頼関係は保てなくて当然です。一方、成功する起業家はこのように考えるそうです。


「大きな富とは、良好な人間関係を築いた成果物である。しかし、良好な人間関係を構築することはお金を稼ぐことよりも難しい。だからこそ、人付き合いのための苦労や出費は一切いとわない」(48ページより)


お金持ちになる人は、自分のお金のことよりも対人関係を大切にするもの。それは「敵をつくらない」といった保身的な動機ではなく、「ビジネスで成功するには仲間を増やすことがなにより重要」だということを経験として知っているからだといいます。

日ごろから人づきあいを大切にしていれば、さまざまな局面でさまざまなサポートをもらえるもの。そうした援軍なしに、安定的で大きな富を得ることは至難の技。いわば良好な人間関係を築くコツは、相手に価値を与え続けること。「ギブアンドテイク」のような損得勘定は忘れるべきだと、著者は主張しています。

結果がすぐに出るわけではないかもしれないけれど、どんどん人と会って、いい仲間を見つける。そうすれば、お金が必ずあとからついてくる。人間関係こそが究極の資産だということです。(46ページより)


成果主義に賛成か、反対か


「ようやく成果主義の時代になった。交渉力とプレゼン力に磨きをかけてバンバン契約をとって、給料をがっぽり稼いでやる!」

これが、貧乏人の営業マンの発想だそうです。たしかにこの営業マンは、より多くの契約をとってきて年収が2倍になるかもしれません。しかし、それでも従業員にすぎないので、経営者よりも多く稼げるとは考えにくい。その時点で、お金持ちへの道のりはほど遠いというわけです。

そもそも、自分の能力を磨く重要性に気づいたにもかかわらず、「会社勤め」という大前提のなかで考えていることが問題だと著者はいいます。

大企業が成果主義を導入する意図は、表向きには社内に競争原理を働かせて社員のモチベーションを喚起するといったこと。しかし現実的には、人材流出防止の側面が大きい。成果を出す人に独立されてライバルが増えるくらいなら、エサを多めにあげて社内で活躍してもらった方が"割安"だという考え方です。

一方、お金持ちの営業マンはこう考えるといいます。


「ようやく能力が重視される時代がきたな。でも利益だけを追い求めるという会社の方針には納得できない。そうだ、これを機に独立して、自分が培ってきた営業のスキルを人に伝授するビジネスをしてみよう!」(53ページより)


お金持ちになりたいなら、一般的なレールから降りてみることが大切だと著者。なぜなら一般的なレールを走り続けたところで、小さな成功はあっても大きな成功はないから。レールを降りた時点で、「その他大勢」から差別化を図ることができ、場合によってはオンリーワンの市場をつかむことも可能だというわけです。

また、人から搾取するのではなく、いかに人に価値を与えることができるかと発想をスイッチできるか、そこもお金持ちと貧乏人の分かれ目になるといいます。(50ページより)


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貧乏人とお金持ちという単純な比較には、個人的に少しばかり抵抗感もあります。が、「根本的な発想を変える」というところに焦点を合わせることができれば、参考になる書籍かもしれません。


(印南敦史)