IPO前に企業価値を高めるべく一度M&Aに身をゆだねるという前例のない道程を経たSFPダイニング(3198)。社長以下すべてが実名で登場する、珍しいタイプのビジネス経済小説だ。

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競争過多で、成長企業でさえ瞬く間に凋落してしまう外食産業。そんなレッドオーシャンの中で、高業績を上げ続け、2014年12月に株式上場を果たした、<鳥良><磯丸水産>のSFPダイニング(3198)。この度、その創業者・寒川良作氏(現・同社会長)を主人公にしたビジネス経済小説『約束のとき』が発売された。“ビジネス経済小説”と謳う本書には、同社がM&Aを経てIPOに至るまでの過程が赤裸々に描かれている。登場人物は、すべて実名実在――著者である白崎博史氏に執筆のきっかけから刊行までをお話しいただいた。

編集部 ビジネス経済小説の「約束のとき」、登場人物は実名実在の人物で、ストーリーもほぼノンフィクションと、ちょっと珍しいタイプの書籍ですが、そもそも、執筆のきっかけを教えていただけますか?

白崎氏(以下、白崎) 僕の自宅の近所や繁華街で、<磯丸水産>という、いつもにぎわっているお店があって、「どんな会社が運営しているんだろう?」とネット検索したのがはじまりでした。<鳥良>という手羽先唐揚の店舗も展開していることが分かり、ますます興味が湧きまして…。

編集部 その過程で創業者であり、小説の主人公となる寒川良作氏(同社会長)を知ったわけですね?

白崎 そう…まず、「あっ、いい名前だ!」と思いましたね。もちろん、そのときはまだ、<磯丸水産>の小説を書こうとも、実名小説にすることも考えてなく、寒川良作さんの顔と名前に、創作意欲がフッと湧き出た感じでした。2013年の秋のことです。調べてみると、SFPダイニングという名のその企業は、ファンド会社に一度買収されるなど、創業から30年あまりの歴史の中でとても興味深い沿革がありました。おぉ、これは、とにかく、寒川会長に会ってみなきゃ、と(笑)。

編集部 いままでの経済小説はモデルがあったとしても、登場人物は架空の名前というのが通例ですが、全員が実名というのが驚きました。

白崎 はい。僕はノンフィクションライターではなく小説家なので、「小説」という体裁を取ってはいますが、ノンフィクションと言っても良い…すべてが事実であり、実際に起きた出来事だけを書き連ねました。「作り話」にしたくなかったので、実在の人物をすべて実名で書かせてもらったわけです。

 二子玉川にある自分たちの会社・サムカワフードプランニングの本社にも適当な部屋があるにはあるが、見慣れない人間が出入りして、社員たちの注意を引いたり、断片的にでも、この話が彼らの耳に入るのはまずい。水面下における秘密の話として進めるために、リスクを極力減らしたいというのが寒川たちの考えだ。
 それは幸亀とて同じである。日本M&Aセンターは、企業同士のマッチング、言わば、「見合い」を仲介する会社だが、不動産や他の商品の仲介と決定的に違うのは、売り手となる企業の情報をオープンにできないということにあった。
オーナーが会社(株式)を売ろうとしていることを、従業員や取引先、銀行などに悟られることは、万に一つでもあってはならないのだ。(『約束のとき』第一章:決断のとき より)

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