『ぼくらの近代建築デラックス!』万城目 学,門井 慶喜 文藝春秋

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 東京の街を歩いていると、ふと目に留まる、さまざまな意匠を凝らした近代建築。もっとも有名なところでは、1914年に建築家・辰野金吾の設計により創建、2012年には約500億円をかけ開業当時の赤レンガ駅舎が復原されたことで話題を集めた、東京駅があげられるのではないでしょうか。

 2010年から2012年にかけて、大阪にはじまり京都、神戸、横浜、東京の5つの都市にある近代建築52件を巡ったのは、2人の人気作家――『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』などで知られる小説家・万城目学さんと、『キッドナッパーズ』をはじめとし、推理作家として活躍中の門井慶喜さん。

 本書『ぼくらの近代建築デラックス!』では、万城目さんと門井さんが現地を訪れ、実際に近代建築を目の前にしながら、その魅力、設計時におけるエピソードやウンチクの数々を語っていきます。また、このたびの文庫化に際して、新たに台湾編も収録されています。

 万城目さんは、自らの小説との関連性にも触れながら、近代建築、なかでもお気に入りの建築家のひとり・渡辺節の魅力について次のように述べます。

「僕は最初、辰野金吾以外はぜんぜん知らずに、この建築散歩を始めました。でも、予備知識や先入観なしに眺めても、渡辺節の建築は素敵なんですよ。わかりやすくて、面白い。小説でも僕、そういうのが理想やなあと思うんですけれども、実際に書くのは難しいんですよね。誰もがわかって、なおかつ面白い。この難題を、渡辺節はやり遂げている。綿業会館のような瀟洒な建築から、梅小路の機関車車庫のような産業遺産に至るまで、面白くて、わかりやすい」(本書より)

 横浜にある旧日本綿花横浜支店もまた、その渡辺節による建築。1928年より、日本大通りの玄関口に建つ旧日本綿花横浜支店ですが、その建築の説明はもちろんのこと、日本大通りの歴史についても門井さんは語ります。

「横浜が開港して間もないころ、大火事で町が焼けたんですね。そこで街のまんなかを――横浜公園から海岸までを――ドーンと幅三十六メートルの巨大道路でぶちぬいて、半分を日本人町、半分を外国人居留地ということにした。要するに火を出すのは木造の家の多い日本人町にきまってますから、外国人が延焼をいやがったわけです」(本書より)

 日本初の西洋式街路がつくられる背景にあった事情。本書で語られるこうしたエピソードの数々からは、普段何気なく目にしている建物や道の背景にも、長年に渡る歴史やストーリーがあることを伺い知ることができます。

 街中にある近代建築の数々。改めてじっくりと眺めてみると、面白い発見ができるかもしれません。