■5月特集 いま見るなら、女子ゴルフ(2)

 賞金ランキングトップに立っていながら、なかなか勝ち星に恵まれなかったイ・ボミ(26歳/韓国)が、ほけんの窓口レディース(5月15日〜17日/福岡県)で今季初勝利を飾った。最終的には通算10アンダーまで伸ばし、2位に4打差をつける圧勝劇を披露。大会連覇という快挙も遂げて、賞金女王の大本命がいよいよエンジン全開である。

 それにしても、苦労の末の一勝だった。優勝に手が届きそうで届かない――それが、今季のイ・ボミだったからだ。

 ほけんの窓口レディースの前まで、今季は開幕戦から9試合に出場し、トップ10フィニッシュが7回。第4戦のアクサレディス(3月27日〜29日/宮崎県)からフジサンケイレディス(4月24日〜26日/静岡県)まで、出場4試合連続2位というツアー記録を刻むなど、安定感はピカイチだった。

 9試合中、オーバーパーを叩いたのも、Tポイントレディス(2オーバー、12位タイ。3月20日〜22日/佐賀県)のみ。賞金ランキングをはじめ、メルセデス・ランキング(※)、平均ストローク、平均パット数1位と、各部門の成績は軒並み上位に名を連ね、優勝していないことが不思議なくらいだった。
※日本女子ツアーの各大会での順位や出場ラウンド数をポイントに換算し、年間を通じての総合的な活躍度を評価するランキング。

 間違いなく好調だったが、結果がすべてのプロの世界。優勝できていない現状に、イ・ボミ自身、少なからず歯がゆさを感じていたのだろう。あと一歩まで迫りながら、勝利を得られていない理由について、彼女はこう分析していた。

「いちばん大きなものは、メンタルかな、と感じています。優勝するだけの気持ちの強さが足りなかったんだと思います。あとは、今年からアイアンを変えたので、まだショットの精度に満足できていない部分があります。ピンを狙ったつもりなのに、少し離れた場所にボールが落ちてしまうことが結構あるんですよ。イメージよりも距離が出てしまっているというか......。その点も(結果を出せない)要因のひとつだと思います。

 ともあれ、そうした細かい部分については、試合に出場しながら調整していくしかありません。その中で、徐々によくなっていくと思います。とにかく今は、(結果にこだわり過ぎず)焦らずにやっていきたいですね」

 惜しかったのは、前述したアクサレディスからの4試合。ちょっとしたことで、イ・ボミが優勝を飾ってもおかしくなかった。その連続2位に終わった4試合について、専属キャディーの清水重憲氏はこう振り返る。

「4試合連続2位というのは、"優勝に届かなかった"とネガティブな捉え方もできますが、逆に言えば、そんなことは誰にでもできることではない快挙。それだけ、安定した結果を残せるのは、トッププロの証です。だいたい2位になった試合は、優勝スコアがすべてひと桁台。それほど難しいコースだったわけです。そうした条件において、毎週アンダーパーで回ることはなかなかできることではありませんし、何ら悲観することはないと思っていましたよ」

 イ・ボミが絶大な信頼を置いている、キャディーの清水氏。そんな清水氏の後押しを受けて、イ・ボミも腐らずに前を向いていられた。そして、清水氏から常に言われる「信じて打とう」という言葉が、プレイ中には大きな支えになっていたという。

「(清水氏には)メンタル面で支えになってもらっています。繰り返しになりますが、結局大事なのは、自分のショットの精度。方向性などがより正確なものになっていけば、もっとスコアを伸ばしていけると思うんです。

 必要なことは、今までどおりにやること。結果が出ていないからと言って、何か特別なことをやる必要はないと思っています。実際、昨年よりも好調ですし、この先まだ20試合以上もあります。一生懸命やっていけば、自ずと優勝は見えてくると思います」

 そう言って、笑顔を見せるイ・ボミ。優勝できないことにもどかしさを感じながらも、焦りや切羽詰った感じはなかった。

 それでも、彼女を取り巻く環境は、昨年父親が亡くなってガラッと変わった。「私が"カジャン(家長)"になった」と、イ・ボミは表情を引き締める。

「父が亡くなって、私の家族は、母と私を含めた4姉妹の5人。その家族を、私が支えていかなければいけない立場になりました。それが、最初はすごくプレッシャーでした。私が家族みんなの生活を支える立場になるなんて、想像もしていなかったですから。でも、母や姉妹も、プロゴルファーである私をずっと支えてきてくれました。みんなのためにも、私が父親の役割をしっかりと果たして、改めてがんばっていかなければいけないな、と思っています」

 イ・ボミは突然、一家の大黒柱となった。26歳という若さで、家族の生活を支えていかなければならなくなった。両親や姉妹のために献身することは、韓国人の美徳とするところだが、その重圧は決して小さいものではないだろう。

「もちろん、目標は賞金女王です。それには暑い夏場を、スタミナ切れしないで、どう乗り切っていくかがポイントになってくると思います。そこで、スコアを落とさないようなゴルフができれば、結果もついてくると思いますし、賞金女王にも近づいていけるのではないでしょうか」

 ひとつ、ひとつの質問に対して、イ・ボミは丁寧に答えてくれる。その姿勢から人柄のよさは十分に感じられるが、同時にその凛とした振る舞いから、イ・ボミの強さと決意の固さがひしひしと伝わってくる。

「昨年、父を亡くしてからは気分が沈みっぱなしでした。それでも最近、ようやく家族にも笑顔が戻って、いつもらしい家族の雰囲気を取り戻してきました。それが今、何よりうれしいです」

 人一倍家族思いのイ・ボミ。家族の笑顔を絶やさないためにも、今季1勝目は大きな力となり、分岐点になったはず。このまま独走して、賞金女王の座に就いてもおかしくない。

text by Kim Myung-Wook