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接客業の仕事をしている人の中には、「クレーマー客」の理不尽な要求におびえている人もいるかもしれない。あるカラオケ店でアルバイトをする女性は、接客態度が悪いと文句をつけられ、「お前の顔を写真で撮って本社に送ってやる」と、3分近く携帯のカメラで撮影され続けたという。

その女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せた。問題の客は、70代とおぼしき8人のグループ客。携帯で撮影するだけでなく、「辞めさせてやる」と怒鳴り散らしたり、紙製のアンケート回収箱を投げつけてきたそうだ。幸い、女性に怪我はなかったという。

だが、相談者の女性は「物を投げつけられて怖い思いをし、恐怖心と戦いながら出勤しているし、無断で撮られた写真が、どんな使われ方をするのか、不安でたまりません。慰謝料を請求したいんですが、貯金がほとんどないので、弁護士さんにお支払いができるか心配です」と悩みを打ち明けている。

このようなクレーマー客にからまれた場合、店の従業員は、慰謝料を請求できるのだろうか。大久保誠弁護士に話を聞いた。

●顔写真を勝手に撮影されない権利がある

「顔写真をみだりに撮影されないことは『プライバシー権』として認められています」

このように大久保弁護士は切り出した。

「接客態度が悪いというクレーム内容が仮に事実だとしても、接客態度の悪さそれ自体は犯罪行為ではありませんから、本人の承諾なく顔写真を撮影することは許されません。今回のグループ客の行為は、それだけで『威力業務妨害罪』や『強要罪』の成立もありうるものです」

その場合、慰謝料請求することはできるのだろうか。

「撮影した顔写真を会社に送りつけたり、ネット上に掲載したりしない場合でも、強要や暴行(アンケート回収箱の投げつけ)をされたことに対して、慰謝料を請求することは可能でしょう。

しかし、慰謝料額は多くても、数十万円ではないでしょうか。なお、最低着手金(10万円程度)と報酬金を考慮すると、弁護士に依頼した場合、依頼者に残る金額はごくわずかでしょう」

●ネットに掲載されたら「名誉毀損」にあたる可能性

では、ネット上に掲載されてしまった場合はどうだろうか?

「ネット上に『接客態度の悪かった従業員』などという文言とともに掲載されたとすれば、『名誉毀損』として慰謝料請求ができます。

ただし、総合週刊誌に対して名誉毀損慰謝料請求をした裁判例を見る限り、1000万円以上の慰謝料請求をしても、裁判所が認めた金額は100万円をわずかに上回るものでしかありません。

今回のケースでの慰謝料額は、100万円程度ではないでしょうか。この場合の弁護士費用ですが、仮に100万円の請求をするとして着手金10万円、報酬金16万円(いずれも消費税が別途かかります)くらいにはなるでしょうか」

このように大久保弁護士は述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
大久保 誠(おおくぼ・まこと)弁護士
ホームページのトップページに写真を掲載しているように、野球が趣味です。
事務所名:大久保法律事務所
事務所URL:http://www.ookubolaw.com/