ふと気がつくと視界の中にほこりや虫のような透明の物体が漂っていることがあります。目で追いかけると逃げていく不思議な物体ですが、学生向けの教育コンテンツを提供するYouTubeチャンネル「TED-Ed」で、あの「透明の浮遊物」の正体がイラストで解説されています。

What are those floaty things in your eye? - Michael Mauser - YouTube

「TED-Ed」は学生向けの教育コンテンツを提供するウェブサイトで、YouTubeのチャンネルで公開しているムービーにはしっかりとした日本語字幕がついています。今回のムービーは「目の前に何かが泳いでいるのに気付いたことがありますか?」という質問からスタート。



ふと気付いたら視界に出現して視線を移してもふよふよと追いかけてくる浮遊物は、よく見ようとすると消えてしまう謎の存在。小さな虫やゴミのように見えるかもしれませんが、目を洗ったりする必要はないとのこと。



この浮遊物の正式名称は「ムスカイ ボリタンテス」。ラテン語で「飛蚊症」を表す言葉ですが、虫ではなく、ホコリなどの外的物質でもありません。



浮遊物の正体は、組織の小片や……



赤血球



またはタンパク質の塊などで構成されているもの。



これらの物質は、眼球内の透明なゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)の中を浮遊しています。そのため、目の動きに合わせて一緒に漂ったり、止まったりするそうです。



大抵の場合は、目立たないのでいつも見えているわけではありませんが……



眼球の周辺にある網膜に近づくほどに見えやすくなります。





これは目に入る光から浮遊物の位置によって影を落としてしまうため。



電灯の下で手を上下させると……



手が落とす影が濃くなるのと同じ原理。



どんな時に見えやすくなるのかというと、均一の明るいディスプレイを見つめる時や……



真っ白な雪原を眺める時や、よく晴れた青空を眺めた時。



これは背景の均一さが浮遊物をはっきりさせるためと、明るい場所ほど瞳孔が収縮して取り入れる光量が少なくなるためとのこと。



また、明るい青空を見上げた時などに、小さな光の点が素早く動いていることがありますが……



これはまた別の現象で、「ブルーフィールド内視現象」と呼ばれています。



小さな光の点の正体は血管の中を移動する白血球です。



白血球が血管よりも大きいと、白血球の後ろに赤血球がたまって列を作ります。



この現象が起きると、脈拍に合わせて素早く動く光の点が見えるようになるとのこと。



条件が整えば光の点の後ろに黒い尻尾が見えることがあります。これは白血球の背後に赤血球が列を成しているため、というわけです。Museum of Visionというアメリカの科学館では、この現象を普段よりもハッキリと見ることができる真っ青なスクリーンが置かれているそうです。



なお、これらの現象は誰にでも起こるものですが、透明の浮遊物に関しては脳が見えていても無視することを覚えるため、普段はあまり見えません。



透明の浮遊物は人によって見える数や形が異なりますが、あまりに大量に見える場合や、視界を埋め尽くすほど大きく見える場合はすぐに治療を受ける必要があるとのこと。