今季も日本女子ツアーが、熱い。見ていて面白いし、スリリングな試合展開に目が離せない。

 圧巻だったのは、4月末のフジサンケイクラシック(4月24日〜26日/静岡県)だ。最終組が最終18番を迎えて、6人もの選手が6アンダーでトップに並んでいた。最終組の3人(一ノ瀬優希、金ナリ、藤田光里)もその争いに加わっていて、誰もがバーディーを決めれば優勝、という状況だった。そして、3人のうち最後にバーディーパットを打った藤田だけが、グリーン右サイドのエッジから見事にカップインして劇的な勝利を飾った。

 藤田は、2013年8月にプロ入りした20歳。ツアー初優勝を決めた瞬間、涙に暮れた。そこには昨季、ツアー本格参戦を果たして苦しんだ背景があった。夏頃から、どん底のスランプに落ち込んだのである。そこから這い上がってのドラマに、多くのファンが心を打たれた。

 一方、最終日の土壇場でスコアを崩した松森彩夏は、悔し涙を流した。彼女も藤田と同じ20歳で、しかもプロ入り同期。そんなふたりの明暗から、松森もきっと、これから強くなっていくだろう、という期待感が湧いた。ひとつの物語の始まりでもある。

 そうした彼女らの熾烈な戦いやドラマによって、女子ゴルフにより関心を深めた人たちは多いだろう。

 選手層が厚くなってきたことも大きい。特に、前述の藤田や松森をはじめ、20代前半の選手たちが、その若さと勢いを目いっぱい見せてくれる。それに対して、中堅、ベテランたちが負けずに奮闘し、技量の豊富な韓国勢が対抗してくる。その対決図にまた、多くのファンが惹(ひ)きつけられる。

 今季の優勝者を見ても、テレサ・ルー(27歳/台湾)、李知姫(36歳/韓国)、飯島茜(31歳)、笠りつ子(27歳)、渡邉彩香(21歳)、成田美寿々(22歳)、菊地絵理香(26歳)、藤田光里(20歳)、申ジエ(27歳/韓国)と、バラエティに富んでいる。女子ツアーが常に刺激的で、飽きない要因である。

 また、先日の国内メジャー第1弾、ワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップ(5月7日〜10日/茨城県)では、韓国の新鋭チョン・インジ(20歳)が、公式戦初出場、初優勝を飾った。彼女はまだ、現役の女子大生。しかし、そのゴルフゲームの巧みさやショットの正確さ、さらにショートゲームやパッティングのうまさからは、とても20歳とは思えない実力を感じる。そのポテンシャルは、末恐ろしい限りだ。ちなみに、うわさによると、彼女はIQが130くらいあるという。それもまた、驚きである。

 そこに立ちはだかる選手がまた、日本女子ツアーにはいる。今季はまだ未勝利だが、現在賞金ランキングトップのイ・ボミ(26歳/韓国)である。その実力とスター性で、日本での人気も高く、多くのファンがついている。ワールドレディスでも、韓国出身の先輩として、最終日最終組でチョン・インジと激闘を繰り広げた。結果的に先輩の意地を見せることはできなかったものの、これもまたひとつの物語のはじまりなのかもしれない。

 こうした物語が次々に生まれるのも、男子ツアーの選手たちと比べて、彼女たちが、前へ前へと攻め切ろうとする姿勢を捨てないからだと思う。女子の選手たちからは、"戦っている"という空気感が伝わってきて、恐れずに「自分のゴルフを貫き通そう」という覇気を感じる。

 女子ツアーからはここ数年、勝負に対するこだわりも強烈に感じられるようになってきた。技量よりも、そうしたゲームに対する執着心や、どう攻めていきたいのかという、その葛藤も決断も、一打ごとの喜怒哀楽も、わかりやすいほど見る側に伝わってくる。

 男子ツアーと比較したくないけれども、男子ツアーの選手たちを見ていると、そのゲームはどこか"よそゆき"で、勝負に対する執着心や、がむしゃらさが欠けている。厳しいことを言えば、優等生っぽいゴルフなのだと思う。そこに、魅力は感じない。

 むしろファンが見たいのは、小気味のいい、パッションが感じ取れるようなプレイなのだ。今の女子ツアーは、すべてが成熟しているとは言えないけれども、彼女たちのゴルフからは、見ている側に伝達される"波動"が大きい。だから、ファンの心をつかんでいるのだと思う。失敗を恐れずに果敢に攻めていく光景や、とんでもないミスをして落胆する姿までもが、見ている側にわかりやすく伝わってくるところが、魅力なのかもしれない。

 また、そんなコース内の戦いだけにとどまらず、ギャラリーサービスなど、プレイヤーとファンとの垣根が低いところも、女子ツアーが支持されるところだろう。常々思うことだが、愛嬌を振りまくことだけがギャラリーサービスだとは思わない。だが、試合のオンとオフとの使い分けをしっかりしたうえでの、ギャラリーサービスは必要だと思う。そこも、男子ツアーには足りないところだ。

 何はともあれ、女子ツアーには今、プロゴルファーという立場で、スター性に富んだ選手たちが増えてきている。彼女らに、勝負への執着心が加わって、さらに技量が伴ってきていることが、今の女子ツアーの人気につながっているのだと思う。選手の誰もが頂点を、優勝を目指してがむしゃらにがんばっている。その懸命な姿に、ファンも引き寄せられるのだと思う。

三田村昌鳳(みたむら・しょうほう)
1949年2月24日生まれ。週刊アサヒゴルフを経て、1977年に編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。ゴルフジャーナリストとして活躍し、青木功やジャンボ尾崎ら日本のトッププロを長年見続けてきた。初のマスターズ取材は1974年。(社)日本プロゴルフ協会会員外理事。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho