平成二十七年五月場所、最優秀取組決定!

素晴らしい一番でした。鬼気迫る、まさに全身全霊すべてをぶつけるかのような取組。五月場所五日目結びの一番、白鵬対安美錦。まだ場所は10日間を残す段階ですが、これ以上の一番は出てこないでしょう。夏場所、もっとも敢闘精神にあふれ、技能に優れ、惜しくも殊勲の星には至らなかった安美錦の戦いこそ最優秀取組にふさわしい。

この戦い、安美錦は持てるすべてを出したのでしょう。土俵上で次々に繰り出される策は、まるで今日が人生最後の相撲であるかのごとし。突き放してくる白鵬に対しては斜めに身体の軸をズラすことで突きの威力を殺し、隙あらば低く潜って懐へ飛び込むことを狙います。それを許さず白鵬が執拗に突き放しを試みれば、その手をおっつけ、右に左に身体をねじり、さらに突き放しにくる腕を手繰ってやろうと虎視眈々。

苦しい体勢になっても素早い回り込みで危機を脱すると、大きく飛び上がるように左に跳ねて白鵬をいなします。その際にも両の手で白鵬の腕をつかみにいくなど、とったりを狙うような動きも。この動きを左右で繰り出したところなどは、咄嗟の反応というよりは「策」の一部として練ってきたものだなという曲者ぶりも垣間見えます。

さらに、土俵際に追い詰められ白鵬得意の右四つになりかけたところでは、組むと見せかけて一気に透かし、あわや白鵬を這いつくばらせるかというところまで崩します。辛くもこらえた白鵬ですが、体は完全にグズグズ。安美錦は矢継ぎ早に左出し投げを打って背後をとると、今度は間髪入れずに足を押さえての右の投げ、あとはそのまま送り出すか…という勝利目前まで攻めました。これでもかこれでもかと。相撲内容では完全に白鵬を上回っていました。

しかし、足がついていかなかった。

春場所で再び傷めたヒザ。もはや安美錦のヒザは痛んでいることが当たり前で、「完治」という状態はありません。分厚いサポーターを巻き、その内側にはヒザを支える特殊な装具があるといいます。ヒザが、勝利の瞬間までもたなかった。まるで映画のワンシーンのように、勝利まであと一歩のところで剣が折れてしまった。

取組のあと、安美錦は立ち上がることができませんでした。もっと賢く戦うなら、この日は無理せず負けてもよかったところ。大体みんな負ける相手です。しかし、痛むヒザを酷使して、「今日で剣が折れても構わない」という死力を尽くしてきた。結果が伴わなかったことで、金も記録も手元には残りませんが、安美錦竜児渾身の一番、しっかりと相撲ファンの胸に刻まれたと思います。この春に引退し、誰よりもこの勝利を届けたかった元付け人の扇富士さんにも、きっと届いたのではないでしょうか。ふたりの相撲、ふたりの秘策、お見事でした。

ということで、ヒザさえ万全なら大横綱と名大関の戦いとして迎えていたであろう熱戦について、14日のNHK中継による「大相撲夏場所五日目」からチェックしていきましょう。

◆策士・安美錦が繰り出した白鵬殺しの秘策の数々は通じた!

いまや絶対的存在ともなった白鵬。しかし、最近は目標を見失ったか、勝負に飽いているところも見受けられます。先日NHKで放送された密着特番では「燃えるものがない」ということも赤裸々に語っていました。敵がなく、目指す記録もない孤独の地平。生命を懸けて相撲を取るには、少々「退屈」を覚えるのかもしれません。

そのあたりが最近とみに見受けられる「後の先」なる立ち合いの追求であったりするのかもしれません。単なるチカラ押しで勝てばいいのではなく、相手を制して自在に操ってやろうとする遊びが垣間見えています。まぁ、具体的な目標のない理想追求くらいしか、今の白鵬にはやることもないでしょうが。

この日の取り口もそんな遊びを感じさせるものでした。安美錦のヒザが今場所は特にガッタガタであることは誰もが承知しているわけで、こういうときはつかまえてジワジワ圧力を掛ければ、ヒザが耐え切れなくなって自分から後ずさりしてしまうもの。素直に胸を合わせたほうが横綱相撲となったはず。

しかし、白鵬は突き放して、離れた間合いでの相撲を狙います。立ち合い、右のかち上げからの突き放し。それはまるで「押さば引け、引かば押せ」で柳のように相手をいなす間合い職人・安美錦に「俺と間合い勝負をやろうじゃないか」と誘い掛けるかのよう。ちょっとしたメイウェザーとパッキャオの睨み合いのような相撲となりました。

↓安美錦の間合い職人ぶりにかかれば、琴奨菊などこの通りである!


ダメだろこんなのwwwwwwwwwww

つっかえ棒がないと何もできんのかwwwwwwww

せめて前を見てくれwwwwwww

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安美錦が終始意識していたであろうは白鵬の右手。白鵬は左上手が強いので、当然そちらも警戒したいところですが、それを活かすための右差しへの対応に、より心を砕きます。安美錦は右を差させないように自身の左腕を固め、離れては右手に取りつく、また離れては右手に取りつくという形で白鵬に対抗。そして高速の展開の中で次々に繰り出される安美錦の攻め手。動いて仕掛けて、また動く。とても先場所途中に靭帯を断裂した男とは思えません。

↓安美錦のヒザを突き動かすのは、苦楽をともにしてきた付き人への想いだった!

相撲協会の営繕部職員に転身した扇富士さんに勝利を捧げるのだ!

ふたりで考えた作戦で、白鵬を倒す!

↓扇富士さんとは「自分が安美」「彼が錦」とまで言うほどの、一心同体の仲間だった!
<安美錦、元付け人に金星届けられず涙「残念」>

「付け人がやめちゃったからね。2人でずっと考えてきた(白鵬相手の)策を、全部出して。こんな状況だからこそ、しっかり相撲を取ろうと…。2人で考えたことなので。余計に勝ちたかったんだけどね…。残念」。

「寂しいというか、いないんだという感じ。自分が『安美』で、向こうが『錦』。2人で『安美錦』のところがあったからね」。

http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1476570.html

笑顔の奥に邪悪をのぞかせる安美錦のさらに奥には、こんなイイ話があるとは…。

何だこのハートフルコンビは…。返す返すもヒザさえ万全ならな…。

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安美錦の怒涛の攻め、並みの力士相手ならば実っていたはず。しかし、白鵬は抜群の身体能力を持っていた。後ろに回り込む安美錦よりも早く反転するその動き、まわしをガッチリとつかむよりも早く反転するその動きが、あと一歩のところで安美錦に勝利をつかませなかった。結果だけまとめると「白鵬勝った」になってしまう相撲、短くまとめるとそれだけになってしまう10秒あまりの相撲、本当に無念です。

↓これぞ死闘!メイウェザーVSパッキャオ以上の盛り上がり!


元水戸泉の錦戸親方の後ろにいる女性の喜びが半端ナイで…。

安美錦、一世一代の相撲だったな…。

↓死力を尽くした安美錦は、しばし土俵に倒れたまま動けず!

疲れだけでなく、付き人への想いがあったのだな…。

普段の飄々とした安美錦であれば絶対に見せないであろう熱いものを出してしまうほどに…。

お疲れ、安美錦!いい相撲だった!

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決まり手は突き落としと発表されますが、もうこれは突いたとか落としたとかいう世界ではありません。安美錦が勝って、安美錦が負けた。勝者も敗者もどちらも安美錦という一番でした。扇富士さんに勝利を捧げることはできませんでしたが、この死闘が、決して日の当たる相撲人生ではなかった扇富士さんを、最後に眩しい光で照らしたように思います。これが「花道を作る」というヤツなんですね。これまで花道で見送ってくれた元付け人に、第二の人生への花道を捧げた安美錦。今日からはまた飄々と「怪我しない程度に頑張ります」くらいの軽さで土俵に向かうのでしょうが、しばらくは飄々キャラも形無しでしょう。こんなに熱い気持ちがあるところを見せてしまったのですから…。

痛みに耐えてよく頑張った!感動した!心の技能賞・殊勲賞を贈る!