日本サッカーにとって明るいニュースだね。日本サッカー協会の田嶋幸三副会長(元日本代表選手。日本サッカー協会で技術委員長や専務理事を歴任)が、FIFA(国際サッカー連盟)の理事に当選した件だ。

4月30日、バーレーンで開かれたAFC(アジア・サッカー連盟)総会でFIFA理事選挙が行なわれ、田嶋さんは36票の最多得票を集め、落選した4年前の雪辱を果たした。日本人のFIFA理事としては通算4人目。2002年から11年まで理事を務めた小倉(純二・現日本サッカー協会名誉会長)さん以来の就任となる。

小倉さんの後任として出馬した前回の落選が勉強になったのだろう。今回は4年間準備を進め、やるべきことをやって選挙に勝った印象だ。田嶋さんは落選後、AFC理事に就任して組織改革に努め、加盟各国を飛び回って顔を売った。また、日本サッカー協会としても、指導者を派遣したり、ボールやグラウンドなどハード面の整備のサポートをしたり、アンダー世代の代表チームを日本に招待したりと、地道な活動を行なってきた。

正直、お金はかなり使っただろう。でも、問題はない。政治に限らず、選挙にはお金がかかるもの。必要な“投資”だったと思う。

理事会は会長や副会長(8人)、各大陸連盟から選出された理事(15人)らで構成されるFIFAの最高意思決定機関。そこに出席できるメリットは大きい。世界のサッカーのあらゆる情報がダイレクトに入ってくるわけだからね。各国、各大陸の動きをいち早く察知し、さらにFIFA内部の事情を知ることで、場合によって必要となる政治的な働きかけなど素早い対応が可能になる。

小倉さんが理事を退任した11年以降、おそらく日本は情報収集という部分で相当苦労したはず。その実感があったからこそ、今回の理事選には“投資”を惜しまなかったんだと思う。

ただ、読者の皆さんに勘違いしてほしくないんだけど、田嶋さんがFIFAの理事に就任したからといって、いきなり日本やアジアに“イイこと”が起こるわけじゃない。何しろ田嶋さんは、無所属で1期目の国会議員みたいなもの。海千山千だらけのFIFA理事会に新人として入るわけで、まだ人脈も発言力もない。極端な話、ほとんど何もできずに任期の4年間を終えるかもしれない。

例えば、5月末には18年ロシアW杯の各大陸の出場枠を決める理事会が開かれる。これが田嶋さんの最初の大きな仕事になるのだろうけど、もしアジアの枠が減らされたとしても、それは彼の責任じゃない。今の彼が根回しをするのなんて難しいし、アジア勢はブラジルW杯で1勝もできなかったわけだからね。

当面は、FIFA内部の力関係をしっかり見極め、地道に人脈を築き、アジアの代表としての役割、新人理事としての役割をしっかり果たし、次の理事選での当選につなげる、というのが彼の宿題。その上で、次の4年間で日本のため、アジアのために何ができるかを考えればいい。

いずれにしても、今回のFIFA理事当選はいいチャンス。多くの得票を集めての当選だから、アジア各国の期待も大きいはず。ぜひアジアの代表としてリーダーシップを発揮し、再び日本サッカーの存在感を高めてほしいね。

(構成/渡辺達也)