『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス)。著者の鷹野さん曰く、略称は『クリけん』。

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問題:コスプレは似れば似るほど著作権に触れる可能性がある。◯か?×か?

正解は◯。

理論的にはキャラクターの絵や映像を「複製」しているコスプレ。
イベントで着るとなれば、個人で楽しむ範囲(私的複製)と考えるのも難しいため、似れば似るほど著作権に触れる可能性があるのだとか。

ただ、コスプレも二次創作同人誌と同じように権利者が黙認するケースがほとんど。
しかし無許可で衣装を販売すれば完全にアウト。
過去には『海賊戦隊ゴーカイジャー』の無許可コスプレ衣装が摘発されたことがあるそう。まさに「海賊版」というオチに……。

こんな「著作権こぼれ話」を散りばめながら、ネット時代の著作権についてわかりやすく解説してくれる本が『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』。

コピペ、パクリ、無断転載、違法アップロード、表現の自由。
知っていないと大問題な著作権の話がてんこ盛りなのだ。

引用元を書いただけでは「引用」にならない。



「まとめサイト」や「バイラルメディア」などで問題になることがある「引用」や「転載」。

引用自体は、著作権法32条(引用)により、引用元に無断で行ってよいことになっている。
「無断引用禁止」という注意書きは法的には意味がないのだ。

ただし、引用として認められるには、次の要素全てに注意しなければならない。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(出典:文化庁『著作物が自由に使える場合』)

引用元を書くだけでなく、必然性や主従関係(どっちがメインの内容か)も重要になる。
引用元さえ書けば引用になるわけではない。

「判例も揺れているので断言はできませんが、少なくとも全文をコピーしてちょっと感想書いただけでなら、主従関係が逆です。そういうのは引用ではなく、ただの無断転載です」(P.62)

「感動したらシェア」と書かれているアノ記事の引用はどうなっているのか?
引用をするときは、上記4つの要素を全て満たしているか注意。

パクツイは「パクられた本人以外」が訴えてもいい



他人のおもしろいツイートを、さも自分が発言したかのように全文コピーしてつぶやく「パクツイ」。
もちろん無断転載であり、違法行為。
引用元を明示しないのは「出所明示義務違反(122条)」、
自分が言ったことにするのは「著作者名詐称(121条)」だ。

著作権が侵害されたとき、一般的には、刑事告発するかどうかは被害者の判断に委ねられる。
いわゆる「親告罪」である。
しかし、上記2つの違反は例外的に「非親告罪」になっている。

「Twitterの投稿は最大140文字とそれなりに長いため著作物として認められる可能性が高く、しかも非親告罪ですから、被害者が告訴しなくても逮捕や起訴される可能性があるのです。危ない行為ですね」(P.70)

ちなみに、Twitterの投稿がまとめサイトなどに転載された場合。
Twitter公式の「ツイートをサイトに埋め込む」機能が使われていれば、無断転載にあたらない。
Twitterの利用規約には二次利用についてのルールが定められており、
公式の埋め込み機能を使うことは規約に基づいた正しい行為なのだそうだ。

「トレス疑惑検証サイト」は著作権侵害になる?



元になる写真や絵を透かし、線をなぞって絵を描く技法・トレース。
ネットでは「トレス」と呼ばれ、漫画作品にトレス疑惑があるとして「完全に一致!」など検証しているサイトがある。

そもそもトレースは、著作権法上は「複製行為」になる。
複製行為には手での書き写しも含まれるため、トレースも対象となるのだ。
他人が撮った写真や、他人が書いた絵を無断でトレースすれば、「複製権の侵害」にあたってしまう。

では、トレス疑惑の絵を無断で載せている「トレス疑惑検証サイト」は著作権侵害になるのか?

「著作権法32条の『引用』にあたるかどうか、または、41条の『時事の事件の報道のための引用』として正当な範囲内かどうかです。個々に状況は異なりますから、一概に侵害とは言えないですね」(P.79)

ウェブサイトが「報道」と言えるかどうかが難しいところ。
条文が書かれた当時は、報道といえば新聞やテレビだったため、今の時代に合っていないのだ。
テレビ関係者がTwitterに投稿された写真の利用許可を取るのも、この41条が適用されるか悩ましいからだそう。

基礎から「二次創作」「パクられた時の対処」まで


前半部分は「なぜ著作権という権利があるの?」という基本的なことからレクチャー。
後半部分から、より実例を伴った解説をしてくれる。

第5章「先生……二次創作がしたいです」では、「二次的著作物」や模倣について(アイデアや設定は著作物にあたらない!)
第7章「作品を発表するときに気をつけること」では、投稿サイトの規約について(「著作権の無償譲渡」「独占的利用の許諾」って?)
最終章「作品がパクられた!どうしよう?」では、実際にパクられた時の対処について(国内編&海外編)

ソフトカバーで143ページしかなく、先生と生徒が織りなすライトな語り口ですいすい読める。
それでいて、著作権の大事なツボがギュッと詰まっている。

140字のツイートも「著作物」になる時代。
クリエイターだけでなく、ライターや編集者、ウェブコンテンツに関わる全ての人の「一般教養」となる一冊だ。

ちなみに、”ジャスコ”はブランドが消滅しているので、作品名などに使っても問題ないそう。
自分の作品にジャスコを登場させたい人はご参考まで。

(井上マサキ)