8万回もの脳検査で分かった「精神病」の正体とは?ココロの病は、脳から治せる!

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精神科では、カウンセリングなどを通して病気を治していくのが一般的。外科や内科といった他の分野のように、レントゲンを撮ったり、手術をしたりすることはほとんどありません。
しかし、83,000もの脳検査を行ってきた精神科医のDaniel Amenさんは「Ted Talks」で、精神科医はもっと“脳”にフォーカスすることが必要だと語ります。

心の問題だと思われていたことも、脳の検査をすることで最適な治療方法をみつけることができる、というのが彼の意見。このスピーチでは、凶悪犯罪者の脳を治療することで、更正に成功した事例も登場します。

家族が精神疾患に・・・
その体験が、大きく私を変えた

私は、22年間で83,000の脳検査を行ってきた精神科医です。今日は、その中で学んだ一つの教訓を伝えたいと思います。
私は7人兄弟の真ん中の子として生まれ、1972年に軍に徴兵されましたが、それが本当に嫌でした。
私はそこでX線技師としての技術を学び、医学の道へ進むことに決めました。

1979年、私が医学部2年生の時、家族の一人が自殺願望を持つようになってしまいました。私は彼女を精神科へ連れて行きましたが、そこで気づいたのです。「この医者が病気を治し、彼女がもっと幸せで安定した人になれたら、彼女だけでなくその子どもたちまで救われるのだ」と。
この経験を機に、私は精神科医になることを決めました。世代を超えた人を救える、そんな可能性を秘めた分野だと思ったのです。」

脳画像での診断は、
より正確に患者を理解できる

1991年、脳画像を研究する講義に参加しました。
そこで私は、SPECT(単一光子放射断層撮影のことで、画像診断法の一つ)に興味を持ちました。SPECTは、血流などから脳の活動を見たり、脳の働きを調べたりする手法です。これを利用することで、精神科においても、患者のことをより深く知ることができると考えたのです。

SPECTは、脳の活動状況を教えてくれます。 SPECTでスキャンした脳画像を使って、健康な脳の活動域を見てみましょう。

活動域が左右対象なら、脳は健康だと言えます。 例えば脳震盪を2回経験した人の活動域を見てみると、穴が空いており、脳が健康ではないのが分かりますね。
アルツハイマーを患っている人の脳は、後部での活動が悪化しています。癲癇をすぐに起こしてしまう人のものを見ると、活動値が適正値より多くなっているのが分かります。
(※詳細は記事下部の動画を参照ください)

Doctors with patient, 1999

Reference: Seattle Municipal Archives

しかし、1992年に参加した学会で、私は他の研究者たちから強く非難されました。彼らの考えでは、SPECTを使うべきは神経科医、整形外科医といった分野で、精神科医は使用すべきでないと言うのです。 私は本当におかしい考えだと思いました。脳画像を見れば、より正確な診断が可能です。精神科以外の他のすべての医師がSPECTを使って治療をすることができるのに、私たちだけが、曖昧な治療をしなければならないのです。

実際、私もカウンセリングだけで治療をしていた時は、患者に対してやみくもに対応している気分でした。時には患者を助けることができず、傷つけてしまったこともありました。精神科における誤診は、悲惨な結果を招きます。 だからこそ、治療方法の選択は、脳の活動に基づいて正確に行う必要があるのです。

軽度の脳外傷でも、
深刻な精神病を 引き起こすことがある

さらにSPECTでは、軽度の脳外傷が死に至る精神病を引き起こす可能性があることがわかりました。 これまで、ほとんど誰もそんなことは知らなかったのです。精神科医は気分の問題や鬱、不眠症だけを取り扱う医者としてしか見られていなかったからです。

こちらは3歳の時に、階段を転げ落ちた経験のある15歳の少年の脳画像です。この時気を失ったのはわずか数分でしたが、実は重大な脳外傷を負っていました。後に彼は暴力事件を起こして何度も施設に入れられており、これ以上暴力をふるわないように精神療法が行われていました。
(※詳細は記事下部の動画を参照ください)

DIAGNOSIS

Reference: Seattle Sohel Parvez Haque

でも、彼に本当に必要だったのは脳の治療だったことが、SPECTによって明らかになったのです。
これまでの研究から、アルコール中毒や鬱、パニック症状やADHDといった病気の主な原因に、軽度の脳外傷が挙げられることがわかっています。
最近では、裁判官や弁護士たちが、犯罪行為を理解するために我々に助けを求めるようになりました。 様々な調査により、犯罪者は大抵の場合脳に問題があるのだということが明らかになっているのです。

しかも、脳の問題の多くは治療が可能です。 脳が健康な状態に戻れば、彼らは出所後も働くことができるようになるし、家族を養って税金も払えるようになります。ドストエフスキーは「社会はお手本となるような市民の扱い方において評価されるのではなくて、どう犯罪者を扱うのかという点において評価されるべきだ。」と語っています。 社会は正義・犯罪・罰の代わりに、犯罪・評価・治療に重点をおくべきなのです。

22年間、83,000の脳を検査して分かった
人生を変える方法

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私が22年間で83,000もの脳検査から学んだこと。それは人の脳を変えることは可能で、それは人生をも変えるということです。

これは、たいした理由もなく小さな女の子をバットで襲った9歳の少年の脳画像です。これまでの精神科医なら、彼を薬漬けにしていたことでしょう。
でも彼に本当に必要なのは薬や施設ではなく、脳にできていたゴルフボールサイズの嚢腫を取り除くことだったのです。
この事実は、薬や施設を重視するような医者には、絶対に発見できなかったでしょう。実際に、嚢腫を除去した後の彼はとても善良な少年へと更正しました。
じつは、彼は私の甥なのですが、今では家も仕事もあり、税金も払っています(笑)。これからの彼は、良き夫となり、父となり、おじいちゃんとなるでしょう。

つまり、誰かの脳を治療することは、その人の人生を変えるだけでなく、その子孫の人生をも変えることにつながるのです。

Reference:Ted Talks