NAB Show コラム:ラスベガスでアドビの切ったカードにジェットダイスケが驚いた話

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こんにちは、YouTuber/ビデオグラファーのジェットダイスケです。Engadget Japaneseに寄稿するのは初めてですが、これまでにEngadget主催のイベントには何度か登壇してます。5月30日に開催の「Engadget 例大祭」でも「ライトニングガジェットトーク」審査員として参加予定です。よろしくお願いします。

さて、少し前の話ですが、先月米国ラスベガスにて開催しましたNAB Show(放送機器展覧会)に行ってきました。NABといえばやはり最新の撮影機材・音響機器などを思い浮かべるかもしれません。もちろんそれらは大好物なのでしっかり堪能してきました。

一方、ハードウェアだけでなくソフトウェアも見るべきものが沢山あります。アドビをはじめ、Avid、Autodeskといった企業の展示が人気を呼んでおりました。なかでもアドビが誇る映像編集ソフト「Premiere Pro」および「After Effects」の新機能には本当に驚いたので、特に気に入った2つの機能について紹介します。

顔出しがイヤな人に朗報、3Dが分からなくても簡単な Character Animator



まずは「Character Animator」というもの。これは2015年夏までに提供開始するという次期「After Effects」に付属する独立したアプリケーションで、その名の通りキャラクターアニメーションを誰でも簡単に作成できてしまうというものです。

下図を見れば一目瞭然。ノートPCに内蔵したインカメラやUSB接続のWebカメラで撮影している人物をフェイストラッキングし、その顔や目や口の動きを別途用意したキャラクターの絵にトレースさせるというわけです。

カメラに向かって話すだけで、キャラクターが生き生きと動き出します。動きをトレースできるのは、基本的には顔とそのパーツのみになってしまいますが、収録時にはマウスを使って(Windowsのタッチスクリーンも可)キャラクターの手を動かすこともできます。


それだけ? と思ってしまうかもしれません。「Character Animator」というからにはトーク時の顔だけでなく、複数のキャラクターを配置して歩いたり跳ねたりクルリと回って見得切りポーズを決めるくらいはやってほしいですよね。

従来のWebカメラやビデオチャットの付加機能にも、フェイストラッキング技術で3DCGのサングラスをかけたりアニマルキャラクターの顔をオーバーラップできましたから、真新しさは感じないかもしれません。ただ「Character Animator」だと、3Dの知識がなくても描ける2Dキャラクターでそれをやってしまうというのが魅力ですね。

私は以前から「CrazyTalk」というPCアプリ、また「PhotoSpeak」というスマホアプリを好んで利用していました。それらはインポートした喋りの音声に合わせて、顔写真(もしくはキャラクターの顔を描いたイラストなど)をそれらしく口パクのアニメーションにしてくれるものです。手軽に利用できますが、たった一枚の顔写真をもとに生成するので、目や口の動きに若干無理やり感があったのは否めません。その点、アドビの場合はキャラクターの作成に、同社の「Illustrator」および「Photoshop」などを使用。レイヤーを分けておくことで目や口などのパーツとして認識しているそうです。

これまでにYouTubeや動画活用のセミナーで何度も講師をしていますが、自分の顔を出すのがイヤでYouTubeに動画を公開できない人が本当に沢山います。そういった人たちにこの機能はぜひとも使っていただきたい! 私自身もこれは新たな作品づくりに役立てたい! と思っています(ある意味で私自身でなくとも成り立ってしまう諸刃の剣ではありますけどね)。

キーフレームアニメーションとしては収録しないので、収録後にデータを編集することは、現時点では不可能とのこと。またリアルタイムでの映像入力のみに対応ということで、録画したビデオファイルのインポートでは作成できません。将来的に可能になるといいですね。それまでは、一発撮りでNGなしのトークができるよう話術の訓練が欠かせないかも(笑)

ジェットカットはもう不要? ジャンプカットを滑らかにする Morph Cut



そして2点目は「Morph Cut」という機能。これは一見すると地味なのですが、とても破壊力の大きそうな「Premiere Pro」の新機能。同じく次期バージョンにて提供される予定。以下の動画をご覧ください。



インタービュー映像などでは、不要な発言や長すぎる間をカットして、間を詰めることがよくあります。インタビューでなくとも私のようなYouTuberたちは日常的にそういった編集をやっています(ジャンプカットという)。特に筆者が多用するのでジェットカットとも呼ばれています。

当然ジャンプカットすることで映像同士の接ぎ目ははっきりと分かるのですが、従来であればそれはそのままか、ディゾルブのようなトランジションをかけて目立たなくしていました。しかし、この「Morph Cut」を使うことで、その接ぎ目がまったく分からないほどになってしまうのです。まるでどこも切っていない1本の映像のように!(あれ? ジェットカットが不要な時代が来てしまった?)

早くも放送業界では、映像の信ぴょう性について懸念するネガティブな反応もあるとか(CGだらけの映画を指して「実写化」と呼ぶ時代ですから、今さらという感じもしますけどね)。

「Morph Cut」という名称から推測できる通り「前後のカットから顔認識技術を使って解析し、補完できそうなコマを再利用、さらにモーフィング技術も使って処理しています」(アドビ)。

これまでの一般的なモーフィングだと、前後カットで対応する形状のポイントを指定する必要があり、その数が多ければ多いほど精緻でスムーズな見栄えになりますから、その設定に苦労した方も多いでしょう。ところが「Morph Cut」だと、いつも使っている「Premiere Pro」のトランジション(ディゾルブやワイプ等)と同様にドラッグ&ドロップするだけ。ただし効果の確認には、あらかじめ分析する時間が必要になります。

先ほどの動画だと1分10秒あたりからの「Analyzing in Background」という箇所がそれにあたります。現行バージョンでいうと、手ブレ補正エフェクトである「ワープスタビライザ」もそういった分析が必要ですね。件の動画中で使用しているマシンスペックが分かりませんけども、ほんの15フレーム×4箇所だけでも結構な時間を必要とするように見受けられます。緊急ニュースなど1秒を争う場合には使用を断念することもあるかもしれません。

なお、現時点では手ブレのある映像素材や、手や頭部または姿勢自体を大きく動かした映像ではうまくいかないとのこと。もちろん別の人物に入れ替わった場合も、おそらく望んだような結果は得られないでしょう。一切ポイントを指定しない自動処理なので、特殊効果としてのモーフィングではなく、あくまでジャンプカットをスムーズにつなぐ用途には限定されます。

以上、NAB Show で飛び出したアドビの新機能が未来すぎて驚いたという話でした。試用版が入手できたらまたレポートしたいと思います。