遥かなるツール・ド・フランス 〜片山右京とTeamUKYOの挑戦〜
【連載・第56回】

 毎年5月になると、日本各地を巡る国内最大級の自転車ロードレースが行なわれる。その名は、「ツアー・オブ・ジャパン」。世界各国の強豪チームが来日するビッグイベントに、今年もTeamUKYOは参戦する。大会前、チームを率いる片山右京が掲げたツアー・オブ・ジャパンでの目標とは――。

 来たる日曜日、5月17日から第18回ツアー・オブ・ジャパンが始まる――。

 国際自転車競技連合(UCI)がカテゴリー1に定めるこのステージレースは、日本で行なわれる本格的なサイクルロードレースとして高い人気を誇る。大阪・堺ステージを皮切りに、最終日5月24日の東京まで1週間をかけて争われる。昨年までは全6ステージ(堺・美濃・南信州・富士山・伊豆・東京)で開催されたが、今年は2日目に三重県のいなべステージが加わり、全7ステージとなった。また、来年は京都ステージをカレンダーに組み込むことも、すでに決定している。

 カテゴリー1のレースだけあって、参戦チームも華やかだ。

 ワールドツアーチームからはランプレ・メリダ(本拠地:イタリア)が、プロコンチネンタルチームからはNIPPO・ヴィーニファンティーニ(イタリア)と、ドラパック・プロフェッショナル・サイクリング(オーストラリア)が参戦する。また、コンチネンタルチーム勢もニュージーランド、イラン、台湾、UAEから5チームが参加。地元の日本勢は、ブリヂストン・アンカー・サイクリングチーム、愛三工業レーシングチーム、宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、シマノ・レーシングチーム、マトリックス・パワータグ、キナン・サイクリングチーム、日本ナショナルチーム、そしてTeamUKYOというラインアップだ。

 昨年のツアー・オブ・ジャパンは、イラン勢が席巻(せっけん)した。欧州の超級(※)山岳に匹敵する難関の富士山ステージは、最大勾配22%の斜度を持つコースだが、ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン/タブリーズ・ペトロケミカル)が過去の記録(39分47秒)を大幅に更新する、38分51秒という驚異的なタイムでステージ優勝。最終日の東京ステージを終えて総合トップの座を守り切り、オールラウンドな強さを見せつけた。一方、TeamUKYOはホセ・ビセンテが総合4位、リカルド・ガルシアが13位、土井雪広が14位という成績で終えた。

※山岳コースは標高差や勾配などの難易度で、超級から1級、2級、3級、4級、と5種類に区分されている。これらの各山岳では、頂点に山岳賞地点が設けられており、そこを通過した順にポイントが与えられる。このポイントは、山岳の等級や選手の到達順で、何位通過までに何ポイントが与えられるかという配分が異なっている。同じ1位通過であっても、4級山岳よりも超級山岳のほうが当然、獲得ポイントは大きい。

 あれから1年が経過し、TeamUKYOに所属する外国人選手の顔ぶれは大幅に変わったが、土井雪広をキャプテンに据えたチームは結成以来、最強の総合力を備えている。国内シリーズ戦のJプロツアーではここまでの6戦で4勝し、個人部門でもチーム部門でも他を圧倒する強さを見せている。

「たしかに、思っていたよりは強さを発揮できているかもしれません。しかし、ここから先の戦いでコンディションを上げて結果を出していかなければ、自分たちが今年の目標にしているところまではとても届かない。そこまでのパフォーマンスはまだ出せていないな......というのが、今の正直な印象です」と、片山右京は現在の自分たちの実力を、そんなふうに捉(とら)えている。

「将来的にプロコンチネンタルチームになることを目指すのなら、日本国内のレースで何連勝したとかいうのは、本当に小さな物差しでしかない。一方、その日本国内のレースで自分たちが負けた内容を冷静に分析すると、自分たちに足りないところがたくさん見えてくる。だから、たとえJプロツアーで今は首位にいたとしても、決してウチらが一番じゃないということが改めてよく分かってきました。

 国内のレースでワンツーフィニッシュしたり、レースをコントロールできていたとしても、たとえばイランの怖い人たち(笑)やイタリアのワールドツアー勢が大挙して襲いかかってきたときに、果たして同じようなことができるのかどうか。

 僕たちの今年の一番の目標は、ツアー・オブ・ジャパンで総合優勝することです。そして、UCIカテゴリー2のツール・ド・熊野(5月28日〜31日)やツール・ド・北海道(9月11日〜13日)では、問題なくレースをコントロールして勝てるくらいになって、可能なら秋のジャパンカップでも総合3位以内を争えるようなレベルに持って行きたい。それくらいの実力になっていなければ、プロコンチネンタルに申請するとか、スポンサーがいるとかいないとか、そんなことはとても言えるような水準じゃない。そこに到達できずにビッグマウスだけ叩いているのは、小学校の運動会で子どもたちが『オリンピックで金メダルを獲るんだ』と言っているようなものですよ」

 そうは言っても、ツアー・オブ・ジャパンで総合優勝を達成するのは決して容易な業(わざ)ではない。過去にこのレースで優勝を飾ったのは、サイクルロードレースの本場・欧州出身の選手や、あるいは昨年のイラン勢など、外国人選手ばかりである。日本人の優勝者は2004年、ブリヂストン・アンカー時代の福島晋一のみだ。福島の先にも後にも、日本人はツアー・オブ・ジャパンで優勝を飾っていない。それはすなわち、「日本と諸外国との競技水準の差」という厳しい現実の表れでもある。

「だから、このレースでどれだけの結果を残せるかということで、今の自分たちに足りないものが、世界という物差しのもとで、さらにハッキリと見えてくるんですよ」と片山は言う。

「自分たちは小学校の運動会レベルなのか、あるいは世界の強豪たちに攻撃してチャンスを広げていくことのできるチームなのか。あと1枚、2枚のカンフル剤を投入して、スプリンターや登りのエース級を補充すれば、さらにワンステップ上の段階へ上がることができるのかどうか。今年のツアー・オブ・ジャパンは、現状のTeamUKYOの実力を見極める意味でも、重要な戦いになります」

(次回に続く)

西村章●構成・文 text by Nishimura Akira