日本代表はハリルホジッチ新監督を迎えたばかりだが、6月には2018年W杯アジア2次予選が早くもスタートする。急ぎ求められるのは、ハリルホジッチ監督が志向するサッカーを実践できるメンバーの見極めだ。はたして、ハリルジャパンにふさわしい選手とは誰なのか。さらに3人の識者にベストメンバーを選出してもらった。

◆1回目=4月29日配信「識者選定。ハリルジャパンに最も適合する『ベスト11』」参照

■重要なパーツとなるのは、永井謙佑と武藤嘉紀
浅田真樹(フリーライター)

 まずは、ハリルホジッチ監督が就任して行なわれた3月の親善試合2試合(2−0チュニジア、5−1ウズベキスタン)について、簡単に振り返っておきたい。

 新たな船出に際し、指揮官が選手に意識づけしたのは、ボールを奪ったら「DFラインの背後」を最優先に、できるだけ速く縦にパスを入れて一気に攻め込む、ということ。結果として(これまでとの比較において)、勢い込んでゴールに迫る回数は増えたが、落ち着いてボールポゼッションする時間は短くなった。

 本田圭佑(ミラン/イタリア)、香川真司といった従来のメンバーがそろって先発した第2戦(ウズベキスタン戦)は、いくらかこれまでの戦い方(ポゼッションする時間が長い)に寄ってはいたが、基本的な戦い方は前記のようなものだったと思う。つまり、縦に速く攻めることで、相手ゴールに攻める回数は増えたが、強引にでも速く攻めようとする分、ミスで簡単にボールを失う回数も増え、カウンターの応酬のような展開が長く続くことになった。

 当然、ハリルホジッチ監督もそんなことは百も承知なはずで、ここまで極端なやり方を追求し続けるわけではない(ポゼション方向にも舵を切っていく)とは思うのだが、現状ではこの「極端に縦に速いサッカー」を前提にメンバーを選んでみた。

 カギとなるのは、ボランチと2列目の両サイド。

 ボランチにはダイレクトプレイの意識が高く、怖がらずに縦へ縦へとパスを出せる選手が必要だ。今回選ばれたメンバーの中では、青山敏弘だろう。愚直なまでに縦を狙う分、ミスもかなり目立ったが、一発でチャンスにつながる効果的なパスも多かった。

 また、年齢的な問題があるのかもしれないが、MF中村憲剛(川崎フロンターレ)は条件に合致するボランチとしてはJ屈指。試してみても面白い。

 そして2列目の両サイドだが、ここにはスピードが欠かせない。攻撃においてはもちろんだが、守備における左右のスライドやプレスバックが速くなり、相手の攻撃を封じる(つまり、ボールを奪いやすくなる)確率が格段に上がるからだ。

 その点で、永井謙佑は出色。武藤嘉紀とともに、目指すサッカーを実現するために重要なパーツになってくるのではないかと思う。

■「適応力」に長けた岡崎&長谷部は不可欠な存在
小宮良之(フリーライター)

 ハリルホジッチ監督が求めるサッカー選手の条件とは何ぞや?

 それは、「インテンシティ」と「インテリジェンス」の2点に尽きるだろう。具体的には、単純な球際の強さ、出足の鋭さ、そして相手に対処できる狡猾(こうかつ)さなどで、集約すると「ピッチでの適応力」になる。

 例えば、3月のウズベキスタン戦(5−1)の前半、最終ラインの前のスペースを使われ、センターバックが2トップに押し込まれていた。ハリルホジッチ監督とすれば、今野泰幸にアンカーの位置に入って、状況を落ち着ける強さと知性を見せて欲しかったに違いない。結局、指揮官は後半から今野を代え、水本裕貴を投入した。

 プレイマネジメントにおいて、日本人選手はまだ発展途上の域にある。目を見張るスピードを持っているが、プレイ精度は低く、素晴らしいクロスを上げても、1対1に脆(もろ)さがあり、結局は長所を十全に使いこなせていない。

「帯に短し、たすきに長し」といったところか。

 その中で、攻守にわたって逞(たくま)しい適応を見せるのは、岡崎慎司と長谷部誠のふたりだ。

 3月の親善試合初戦のチュニジア戦(2−0)、岡崎は後半途中から出場し、先制点を記録。どこにいればボールが入ってくるのか、その感覚が鋭敏で、ゴールの瞬間に立ち合ったときに逡巡(しゅんじゅん)がない。続くウズベキスタン戦でも、左サイドバック・太田宏介(FC東京)のクロスを呼び込んだが、驚嘆すべきプレイセンスだった。MF柴崎岳(鹿島アントラーズ)にゴールを譲った場面も勇者の余裕か。ブンデスリーガで得点を重ねているのも必然だろう。

 長谷部は31歳で、老い先短いベテランと見るか、不可欠な試合巧者と見るか。新生チームが少々狼狽(ろうばい)したチュニジア戦前半、周りをサポート、カバー、チャレンジし、均衡を保った。派手さはないが、敵に流れを渡さないプレイを繰り返し、集団の短所を隠すという長所を見せた。彼の行動やプレイは、チームが戦っていく中で"重し"となるだろう。

 内田篤人も、ふたりに匹敵する能力者だが、ケガで本調子には程遠く、治療が最優先か。

 現段階での推奨布陣は、先日の代表メンバー(バックアッパー含め)から選んだが、彼ら以外の若手の台頭は不可欠となる。

 現代表からは外れているが、Jリーグで最もコンプリートなFWは大久保嘉人(川崎フロンターレ)で、年間MVPはMF遠藤保仁(ガンバ大阪)というのが実情。しかし、2010年W杯メンバーが半分以上も2018年W杯で残ったら、戦いは険しい。

 FW齋藤学(横浜F・マリノス)、MF山田大記(カールスルーエ/ドイツ)、FW工藤壮人(柏レイソル)ら、2013年東アジアカップ優勝メンバーや、MF大島僚太(川崎フロンターレ)、DF松原健(アルビレックス新潟)らリオデジャネイロ五輪世代が競争力を見せられるか。彼らの奮起が望まれる。

■本田圭佑を最大限に生かす「4−3−3」が最適
佐藤 俊(フリーライター)

 3月の親善試合では、4−2−3−1をベースに戦っていたが、システム(型)にはとらわれない監督ゆえ、相手との力関係や戦い方によって、臨機応変に対処していくだろう。それでも、ベースは4−3−3がベターと考える。というのも、準々決勝で敗れたものの、1月のアジアカップにおける戦いぶりが際立っていたからだ。すべての試合で相手を圧倒し、システムのフィット感が抜群だった。

 ポイントとなるのは、インサイドハーフの本田圭佑。

 現状、監督のプライオリティは縦への速い攻撃にあるが、最終的にはカウンターも、遅攻もこなせる"全攻撃型"を目指しているはず。それには、そのタクト(指揮)を執れる選手が不可欠である。それも、縦に速い攻撃のスイッチを入れるだけでなく、監督の目前で平然とバックパスを出して、攻撃をやり直すプレイやリズムを変えるプレイができるのは、本田だけ。それだけの度胸と、高い戦術眼が彼にはある。

 これは、同時に本田がチームで生き残る術でもある。前線の選手には、スピードと突破力が求められるため、そこでの起用はタイプ的に難しい。しかし一歩下がれば、そこまでのスピードは要求されない。前線を支援しつつ、守備にも目を配るなどの、攻守の舵取り役に徹すればいい。かつて、中田英寿が攻撃的MFからひとつポジションを下げて、存在感を高めたことがある。それと同じようなことが実現できるのではないか。

 もうひとつ、カギを握るのは、宇佐美貴史だ。

 本来攻撃では、選手の組み合わせが重要となる。とすれば、前線の左サイドには、本田と長友佑都との連係を考えて、香川真司を入れるのが妥当だろう。だが、それではこれまでの代表と変わらないし、ハリルホジッチ監督が求める"速さ"と"強さ"という点からしても、ベストな選択とは言えない。

 そこで、宇佐美である。宇佐美という"異端"を入れることで、本田や長友との関わり方に変化が生じたり、左サイドの攻撃に"違い"を生み出したり、できるかもしれない。それが、新たな攻撃パターンとなり、日本のストロングポイントになることを期待したい。

 中盤の底のアンカーには、今野泰幸が適任だ。敵の潰し、球際の強さ、ボールを奪ってからの展開力は秀逸だ。長谷部誠も、アギーレ監督時代にこのポジションで自己の可能性を広げた。2018年W杯でも、チームを支える"ベテラン枠"として、今野との併用があってもいい。

 また、本田が故障などで戦列を離れた場合は、遠藤保仁を起用したい。本田の代わりは、彼にしか務められないと思う。