今、日本国内のみならず、世界的にも注目を集めているレースシリーズが「スーパーGT選手権」だ。ゴールデンウィーク期間中の5月2日〜3日に富士スピードウェイで開催された第2戦には、2日間でのべ9万1500人もの観客が詰めかけ、大いに盛り上がった。

 モータースポーツの人気低迷が叫ばれるなか、市販車モデルを改造したレーシングカーで競われるスーパーGTがここまでファンの圧倒的な支持を得ている理由は、やはりレースの面白さにある。

 スーパーGTは2クラスあり、上位のGT500クラスには日本を代表するトヨタ、ニッサン、ホンダの3メーカーがワークス参戦。トヨタは「レクサスRC F」、ニッサンは「GT−R」、ホンダは「NSX」 と、自社の看板ともいえるスポーツカーをベースにしたマシンを投入し、ハイレベルのバトルを繰り広げている。

 F1のようなフォーミュラカーではないGT500のマシンが、時速300キロを超えるスピードで1コーナーに突っ込んでいく。その迫力には圧倒される。

 下位のGT300クラスは、多種多様なマシンが繰り広げる、予測不能のバトルが魅力となっている。国産ハイブリッドカーのトヨタ・プリウスやホンダCR−Zから、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、BMW、メルセデス、アウディといった海外のスポーツカーまで、14車種27台がエントリーする。

 ひとつのレースシリーズにこれほどバラエティに富んだマシンが勢ぞろいするのは、世界広しといえどもスーパーGTだけだろう。

 もうひとつレースを面白くしているスーパーGTならではの要素がある。それはタイヤメーカーによる開発競争だ。現在はF1を始め、世界中のほとん どのカテゴリーでタイヤはワンメイクとなっているが、スーパーGTではGT500とGT300の両クラスに国内外の複数のタイヤメーカーが参戦し、激しい 開発競争を展開。コース上のバトルをさらにヒートアップさせているのである。
 ドライバーの顔ぶれも豪華だ。日本のトップドライバーが勢ぞ ろいするのはもちろんだが、数々の世界的レースで活躍するBMWのワークスドライバー、ヨルグ・ミューラーに加え、今季からは元F1ドライバーのヘイキ・ コバライネンや現在マクラーレン・ホンダのテストドライバーを務めるオリバー・ターベイといったヨーロッパの強豪も戦いの場を求めてスーパーGTにやって 来た。
 サーキットに行けば、国内外のトップドライバーたちと会うことができ、他のカテゴリーでは見たことのないほど多種多様なレーシング カーを間近で見られる。そのうえ、技術競争の面白さもあるのだから、スーパーGTはモータースポーツやクルマ好きにはたまらないレースになっている。
  また、レーススケジュールの合間にピットではレースクイーンの撮影会やイベントが行なわれたり、バックステージではアイドルのライブがあったりと、サー キット全体がエンターテインメント空間と化している。これもまた日本で発展したスーパーGT独自の魅力となっているのである。
 そんなスーパーGTにもうひとつ新しい魅力が加わった。今季から新設されたFIA-F4選手権が、スーパーGTのサポートレースとして開催されることになったのだ。

 FIA-F4は若いドライバーたちが腕を競う入門用のフォーミュラカーレースで、各自動車メーカーや有力チームが育成ドライバーを送り込んでいる。レースの本場ヨーロッパでもFIA-F4は始まっており、ドイツでは今年、史上最多7度のF1世界王者に輝いたミハエル・シューマッハの16歳の息子ミックが参戦して大きな注目を集めている。

 将来のモータースポーツ界を担う若いドライバーたちがステップアップを目指してがむしゃらに戦う日本のFIA-F4もレースファンから熱い視線が注がれているが、コース上のバトルも熱くてスリリングだ。

 富士では時速230キロのスピードで1コーナーに3、4台で並んで入っていくシーンが何度もあり、観客はどよめいていたが、それ以外のコーナーでもサイド・バイ・サイド、ホイール・トゥ・ホイールの手に汗握るバトルが展開されていた。

 今、日本でプロドライバーを目指す若いドライバーたちを囲む状況は決していいとは言えない。F1で戦う日本人ドライバーはおらず、スーパーGTを除けば、国内のレース人気も低迷を続けている。それでも富士で話を聞いた3人の若き俊英たちは自分の置かれた状況を冷静に分析しながらも、大きな夢を実現させるために奮闘していた。

 富士での第3戦で優勝し、ランキング2位につける坪井翔(TOM'S SPIRIT)は、今年トヨタの支援を受けてF4に参戦している19歳だ。

「誰も世界で走っていないなら、先輩ドライバーを押しのけてでも自分が世界に出て活躍するしかないって思っています。そんな気持ちでやっています。僕はこの世界でプロとして生きていくことを決めましたので、やるしかありません。今年はF4チャンピオン取って、上のF3に乗って、F3世界一決定戦のマカオGPで活躍し、早く世界の舞台で走りたいです」

 富士の第4戦で2位表彰台を獲得した三笠雄一(B-MAX RACING TEAM)は、大学を卒業したばかりの22歳。安定した就職か、ドライバーの道を進むか迷ったこともあったが、今年のF4参戦をきっかけにレース一本で生きていくことを決めたという。

「夢はF1ですが、まずはプロとしてレースで食べていきたい。でも、それだけではつまらないですよね。速いだけでなく目立ちたい。今モータースポーツはメディアにあまり取り上げられていないですが、いつかはレーサーといえば三笠雄一だよねと言われたいですし、レースをもう一度メジャーなスポーツにしたいんです。その夢を実現するためには勝って上のカテゴリーに絶対に行きます!」

 この春、高校を卒業したばかりの19歳の山田遼(美人&DRP AKIBA FTRS)は、富士ではトラブルもあり結果を出せなかったが、「夢はF1でチャンピオン」と澄んだ目で語っていた。

「現在のF1を見ればわかりますが、レースの世界は速さだけでなく、交渉力や資金集めも重要です。これまで僕の周りでも、速さはあったけどマシンに乗れないという人はたくさんいました。それでも結果を出さないと何も始まりません。まずはF4でチャンピオンになってF3にステップアップし、自ら結果を出して道を切り開いていくしかないと思っています」

 若いドライバーたちのドライビングは荒削りでミスも多いが、ひとつでも前の順位を目指してひたすら攻め続ける走りは、レースのルールを知らない人でも理屈なしに面白い。この中から将来の日本、もしかしたら世界のレース界を背負うドライバーが出てくるかもしれない。スーパーGTのサーキットに足を運んだ際は、ぜひ一度、彼らの激しく、熱い戦いも見てほしい。

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【スーパーGT選手権 2015年開催スケジュール】

4/4-5 Round1 OKAYAMA 岡山国際サーキット
5/2-3 Round2 FUJI 富士スピードウェイ
6/20-21 Round3  THAILAND チャン・インターナショナル・サーキット(タイ)
8/8-9 Round6  FUJI 富士スピードウェイ
8/29-30 Round5  SUZUKA 鈴鹿サーキット
9/19-20 Round6 SUGO スポーツランドSUGO
10/31-11/1 Round7  AUTOPOLIS オートポリス
11/14-15 Round8  MOTEGI ツインリンクもてぎ

村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo