G.W.も終盤。学生にとってはこれから本格的な就職活動シーズとなるが、『内定童貞』(星海社新書)で、就活の欺瞞と問題を暴き物議を醸した中川淳一郎(元無職)と『傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』で、慶應生、TOEIC950点ながらも就活に失敗した女子の奮闘&再生記を描き話題を呼んだ小野美由紀(元無職)と、『内定童貞』担当編集者の今井雄紀が、結局どうすれば面接で通るかについて語り合った。

小野:星海社(「内定童貞」の出版社)は、どんな面接だったんですか?この対談に同席している星海社の今井さん、紺野さん(その場に同席した編集者)、教えてください。

今井:星海社は、かなりあけすけ。僕の面接をしてくれたのが紺野さんだったんだけど、「給料半分になるけどいいの?」って。実際の金額も教えてくれたし。

紺野:2次面接で聞くのは、「あなたの本棚から10冊、本を持って来てください」と言うの。

小野:それは出版社らしいですね。

紺野:でも、最近だと、面接で応募して来た人に好きな本を訪ねる事は「思想を問う」ことにあたるから、就活倫理規定に反するって言うんで、ダメらしいよ。

中川:出版社の面接で好きな本聞いちゃダメって、じゃあ何聞きゃいいんだよ!!

小野:「どんなAV見てるんですか?」は思想を問う行為に当たるんですかね?!

中川:いや、それもバリバリ思想でしょ! 巨乳が好き、SM好き、とか。

小野:面接官と性癖が被ったら、めっちゃ意気投合しそうですよね。

今井:うちは、本来なら聞いちゃいけないようなこともバリバリ聞かれましたからね。「お父さんどんな仕事してんの?」「お金持ち?」とか(笑)。

中川:それだって重要なことだろうが! 『内定童貞』でも書いてるけど、「企業側も、就活生も、ウソをつかずに本当のことを話した方がよっぽどいい」ってことだよ!
 
今井:読んでくれた学生さんの中にも、「この本を読んで楽になった」という感想が多いですよね。星海社はすでに「面接ではウソをつけ」っていう新書も出しているので、自社内矛盾なんですけどね……。

小野:矛盾じゃないんじゃないかな。もっと気楽に考えろよってことでしょ。「面接」っていう人間関係を。私が中川さんの本の中で好きなのは、この一文です。

“本当の意味での「失敗」という言葉は、人生においてはあまりないのではないだろうか。 あくまでも「コース変更」というだけであり、常に人生は軌道修正の連続なのである。仕事をしていてもそうだ。当初思い描いていた通りに進むことなんてない。”

本当にそうだな、と思います。就活に失敗した人が読んでも、共感できる。

中川:「やらかしちゃっても、ちょっと考え直すか」って思えたらいいんですよね。

小野:そう、就活に失敗しただけで人生が終わりと思うのはおかしい。就活っていうのは、長い長い人生の階段があったら、最初の一段目をどう上がるか、ぐらいの些細なことでしかないと思うんですよ。最初の一段を、上ってみて、もし失敗したなと思ったら、一段降りて、もう一回上り直せばいいわけだし、2段目からは上る位置をずらして、上っても良い。階段の横幅は自分が思ってるよりずっと広いから。

中川:転職する時に悩む人っていないんだよ。転職した先の会社がダメだったらみんなすぐ辞めるでしょ。それと一緒だよ。別に最初の会社で悩む必要なんてないんだ。外資系企業を延々と転職し続けるやつって毎回ヘコまないんだよ。オレの知り合いの熊村剛輔なんてもう9回転職してるぜ!なもんだから、周囲の連中は「10回目、早くしちゃいなYO!」なんてそそのかすし、「熊村剛輔氏、・9か月ぶり9回目の転職です!」なんて言っては「転職界の清水健太郎」「転職界の小向美奈子」と呼んでいる。ただ、彼の凄いところは毎回年収上げてるところなんだよね。「プロ転職家」として極めて優秀です。

■ダメだと思ったら戦法を変えろ!

中川:小野さんも俺も、雇われるのに嫌悪感があるんだよ。俺なんか4年しか博報堂に居られなかった。それ以来、14年間ずっとフリーなんで。

小野:でも就活はしてよかったと思ってる?

中川:圧倒的に思ってる。それは、「元博報堂」って肩書きを得たからです。あとは、企業の論理ってヤツがわかったからこそ、フリーになってお金が稼げている。フリーしかやったことない人って「なんでそんな煩雑な手続きが必要なんだ。企画の合否なんて今そこで決めちゃえよ」なんて思うけど、会社という組織では、稟議があって、必要な部署を通したりする必要もある。その手順を理解しているかいないかが、「発注主の気持ちが分かるフリー」ってことになり、それで金もらってるようなもんだからね。

小野:それはそうですよね〜。肩書きはあるならあったほうがいい。中川さんの「内定童貞」はどんな読者に読んでもらいたいですか?

中川:この本は、「内定童貞」に出て来たOくんみたいな学生に捧げたい。

小野:あの、OB訪問した際にさんざん「広告代理店に向いてない」「君はメーカー向きだ」って言われ続けたのに頑なに広告だけを目指して撃沈した、Oくん?

中川:そう。そもそも向いてないなら、戦法を変えろ! 得意分野で勝負しろ!

小野:この本は就活本と銘打ってはいるものの、読んでいると、中川さんの人生に対する姿勢や、生きる上での戦法が伝わって来て、仕事だけじゃない、全ての悩みに効く気がします。……中川さんが、そういう戦法を持ちはじめたのはいつからですか?

中川:人を変えるのは難しいっていうのを、アメリカの高校に行っている時に、さんざん白人との軋轢で学んだんだよね。日本人嫌いの白人に、日本人のよさを分かってもらうのは難しい。じゃあどうするか?避ける、もしくは別の道を行くしか無い。

小野:他人は変えられない。でも自分は変えられる。そういうふうに私も就活の時から考えられたらよかったんですけどね。

中川:とか言いつつ、小野さんは、夢、叶えてんじゃん!

小野:まあそうですけど、夢ってレベルじゃないですよ。あくまでも低いレベルの「目標」をこなしていたら、気がついたらできていた、という感じ。階段の一段目でつまずいたことで、しょぼい自分の現状を把握して、違う上り方で上って行く方法を見つけて行ったというか…。あとは、やりまんにはなるな!ってことですね。

今井:小野さんは「傷口から人生。」をどういう人に読んでもらいたいですか?

小野:「傷口から人生。」は、就活や親子問題、学歴コンプレックスをこじらせてリアルな世界になかなか一歩踏み出せない「精神的処女」が、どうやって心の処女膜をブチやぶって、社会に適合してゆくのか、その過程を描いた本なので、そういう意味では、「内定童貞」と経る過程は一緒かも。

今井:中川さんの本が就活の特効薬としたら、「傷口から人生。」は社会に出る一歩手前でうじうじ迷っている人への、劇薬って感じですかね。

小野:そうですね。中川さんの「内定童貞」で就活の戦略を立てて、もしつまずいてどうしても上手く行かなくなったら、その時はこちらを読んでもらうといいかなぁ。
これから就活をするみなさん、あんまり真面目にならずに内定童貞&処女を脱してください!! 童貞を捨てよ、社会へ出よう(?)。

小野美由紀(おの・みゆき)
ライター・コラムニスト
1985年東京都生まれ。慶應大学文学部仏文学科卒業。卒業後、無職の期間を経て2013年春からライターに。幻冬舎プラス「キョーレツがいっぱい」ALICEY「未婦人公論」など、連載多数。2014年12月、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)を出版した。2015年2月、デビュー作『傷口から人生。〜メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』を発売。