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●忘れられない押井監督の笑顔人気アニメが実写化される際、ファン最大の関心事は、やはりキャスティングに尽きる。『機動警察パトレイバー』の実写化プロジェクト『THE NEXT GENERATION(以下TNG) パトレイバー』で、原作の主役・泉 野明(いずみのあ)を連想させるキャラクター・泉野 明(いずみのあきら)役に抜てきされたのが、女優の真野恵里菜だ。

プレッシャーのかかる役どころながら、野明とは違う、しかしながら野明に通じるなにかをもった"人間"として、見事に明を劇中に存在させることに成功したように思われる。 アイドルグループ・モーニング娘。らが所属するハロー!プロジェクトから、アイドルとしてデビューした真野。2013年2月の卒業後は、役者業を中心にキャリアを積み重ねてきた。今年は『TNG パトレイバー』に続き、園子温監督の『新宿スワン』(5月30日)、『ラブ&ピース』(6月27日)、『リアル鬼ごっこ』(7月11日)の公開を控えており、人気若手女優の仲間入りを果たしている。押井守監督、園監督をはじめ、なぜ実力派監督たちに彼女が支持されるのか、その秘密に迫った。

――いきなりですけど、足に重りをつけてコンサートのリハーサルをしているという話を耳にしたんですが…。

本当です(笑)。極端なんですよ。練習で重りを足に1キロずつ着けたら、本番の2時間は、体がもっと軽くなるかなって。思い込んだらやってしまうんです。

――『ドラゴンボール』の悟空みたいですね(笑)。『TNG パトレイバー』でもそんなストイックな準備を?今回はそういうことはやってないですね。ただ、撮影が長くて体調を壊せないこともあり、特に食事には気をつけました。いっぱい食べるようにしていたので、その分ちょっと丸くなった時期もあったりして……。今とその時とでは体重もだいぶ違ってます(笑)。特車二課の隊員たちは、いつも上海亭のチャーハンとかカップラーメンのような高カロリーなものを食べてるから、明もきっとこんな体型なんじゃないかと、あとになって自分でこじつけてました(笑)。

――確かに、シリーズでも食事のシーンが多い印象です。

撮影中はみんなけっこう食べてましたね。特に人気があったのは、やっぱり上海亭のチャーハン! あとは、長編劇場版の冒頭に熱海で食べている会席料理もおいしかったですね。

――撮影開始から一年半ほどを経て、やっと長編劇場版公開ですが、あらためて『TNG パトレイバー』はどんな現場でしたか?

映像作品で、半年間も同じチームでできるということはあまりないんです。舞台でも長くて三カ月で、私自身いままでで一番長い現場でした。だからこそ得られるチームワーク感っていうのがすごくあって。隊員たちキャストだけではなく、技術スタッフさんともコミュニケーションをとることができました。画面に映るのは私達だけど、画面の反対側にはこんなにたくさんのスタッフの方がいて、これだけ大きな作品ができるんだなと感じましたね。プレッシャーはあったけど、このスタッフさんたちがいれば大丈夫!と安心して撮影にのぞむことができました。

――役作りの面ではスタッフさんたちの用意した小道具が役に立ったそうですね。

明はロボットが好きなので、小さいロボットのフィギュアがデスクにたくさんおいてあるんです。平和を守りたいのはもちろんだけど、純粋にレイバーに乗りたいって願望も強い。ほかにも、引き出しの中には愛犬の写真が入ってたりして。それを見て、「ああ、この子は、ものとか小さい生き物に対して思いやりが強いんだな」とイメージが膨らみました。だから、大田原さんがお酒ばっかり飲んでダメな部分があっても、怒るんだけど、そこには愛情があります。

――周りの反応はいかがでしたか?

等身大だねって言われましたね。いままで変わった役が多かったので(笑)。超能力が使えたりとか。

――そうなると、逆に役作りが大変そうです。

実は、役作りはあまりしませんでした。まわりのキャラクターが濃いのもありましたが、明と佑馬に関してはストーリーをまわしていく必要もあったので。最初のころはそこに迷って、佑馬役の福士(誠治)さんに聞いたりもしました。福士さんから「役を固めてしまわずに、その場に応じて変わっていけばいいんじゃない?」とアドバイスをいただいたこともあって、その場で生きればいいんだなって。特に元気な子にしようとかは考えませんでした。

――押井監督は、今回総監督という立ち位置です。

押井さんは、わたしたち隊員キャストの輪から離れたところで見てくださっていました。気になったところがある時は、側にきて、その人だけに指摘してくださる。本当にお父さんみたいな存在でしたね。

――特に印象的だったアドバイスは?

謎の女性・灰原(森カンナ)に出会ってから、意識が変わっていく明を象徴するバスケットボールのシーン。プレイをずっと長回しで撮って、最後はシュートを決めて終わるんですが、撮影前に監督から「明じゃなく真野自身のことに置き換えてもいい。何か手に入れたいものがあって、いまゴールを決めないと全部なくしてしまう。そんな気持ちでやれ」と言われていたんです。その言葉を受けてなのか、本番はワンテイクで決まりました。しかもリングに当たらずスパッと。あれは終わった後自分でも震えましたね。

――押井監督も驚かれていたのではないでしょうか。

押井さんも、カットをかけたあと、手で大きな○を作ってくださいました。その時の笑顔が忘れられないですね。押井さんがずっと作り上げてきた『パトレイバー』なので、とにかく押井さんから「実写やってよかったな」という言葉を聞きたいねって隊員みんなで話してたんです。それができたら、私達も「役者やっててよかったな」と思えますから。

●太田莉菜さんとは考え方もルックスも正反対――劇中では、特車二課のメンバーが抜群のコンビネーションを発揮します。

休憩中も騒いだりするわけじゃなくって、すごく大人な人たちだなと思いました。ただ、よくみんなで「このキャストって、決して名前がすごく出てるとか、有名なわけじゃないけど、どこかしらアニメ版とかぶるところがある」ということは話していたんです。縁があってこの作品に出会ったからこそ、「このメンバーでもちゃんとできるんだぞというところを見せたい」と、すごく意識が高かったですね。

――個性的なキャストぞろいですが、例えば特車二課のキャストのみなさんがクラスメートだとして、誰と一番仲良くなってみたいですか?

太田莉菜さんかな。まったく活動してきたフィールドが違うから、考え方も違うんです。ルックスも正反対というか、あのクールな雰囲気にすごく憧れるんですよね。でも、太田さんは、「アイドルとしてやってきた真野ちゃんの愛嬌は強みだよ」と言ってくれて嬉しかったです。

――確かに劇中でも印象は真逆ですね。

最初は、カーシャというクールな役柄もあり、あまりコミュニケーションをとることができなかったんですけど、オールアップの時には手紙をくださって、それがすごくうれしかったな。特車二課の仲間として、また女優としてはライバルでもあるけど、また一緒にお仕事もしたいねというメッセージをいただきました。まったく違う世界で活躍してきた先輩でもあるし、お母さんでもあるから、私が普段一緒にいる人たちとはまた違うので、お話ししているとすごく胸がときめくんです。

――もっとさかのぼって、はじめに『TNG パトレイバー』への出演が決まった時はどう思われましたか?

私、『パトレイバー』をまったく知らなかったんです。でも、最近実写化される作品が多い中で、自分の好きな作品が実写化されるのを複雑に思う気持ちはすごくわかるんですね。きっとイヤな思いをするファンの方もいるんだろうなって。でも、選ばれた以上はなにか縁があるはずだし、とにかく全力でやろうと思いました。

――不安も大きかったのではないかと思います。

普通はシリーズがあって、それが好評で映画を撮影する流れです。でも今回は、最初からまとめて映画まで撮るということが決まっていたので、そこは不安しかなかったですね。

――撮影スタートから、映画公開までの期間が長いですものね。

撮影が終わって一年半後に劇場公開なので、「一年半後って、私なにやってるだろう」と考えてました。ただ、撮影が終わってからも役者業を充実させていきたいということは思っていました。だから、「この子あの作品にも出てる、あっ、この子ってパトレイバーに出てた子なんだ」と思ってもらえるように、『パトレイバー』とリンクさせられる作品にたくさん出演したいなとモチベーションが上がりましたね。

――『パトレイバー』自体も、根強いファンが多い作品ですよね

人気作だからこそ、「誰この子?」と思う方も多いと思うんです。だからこそ、闘争心というか野心というか、燃えてました!

――その時から考えて、今の自分の現状はどのように映っていますか?

ハロー!プロジェクトを卒業したころに想像していた自分から比べると、充実はしています。でも、まだまだ自分の中で満足はしていません。みんなが思い描くイメージを壊す役にも挑戦したい。

――確かに、アイドルとしての印象が、一般的にはまだ強いかもしれません。

"真野恵里菜"で検索すると、やっぱり一番にハロー!プロジェクトって出てくるんですね。そういうイメージに負けたくない。撮影現場で『アイドルだもんね』と言われることがあるんですけど、自分の中では、それはマイナスに捉えています。「アイドルだから愛嬌があればいい」とかそういうことじゃなく、ハロー!プロジェクトの看板を背負っているからこそ、「ちゃんとできるんだぞ」というところを見せたいですね。

●つんく♂さんの決意には勇気をもらいました――ハロー!プロジェクトの時の経験で、お芝居をする上でも役に立っていることは?

昔、ダンスが全然うまく踊れていなかった時に、つんく♂さんから「体に部分的に筋肉をつけたほうがいいよ」とアドバイスをいただいたことがありました。それで、「なにごともいきなり形から入っても無理なんだな」と思って。一個一個積み重ねていくと、ちゃんとモノになるということがわかったんです。種類は違っても、作り上げていく段階はお芝居でも一緒なんだなと感じました。

――つんく♂さんといえば、先日、声帯摘出手術を受けられたことを公表されました。

発表後、まだ直接お会いできていないんです。最初にそのことを聞いた時は、本当にびっくりしました。でもやっぱり勇気をもらいましたし、自分が今こうしていられることが、すごく幸せなことなんだと改めて気づくことができました。卒業したからには、やっぱり活躍している姿をつんく♂さんにも見てもらえるようになりたいですね。

――押井監督をはじめてとして、『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』の園監督など、実力派の監督の作品への出演が続いています。

何回も仕事をさせていただくのはとってもありがたいのですが、すごく不安もあります。今度お会いするまでに、どれだけ成長したか、どれだけ表現の幅が増えたかを見せなきゃって。それができないと、ずっとお仕事させていただくことはできないんだろうなと思うんです。

――個性的な作品が多いですが、撮影に向けて「今回はこうしよう」とかテーマを決めて作品にのぞまれるんですか?

逆に自分で色を決めないでいこうと思っています。やっぱり監督によって撮り方がぜんぜん違うこともあるので。「映像作品はこうやって撮るんだ」と、自分の中で決めちゃうと、対応しきれなくなると思うんです。だから、まっさらな状態でのぞみたいなと。最初は時間がかかり、監督にも「なかなかわかってもらえないな、真野は」って思われるかもしれないけど、少しずつ作り上げ、作品に合った色になりたいですね。

――女優として、目指すところは具体的になってきましたか?

まだ、到着点はわかりません。でも、そこに向けて歩いていけてはいるのかなと思っています。ハロー!プロジェクトを卒業した先輩たちが、バラエティ番組や舞台などで活躍している姿をたくさん見るんですが、私は映像作品で結果を残したい。

――確かに、まだ映画賞などでも賞を獲っている印象はないですね。

だから、映画賞が発表される時期になると新人賞の結果が気になりますし、「そういえば新人賞っていつまでもらえるんだろう」と考えたりします。

――同世代の女優さんに対してもライバル心は強い?

やっぱり意識します。「この役やりたかったな」って悔しい思いをすることもしばしば。この仕事をしていてちょっと後悔するのは、映画を見て作品自体を楽しめなくなっている自分に気がついた時です。でも、それは職業柄で、それだけ自分がこの仕事をやりたいと思っているんだろうなって。逆に、ほかの同世代の女優さんが見た時に、「この役、私がやりたかったな」と思ってもらえるようになりたいですね。

インタビュー中、作品との出会いを、"運命"や"縁"という言葉で表現していた彼女。だが、その機会をつかみとることができたのは、幼いころからエンターテインメントのプロたちに囲まれ、ショーを段階的に作り上げていくメソッドを自分なりに身につけていったクレバーさと、高いパフォーマンス力を維持するプロ意識の強さ、そして闘志にも似た負けん気の強さ、さらにあふれる芝居への愛があったからこそだと感じた。映画賞の壇上で彼女の姿を目にする日は、そう遠くなさそうだ。

プロフィール真野恵里奈1991年4月11日生まれ 神奈川県出身。2006年よりハロー!プロジェクトに所属。2008年にシングル「マノピアノ」でデビューし、2013年2月にハロー!プロジェクトを卒業。その後は映画やドラマ、舞台を中心に活躍。園子温監督の連続ドラマ『みんな!エスパーだよ!』、鴻上尚史氏が作・演出を務めた舞台『ベター・ハーフ』などに出演。(C)2015 HEADGEAR/「THE NEXT GENERATION -PATLABOR-」製作委員会