知られざる専門誌の世界。今回は、大豆加工食品の総合専門誌『フードジャーナル』を紹介します。

『フードジャーナル』
創刊:1982年
月刊誌:毎月15日発売
部数:6500部(公称)
読者層:大豆加工業者、スーパーバイヤー、豆腐製造機メーカーほか
定価:1728円
購入方法:発売元・フードジャーナル社に直接注文。

 冷奴のおいしい季節がやってきた。のどごしのいい絹ごしが好きか、大豆の味がしっかりする木綿がいいかは好みが大きく分かれるところだが、「ほとんどの人がそこ止まり。豆腐のメーカー名を知っている人はまずいません」と、『フードジャーナル』の西尾俊治編集長(55才)は語る。

 現在、私たちが口にする豆腐は、店先で1日100丁ほど作って売っている個人商店(町店)のものから、年間売り上げが180億円に迫る大手メーカーのものまでさまざま。値段も20円程度で売られているドラッグストアの特売品から、1丁800円の高級品もある。

 そして、1970年に全国に5万軒あった豆腐の作り手が、年々減り、現在は8500軒ほどというのも現実だ。

「原因は人口の減少。食生活の西洋化。パンと豆腐はまずいっしょに食べませんから。あと、高齢化による町店の廃業。昔は、町の豆腐店は儲かったんです。それが現在の町店の減少につながった一面があります」と西尾さん。

 時代を昭和初期に巻き戻す。京都、大阪など関西の豆腐店は石川県出身者、関東は新潟県出身者が多かったそうだ。

 豆腐作りは毎日、深夜の2時、3時の起床。冬は手を切るほど冷たい水仕事だ。それゆえ北国出身で辛抱強い農家の次男、三男が就いたのだとか。京都の“能登屋”や、東京の“越後屋”という屋号はその名残りだ。

「原材料は安かった大豆と、少量の凝固剤で、7割は水です。それを作って売れば日銭が入る。朝早くからコツコツ働く親の背中を見て、子供も真面目にコツコツ勉強して、みんな高学歴になる。でも豆腐店の大変さを知っているから、親の後は継ぎません」

 それが今日の後継者不足を招いた一因だが、それだけではない。豆腐店で成功した親は、大きな土地を手に入れて銭湯に商売替え。それで儲かるとマンション経営でアガリ、と西尾さんの話す、町の“豆腐店すごろく”は興味深くて、思い当たることばかり。

 一方、同誌の人気企画、巻頭インタビューに登場してくる豆腐メーカーの経営者、T氏の話にも引き込まれる。

 T氏は、当時、勤務していた大手乳製品メーカーで食中毒事件が起き、顧客に土下座して回る体験をした。その後、妻の父親が経営する売り上げ30億円の豆腐メーカーに転身。そのときに「目標1000億円!」を掲げたそう。

〈「美味しい豆腐を作りたい」…と一生懸命、仕事に取り組んでいるのに、なぜか誇りを持てない。入社時、そんな風に感じた業界。それなら自分が変える〉と考えたからだ。経団連への入会も、その表れだ。

〈豆腐製造業はもちろん、大豆加工品業界全体で見ても、経団連への入会が承認された企業はこれまでない。そもそも入会を考えた企業もなかったのではないか〉と同誌は説く。

 昨今の、業界の新風は、できあがった商品にも表れていて、バラエティーに富んだ商品が、春夏と、秋冬の年に2回、発売される。

〈特集 2015春夏新商品動向〉では、〈いつもなら「冷奴」商戦をターゲットにした商品が数多く並ぶところだが、今季は少し印象が違う〉として、同じ北海道産の大豆を使用した、濃厚タイプでありながら、堅さだけ違う京都の“純情の絹”“誠実の絹”“堅実の絹”を紹介。

〈客は調理法によって使いやすい堅さの豆腐を選択できる〉のが利点だ。

 そのほか、“らく楽料理 切れてる堅豆腐”や“京都お料理用 水切り済み絹豆腐”“元気とうふ濃ゆくてかたい”など、形状をそのまま商品名にしたものや、“しそ風味とうふ”、“アボカド寄せ”などの変わり豆腐も出そろって、スーパーの豆腐売り場は大賑わい。

 とはいえ、「もともとみやげものにはなりにくい商品なので、こだわりの豆腐を作っている町店のものや、地域に根ざした中小のメーカーの商品はそこへ行かないと食べられません」と西尾さん。GW中、地方の食堂や居酒屋に入ったら、「ご当地豆腐」を注文してみますか?

取材・文/野原広子

※女性セブン2015年5月14・21日号