日本では、インフルエンザ流行期といわれる昨年11月下旬から、今年3月末までに全国で約1500万人が医療機関を受診した。この累計受診者数は、過去4シーズンで最も多く、今季も猛威を振るった。
 巨人軍で指揮を執る原辰徳監督もインフルエンザB型に罹り、4月15日から4日間ほど休養。その間、川相ヘッドコーチが監督代行を務めたが、同コーチも前週に同じインフルエンザB型に感染し、現場復帰したばかりだった。

 近年専門家の間でもよく聞かれることは「インフルエンザの感染を避けるためにワクチンを接種する人も多いが、実は感染を防ぐ効果はほとんどない」との指摘だ。
 また厚生労働省のホームページにも、インフルエンザの感染について「ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません」とあり、発症についても「抑える効果は一定程度認められます」と書き込まれており、気になるところ。さらに重症化については、「特に基礎疾患のある方や高齢者は重症化する可能性は高いと考えられています。ワクチンの最も大きな効果は、この重症化を予防することにあります」と記載されている。
 ワクチンの効果は、通常平均50〜60%。今シーズンのインフルエンザは、日本のほか北米、欧州などで流行の中心になったウイルスはA香港型(H3N2)で、高齢者が重症化しやすいとされる。

 世界保健機構(WHO)は日本を含む各国の専門家を集めて昨年2月に開いた会議で、今冬のワクチンに加える推奨ウイルス株を選定、欧米はそれに基づきワクチンを製造した。それにはA香港型も含まれていたが、実際の流行で主流になったのは推奨株とは特徴が異なるウイルスだった。
 そこで日本では、欧米とは違う株を選択し、同じA香港型でWHOの推奨株と遺伝的には極めて近く、製造過程でも変化しにくい性質の株を採用した。
 これで流行株の増殖を抑えられるかどうか各地から集めた80株について反応試験を行った。だが、十分な反応が見られたのは、このうちの36%にとどまったのだ。理由はワクチンの製造工程にあるとし、見直しを検討しているという。
 国内のインフルエンザワクチンの接種者は推定5000万人超といわれ、人口の約4割に上る。しかし、接種したワクチン効果の恩恵に浸れたのは、結局、3分の1程度。

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で起き、ウイルスはA型、B型、C型の3種類が知られている。このうち人の間で流行するのは主にA型とB型だ。
 A型は特に遺伝子変異が起こりやすく、人に抗体ができても少しずつ変異し、毎年流行を繰り返す。また、ウイルスの活動が高まる条件は、一般的に湿度と気温の低い冬の季節(11月〜3月上旬)とされている。
 通常、人の気道(鼻から喉、気管支などの空気の通り道)には、空気と一緒に小さなゴミや細菌、ウイルスなどの異物を粘膜に包み込み、外へ排出する働きをする。しかし、冬場は乾燥した冷たい空気に触れる機会が多いため、この働きが低下し、そのためインフルエンザに罹りやすい。
 症状は、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛に加え、喉の痛みや咳、鼻水など。一見、風邪のようだが、倦怠感や筋肉痛・関節痛などの全身の症状が特徴的だ。乳幼児では発症後1〜2日以内に起こることの多い急性脳症、高齢者や糖尿病など基礎疾患のある人では、肺炎などの合併症を引き起こし、最悪の場合、死亡する例もある。

 感染症予防に携わる東京社会医療研究所の大畑仁主任はこう警鐘を鳴らす。
 「今年流行しているのはA香港型で、5シーズンぶりの流行です。特に小さいお子さんは初めて感染する場合が多く、集団発生しやすいので、注意が必要。39〜40℃の発熱など典型的な症状が出たら、早めに医療機関を受診してください。インフルエンザに感染しても軽症で済む人もいますが、単なる風邪と思っても、感染を広げないためには家庭や職場でもマスクの着用を心掛けて下さい」