ハリルホジッチ監督率いる新たな日本代表が始動。3月の親善試合(2−0チュニジア、5−1ウズベキスタン)では、招集したメンバーのほとんどを起用して、選手たちのテストに時間を要した。それでも、そのわずかな時間の中で、ハリルホジッチ監督が志向するサッカーは少なからず見えた。そこで今回、指揮官が目指すサッカーにおいて、現時点で最も合いそうな選手は誰なのか。3人の識者にベストメンバーを考えてもらった――。

●重要視されるのは、球際の強さと前への推進力
 杉山茂樹(サッカージャーナリスト)

 ハリルホジッチ監督になって、布陣は「攻撃的」と言われるものになったが、選手たちの精神がそれに伴っていない。とりわけ、ハリルホジッチ監督は、選手個々の「球際の弱さ」を指摘している。

 その原因は、攻撃的なサッカーとは何か――日本サッカーがその意味を中途半端にとらえてしまった"弊害"にあると考えていい。それはつまり、高い位置でボールを奪う気迫に欠ける、推進力に乏しいサッカー。結局、日本サッカーの問題は、球際での強さと密接な関係にある、攻撃的サッカーの中核を成すプレッシングの追求を怠ってきたことにある。

 そうした"悪しき伝統"を払拭(ふっしょく)したいハリルホジッジ監督とすれば、ボールを追えないアタッカーは、特に強者を相手にしたときには、先発から外れる可能性が高い。それで言えば、宇佐美貴史と武藤嘉紀を比べた場合、先発候補は武藤となる。宇佐美は交代出場が妥当と見る。

 球際での強さにおいて、基本的に高いレベルにあるのは、本田圭佑。全盛期よりは落ちているが、それでも日本代表にあっては上位。スタメンから外れることはないだろう。

 岡崎慎司、川又堅碁、永井謙佑、小林悠は、プレイそのものは巧くはないが、球際の力に加えて、タテへの推進力もある。おかげで、監督のお眼鏡にかなった選手と言えるのではないか。反対に、巧さはあっても、強さに欠ける、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、乾貴士(フランクフルト/ドイツ)、清武弘嗣(ハノーファー/ドイツ)らは危ない。そういう意味では、売り出し中の柴崎岳も同じ。やや物足りなさを感じる。

 中盤で光るのは、今野泰幸だ。ボール奪取力は、この選手がピカイチ。ケガのため、所属するガンバでは試合に出場していなかったにもかかわらず、3月の親善試合で招集された理由はそこにある。ただし、32歳という年齢を考えると、31歳の長谷部誠との併用は難しいところ。

 そこで、注目されるのは、若手の中では力が抜けている大島僚太。ハリルホジッチ監督は、「まだ試してみたい選手が何人かいる」と語っているが、彼もそのひとりではないか。

 今野同様、負傷で所属チームの試合には出ていなかった内田篤人も、有力な先発候補。個人的には、守備的なMFとしても試してみたい選手だ。まったく同じことは長友佑都にも言える。そのボール奪取力を、真ん中のポジションでも見てみたい。

 親善試合の2試合で、新顔で目立っていたのは、藤春廣輝。前への圧力のかけ方がいい。

●カギ握るボランチは、森重&山口コンビが最適
 中山 淳(サッカージャーナリスト)

 まだ2試合しか消化していないので、未知な部分は多々あるが、アギーレ前監督同様、基本に忠実かつハードでアグレッシブなスタイルなのが、ハリルホジッチ監督のサッカーだ。したがって、各選手たちには、創造性やテクニックよりも「強さ」と「速さ」が求められる。

 また、ハリルホジッチ監督は、対戦相手によって何種類かのシステムを使い分けるのが特徴だ。3月に行なわれた2試合(2−0チュニジア、5−1ウズベキスタン)では、4−2−3−1を採用したが、例えば4−3−3など、試合中でも異なるシステムに変化させることが想定される。そうなると、複数のポジションをこなせる人材も必要になりそうだ。

 それらのことを踏まえて選んだのが、表のメンバー。もし目の前にW杯本大会が控えているのであれば、MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)やMF今野泰幸(ガンバ大阪)といったベテランを選出したいところだが、本番まであと3年もある。このメンバーでアジア予選に挑み、国際経験を積んでチーム強化を測っていったほうが賢明だろう。

 2列目の左サイドに配置した宇佐美貴史については、現時点では球際の強さなどに不安を抱えるが、ブンデスリーガ(2011年7月〜2013年6月/バイエルン・ミュンヘン→ホッフェンハイム)を経験しているので"強さ"の重要性は本人も熟知しているはず。今後、その不足している部分を切磋琢磨しながら、身につけていくことを期待したい。

 ポイントになるのは、ボランチ2枚の構成だ。ハリルホジッチ監督がこのポジションに求めるのは、第一にボール奪取能力を含めた守備力で、展開力は二の次になる。そういう点で、森重真人と山口蛍であれば、その条件を満たすことができる。

 さらに、4−3−3に変更する場合の対応としては、森重がボランチに残って、山口が一列前の左にスライドする。そして、右サイドの本田圭佑が、山口と並ぶ中盤の右に移動。2列目の真ん中にいる香川真司が、前線の右ウイングに入れば、メンバー交代をしなくとも、攻守のバランスが保たれる。

 あと、攻撃面において、効果的な速攻を実現するためには、2列目の両サイドの人材がキーになる。本来、そこにはタテに速い選手を起用したいところ。ただし、その手のタイプが日本には不足している。サイドバックの酒井高徳をコンバートするといったことも考えたほうがいいかもしれない。

●宇佐美はトップ下で起用するのがベスト
 鈴木正治(サッカー解説者。元横浜マリノス、名古屋グランパス)

 ハリルホジッチ監督が志向するサッカーを考えれば、選手に求められるモノは、"タテの速さ"と"球際の強さ"。そして、4−2−3−1か、4−3−3という基本システムを採用する中で、最も重要な役割を担うことになるのは、ボランチのふたりだろう。それぞれ、高いボール奪取力と、ボールを奪ったあとの攻撃参加という、攻守両面における活躍が期待される。

 そうすると、本来であれば、長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)あたりがファーストチョイスになるかもしれないが、先を考えれば、青山敏弘が適任。相手を潰せて、タテへの展開の速さもある。3月の親善試合では、ウズベキスタン戦(5−1)に先発して、豪快なミドルシュートを放って先制ゴールを決めた。素早いタテパスだけでなく、自ら前に出て行けて、シュート力があるのも魅力だ。

 パートナーは、柴崎岳。もっと"強さ"が出てくれば申し分ないが、パスの狙いどころなど、サッカーセンスは抜群なだけに、今後の期待を込めて抜擢したい。実力の高さは誰もが認めているところだし、ずっと試合で使っていけば、難なくこなせるはずだ。

 ボランチに次いで大事なのは、前線の両サイドのアタッカー。ここからどうやって決定機を作っていくかが、ブラジルW杯に挑んだザックジャパンのときから、日本の課題となっている。大事なのは、タテの速さはもちろんのこと、個で状況を打開できる力があるかどうか。アジアでは相手が引いてくることも多く、常にカウンターを狙えるわけではないのでなおさらだ。

 そこで、左が乾貴士、右が武藤嘉紀という人選でいきたい。3月の親善試合でも、ふたりはチームの動きの中でよくフィットしていた。それぞれ突破力もあって、試合を重ねていけば、もっともっとチャンスを作れるようになると思う。

 宇佐美貴史は、中央に配置。サイドに入っても仕事はできると思うが、中央からサイドに流れたり、サイドから中央に入ってきたりして、自由にやらせたほうが、彼の仕掛けや鋭いドリブル突破が一層相手の脅威になるはず。そして何より、彼の決定力を生かすなら、トップ下に入るのがベストだ。

 あと、FW本田圭佑(ミラン/イタリア)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)は、思い切って控えに回す。独特なリズムを持っている彼らがあとから出てくることで、思わぬチャンスが生み出せる。豪華なオプションとして使ってみるのも悪くはない。

文●スポルティーバ text by Sportiva