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プロ野球は開幕して1カ月が経過した。好スタートを切ったチームや、期待に反する成績でもがき苦しむチームなど、悲喜こもごもの様相を呈している。

例えば、昨季日本一のソフトバンクは、開幕前の予想に反してそこまで波に乗れない状況が続いている。そのチーム状況に歩調を合わせるかのように、9年ぶりにNPB復帰を果たした松坂大輔も苦しんでいる。いまだ一軍のマウンドに立つことができていないどころか、4月末の時点で登板できるメドすらたっていない。

そこで、今回はかつて「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔にクローズアップ。投球フォームや体の使い方といったスポーツの動作分析に詳しい「タイツ先生」こと自然身体構造研究所の吉澤雅之所長に、日本時代とメジャーリーグ時代の投球フォームの違いや、どうすれば復活できるかを徹底的に語ってもらった。

○"サイドスロー"になってしまった松坂

「日本在籍時の松坂投手の一番の特徴は、下半身の使い方にありました。高校時代、甲子園のマウンドで投げていた松坂投手を思い出してください。リリース時に軸足が"ビュッ"と宙に浮き、上半身が沈んでいく動きと同時に、後ろ足が"フッ"と脱力する松坂投手独特の動きをしていたと思います」。

ところが、メジャーリーグ移籍後は、最大の特徴であったこの下半身の使い方が失われてしまったという。

「理由はマウンドの硬さにあります。日本に比べてメジャーのマウンドは硬く、踏み込んだ足から、上体の力(重さ)を逃がすことが難しい。すると、松坂投手の下半身の動きは制限されてしまいます。スムーズな体重移動が失われ、後ろ足を引きずるような投げ方になってしまいました」。

マウンドの硬さに適応すべく、怪物のフォームはサイドスローのようになってしまったとタイツ先生は指摘する。

「前足で体重を逃がすことができなくなった分、メジャー時代の松坂投手の投球フォームは、縦回転から横回転に変わってしまった印象があります。身体を横回転に使えば、マウンドの硬さに関係なく、上体の力(重さ)を踏み込んだ足から横方向に逃がすことが容易になるからです。メジャー時代の松坂投手は、まるでサイドスローのような投球フォームに変化してしまいました」。

○マウンドを"蹴る"という表現のウソ

松坂の日本在籍時のフォームを、もう少し詳しく説明してもらった。

「投球時に後ろ足が"フッ"と脱力するという動きは、『後ろ足の重さを1度センター方向に働かせて、身体側に引きつける動き』と言い換えることができます。この一連の動きについて、よく(プレートを)"蹴る"という表現が使われますが、実際は違います。"蹴る"というよりは、股関節を脱力することで、バネのように下半身を使用することが可能となり、そこで生まれたエネルギーをリリース時に伝えていたのです」。

○復活のヒントは相撲にあり

日本のマウンドは柔らかかったため、縦回転の投球フォームから生じるその力を逃がすことができていた。ただ、メジャーの硬いマウンドのために"横回転のフォーム"を生み出した。それを再度、日本仕様に修正させるのにさしもの怪物も苦戦しているようだ。

「メジャー時代に染みついた投球フォームを元に戻すには、少なからず時間がかかるでしょう。松坂投手のオープン戦の投球を見ると、1試合ごとに微妙にフォームが異なります。これは恐らく、松坂投手自身も試行錯誤を続けながら、自分に合った投球フォームを探し出しているように見えますね」。

タイツ先生は、松坂が再生するポイントを「股関節の使い方を取り戻すこと」としたうえで、相撲のシコを取り入れるとよいと解説する。

「シコを踏んだ体勢で横移動しながら、ボールを投げる。この動きを繰り返すことで、松坂投手独特の下半身の使い方を思い出すことができるでしょう」。

この動きは腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる、スポーツをするうえで大切な筋肉を鍛えることにもつながるという。

「腸腰筋とは腰椎と大腿(だいたい)骨を連結する腹部の内側にある筋肉で、シコを踏んだ体勢のまま前進していくことで、自然と"腰が入った"状態になります。よく『腰を入れてスイングしろ! 』とか『腰が入った動き』といいますが、剣道や武術で使う"極意"の動きでもあり、古くから言い伝えられている正しい身体の使い方なのです」。

肩の筋肉疲労ということで、筋力を取り戻しながら、またイチからフォームを立て直している松坂。1999年のプロデビュー戦で、阪神などで活躍した巧打者・片岡篤史から豪快な空振りを奪ったあの直球が脳裏に焼きついているファンが、再び胸を熱くするような投球を見せてほしいものだ。

週刊野球太郎

スマホマガジン『週刊野球太郎』では、黒田や松坂などメジャー出戻り選手に大注目! 「日本復帰成功なるか? メジャー出戻り選手を合否判定」、「タイツ先生のメジャー出戻り選手フォーム徹底解剖」、「必ず応援したくなる! メジャー出戻り選手たちが残した伝説」を連載します。『高校野球&ドラフト候補選手名鑑』では、センバツ甲子園で活躍した球児インタビューや野球部訪問を予定!

(週刊野球太郎)