写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●部隊の中の非常勤講師な感じだったアニメ作品の実写化は、ファンにとって期待よりも不安が勝ることが多い。あの『機動警察パトレイバー』が実写化されると知った時も、そう思ったオールドファンは少なくなかっただろう。特に今回の『THE NEXT GENERATION パトレイバー』では、アニメ版から代替わりをした次世代の人物たちを据えながら、名前や立ち位置がセルフパロディーともいえる設定になっているため、過去の作品を知るファンはどうしてもその印象を引きずらざるを得ない。

しかし、そんな思惑をよそにキャストたちはシリーズ中で独自のキャラクター像を作り上げ、実写版パトレイバーの世界を描き出していった。過去の記憶に引きずられるべきでないと気付かされたのは、見ている我々の方だったのかもしれない。だが、そうやって過去の作品から距離を作っておきながら、シリーズの締めくくりとなる長編劇場版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』(以下、『首都決戦』)で我々はシリーズを象徴する劇場作品『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(以下、『パト2』)の再来を見ることになる。

筧利夫演じる特車ニ課隊長・後藤田継次は、ここを繋ぐキーパーソンとなっている。今回の映画について、そして後藤田という人物について、筧にお話をうかがった。

○部隊の中の"非常勤講師"

――『TNG パトレイバー』は、シリーズ13本+長編劇場版という形で制作されました。撮影期間も長かったと思いますが。

特殊な作品でした。(撮影期間は)7カ月くらいですかね。長い間やるのは楽しかったです。

――以前、主演の真野恵里菜さんはニ課棟に毎日通って、本当に勤めてるようだと話していらっしゃいましたが、隊長の筧さんはいかがでしたか?

僕は撮影がそう毎日じゃなかったので、まあ非常勤講師のような感じだったかな。最初のうちは10日に1度、1シーン撮影するだけで、そのために他の9日間はずっとまんじりともせず過ごし、また1シーンやって……という感じだったので。その1カ月感は思い出深いかな。出勤日が多い月もありましたけど。

――そうした毎日の関係性の中でキャラクターがつくられていったことが、劇場版の"インフラ"になったと押井監督がおっしゃっていましたが、隊員たちの距離感はどんな感じでしたか?

やっぱり隊員と隊長ですからね。何考えているかわからない隊長ですし、歳も違いますし、距離感はありましたよ。近いようでいながら、最低机一台分くらいの距離感はありましたね。

――それは意識してそうしていらっしゃったのでしょうか。

そうですね……そうだと思います。もし本当に学校の先生みたいな感じなのであれば、もうちょっと一緒に居たと思いますね。

○後藤田は「言っていることと考えていることが違う人」

――撮影にあたって過去のパトレイバー作品はご覧になりましたか?

『パト2』はだいぶ前にビデオで見たことがあったのですが、当時は全然わからなかったですね。パトレイバーの世界も知らないまま見たので、何もわからずに終わってしまいました。まさかその実写版で自分が隊長の役をやることになるとは思いませんでしたけど。

撮影前には原作のコミックも読んだし、パトレイバーの1・2も含めて、押井監督の作品は軒並み見ました。(『パト2』は)改めて見返しても、やっぱり分からなかったかな(笑)。今回の実写版を自分で見て、やっと何かわかったような気がしています。

●これは決してロボット映画ではない――後藤田の先輩に当たる後藤隊長には、どんな印象をお持ちでしたか?

後藤先輩のことは、今でもちゃんとは理解できませんね。でも(後藤田が)同じ方向の役なので、後藤さんのことは押井監督の本を読んだりして研究したんですけど、押井監督が望むであろう上司像なのだなというのはわかりました。だから、(後藤が)押井さんだということですね。

――では、後藤田は?

そうなろうと思っても、なかなかなりきれない所があるんじゃないでしょうか。(後藤を)目指すというより、引きずられているというか。

――シリーズ編ではひょうひょうとした振る舞いが印象的でしたが、『首都決戦』では正に渦中に置かれシリアスなシーンが続きました。役作りで意識して変えた部分はあったのでしょうか?

長編から初めて見る方もいると思うので、少しわかりやすく演じたところはあるかもしれません。基本的にシリアスですが、全部シリアスという訳ではなくて、そうでない部分は少しコミカル目にやっていたのかなとは思うんですけど……やってないかもしれない(笑)。4Kで観るのと、2Kで観るのとでは、全然印象が違うんです。4Kのほうがより深いんですよ。表情とか、写りがぜんぜん違いますね。

――シリーズでは回を重ねるたびに後藤田の存在感が増して行った印象があります。ご自身でも演じるうちに変わっていった部分はありましたか?

長編では特に出番が多くて、ほとんどシリアスなのですが、そうなることはわかっていたので、シリーズの方ではありとあらゆる方向の後藤田を見せたいと思っていました。だから、演技はいろいろとその場その場で工夫してやっていましたね。

もちろん、これはずっとシリーズを見てきた方にしか通用しませんけど、その方々の頭の中にはありとあらゆるシーンの後藤田のイメージが入っていると思うので、逆に今回はあまり大きく動かずにシリアスな演技を続けても、いろいろ見えてくるのではないかと思います。どちらかというと、長編では抑え目ということですね。

――公安の高畑(高島礼子)が、シリーズ編に続き今回も重要な役割で出てきました。

高島さんとの共演は初めてではないですし、(二人のシーンは)何か違う作品を撮っているようで楽しかったですよ。僕は長編ではほとんど隊員たちとは会っていませんでしたし。フランス映画を撮っているような気分でした。映っているものとか、風景なども含めて。フランス映画には出たことはありませんけどね(笑)。

――シリーズ編では切れ者だけに危ないものはうまく避ける人物のように見えましたが、今回は使われているとわかっていながら使われる行動に出ていますね。

後藤田というのは言っていることと考えていることが違う人なので。いろいろ先読みしてやっている人なんです。結局、やらないわけにはいかないんですね、高畑さんからの命令は。やらないわけにはいかないんですけど、会話の中でどれだけ探れるか、という部分がある。だから、中身としては流れのことしかしゃべってないんですけど、実はあのシーンは公安とこちらの腹の探り合いをしているシーンなんですよね。

ただ、そうしながらも巻き込まれたくはないんですよ。要するに前と同じようなことが起きているので、巻き込まれれば(後藤と)同じ道を行ってしまうわけです。だからやりたくない。そのあたりの逡巡があるんですよ、前半は。先代は失踪していなくなってしまったし、同じ轍を踏まないつもりできているのに、またそういうことになっているというのが、隊長としては本当は嫌なんですよ。でも最終的には"守るため"にやる気になって……という流れですね。

○決して、ロボット映画ではない

――押井監督は筧さんから見てどんな方でしたか?

押井さんは"総監督"というのがふさわしい方、という印象です。周りの人が出してくる技術を総合的に見て、最終的にバランス良くまとめるというところなど。監督というのはもともとそういう職業なんですけど、押井監督は特にそういう感じがします。監督自身が作るというより、ある程度は自分でやるけれど大部分は周りにやらせて、出された素材や技術を組み合わせる。そういう印象でした。

今回の『首都決戦』について言えば、世間の人が好きな押井監督のアニメの感じがあるじゃないですか。完全に、その実写版になっています!

――最後に、公開を楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

普段、この社会で平和に生活している私たちですが、それが本当に当たり前ではないのだということが、最近徐々に分かり始めているわけです。そういった中で、少しザワついてきたみなさんの心に、この作品は深く刺さっていくのではないかと思います。これは決してロボット映画ではございませんので、心して劇場に足をお運びください。

筧が演じる後藤田隊長は、シリーズ編エピソード12になるまでストーリーの中心に描かれることはなかった。だが、それまでの段階で描かれすぎないことが、時間をかけて見えない部分の見えないがゆえの存在感を示唆する要因にもなっていた。筧が狙ったとおり、シリーズから追い続けたファンなら『首都決戦』に"いつもと違う"後藤田隊長の重みを感じることになるだろう。

劇場版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』は、2015年5月1日より新宿ピカデリーほか全国公開。

(C)2015 HEADGEAR/「THE NEXT GENERATION -PATLABOR-」製作委員会

(笠井美史乃)