アイスランドは、なぜ遺伝子研究先進国になれたのか

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遺伝子研究の先進国、アイスランド。この北欧の島国が遺伝子分野で多くの成果を出している秘密は、彼らがもつ遺伝子上の特徴にあった。

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北大西洋のど真ん中にある小さくて平らな岩の塊、アイスランドは、あらゆる点でユニークだ。活火山、おいしいとはいい難いクジラ料理、クールな観光宣伝キャンペーン。そのうえ、ここは世界の遺伝学研究の中心地でもある。

学術誌『Nature Genetics』で発表されたある4つの論文は、アイスランド人の遺伝子配列にもとづいている。研究テーマはアルツハイマーから全人類の共通祖先に関するものまでさまざまだが、これらはすべて、アイスランド人のゲノム収集・分析を18年間続けてきた企業「deCODE」によるものだ。

deCODEの遺伝学研究の歴史は長く、その発見は医学研究にも、人類進化の理解にも役立つだろう。しかし、研究成果そのものよりも重要なのは、その成果がどうやって生まれたのか、そして遺伝学研究の未来がどうなるかだ。

これらの最新研究のなかで、deCODEは2,636人のアイスランド人の全ゲノムシークエンシングを行い、10万人以上の遺伝子配列を特定した(これはアイスランド人口の1/3近くをカヴァーする数である)。

「アイスランドはこうした研究にうってつけなのです」と、国立ヒトゲノム研究所の遺伝的変異プログラム責任者、リサ・ブルックスは言う。ノース人とケルト人が9世紀に入植して以降、アイスランドは驚異的なまでに均一な集団を維持してきたので、彼らには遺伝的変異が少ない。つまり遺伝的変異を特定する際に、邪魔となるノイズが少ないのである。

またdeCODEは4つの論文のうちのひとつで、アイスランドの8,000人以上がノックアウト、すなわちある遺伝子を完全に無効化する特別な遺伝的変異をもつことを発見した。特定の遺伝子(あるいはその欠損)の機能を解明するため、遺伝学者はしばしばノックアウトマウスをつくり出す。人間のノックアウトをつくることができれば科学の進歩に大きく貢献するだろうが、倫理的にみて、生きた人間のゲノムを切り刻むのは問題だ。ところがノックアウト・アイスランド人はすでに存在しており、そこには遺伝学者にとってまったく新しい研究分野のチャンスが広がっている。

「まず遺伝的に“外れ値”の人を見つけます。それから彼らにどんな興味深い点、普通ではない点があるかを調べるのです」と言うのは、ブロード研究所のダニエル・マッカーサー研究員。病気や障害をもつ人のゲノムを調べるのではなく、遺伝子の手違いをもつ人に何が起きるのかを確かめるのである。実験室のマウスと同じように。

もちろんこの方法にも限界はある。アイスランドの均一集団のなかで外れ値をもつ人々を見つけるのは簡単だが、アイスランドの人口は32万5,000人。発見できる変異は、この小さな集団に存在するものだけである。もっと多様な集団で同様の方法を採るためには、遺伝学者は大量のサンプルを集めなくてはならない。

しかし遺伝子解析のコスト低下により、研究のスケールアップはすでに始まっている。大規模ゲノムシークエンスを行うプロジェクトはほかにもあり、例えば「1000 Genomesプロジェクト」では、その名前に反してすでに世界中の2,500のゲノム解析を完了しているのだ。

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