「家族狩り」ディレクターズカット完全版
昨夏、TBS系で放映されたドラマのDVD-BOX。劇中では山口紗弥加演じる女性教師が同僚の美術教師(伊藤淳史)に妊娠したと結婚を迫り、当エキレビの木俣冬さんによるレビューでは「わたし、生むから女」と命名された。この作品がそうであったように、山口も出演する今季ドラマ「ようこそ、わが家へ」もまた、不気味さを湛えながら家族の危機を描き出そうとしている。

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ここのところ、山口紗弥加がドラマで演じる役どころに注目させられることが多い。昨年放送の「家族狩り」(TBS系)では、伊藤淳史演じる高校教師に結婚を迫る同僚の教師役がじわじわと怖かったし、この4月に始まった「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」(TBS系、木曜21時〜)におけるヤクザの更生のため指の再生手術を請け負う医師役も印象深い。その山口は、今季はさらにもう一作、フジテレビ系の「ようこそ、わが家へ」(月曜21時〜)でも、バツイチのアラフォー契約社員という役どころで好演している。

「ようこそ、わが家へ」では、主人公の倉田健太(相葉雅紀)が駅で割り込み乗車をしようとした男に注意したときから、その自宅に何者かによる嫌がらせがあいつぐ。4月20日放送の第2話の冒頭では、倉田家の郵便受けに放り込まれていた傷だらけの猫を、健太の妹の七菜(有村架純)の提案で飼うことになり、一瞬家族の心をなごませるのだが、事件そのものが不気味であることに変わりはない。

ドラマではこの犯人探しを大きな軸に、健太の父・太一(寺尾聰)が銀行から出向して勤める「ナカノ電子部品」社内でのゴタゴタやら、七菜が元カレにつきまとわれていたり、健太の母・珪子(南果歩)が陶芸教室の講師・波戸(眞島秀和)に惹かれつつあったりと、家族がそれぞれに不安要素を抱える様子が描かれる。

このうち健太と太一を取り巻く人々はそれぞれ対になっているようなところがある。健太がひょんなことから知り合った雑誌記者の神取明日香(沢尻エリカ)と犯人探しを進めるのに対し、太一は職場の同僚の西沢摂子とともに、上司の不正を糺そうと動き始める。この摂子を演じるのが山口紗弥加だ。第2話では摂子が領収書から営業部長の真瀬(竹中直人)の横領を嗅ぎつけ、太一から「領収書デカ」の称号(?)を与えられる。

真瀬のアクの強いキャラは、健太が第2話で明日香から紹介される高円寺のタウン誌編集長・蟹江(佐藤二朗)と対になる。いかにもちゃらんぽらんな蟹江だが、デザイナーの健太が自作を見せたとき、その欠点をずばり指摘してみせた。明日香が劇中で言っていたとおり、蟹江のネタ筋を見極める目や雑誌づくりのセンスはたしからしい。ちなみに蟹江が経営し、健太も働き始めるその出版社の名前は「円タウン出版社」と、往年の岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」に登場する“円都(イェン・タウン)”を彷彿とさせるネーミングだ。

出版社勤務が決まったその日の晩、帰宅した健太は郵便受けに、珪子が波戸と二人きりで会っているところを撮った写真が投函されているのを発見する。犯人は健太ばかりかその家族をもターゲットにし始めたのか。謎はますます深っていく。一方、太一は摂子とともに真瀬の不正に加担していた社員・平井を追及し、その疑惑は持川社長(近藤芳正)にも報告されるのだが、かえって太一が社内で追い詰められる結果になってしまう。

第2話のラストでは、倉田家に防犯カメラが取りつけられた翌朝、クルマに傷がつけられるという新たな被害が発覚、健太は明日香とともにさっそく防犯カメラの映像を確認すると、何かに気づく。さらに太一が出勤すると、会社のFAXに彼と摂子が焼肉屋にいるところを隠し撮りした写真が二人は不倫関係にあるとの一文を添えて送りつけられ、社内は大騒ぎとなっていた。どうやらあちこちから監視されているらしい倉田家の人々の行方はいかに――?

第2話では、西沢摂子が蟹江のお気に入りのキャバクラ嬢「シルビアちゃん」というもう一つの顔を持つこともあきらかにされた。ひょっとすると、太一と健太の周辺が摂子を介してつながっていくのだろうか。今後の展開の鍵を握るのは彼女ではないかと予感させる回であった。続く第3話は、きょう21時から放送される。
(近藤正高)