「アイデアがセックスするとき  」科学ジャーナリストが語る、個人の能力を超える瞬間

写真拡大

サイエンス・ライターであるマット・リドリー氏がTED Globalで行った「When ideas have sex(アイデアがセックスするとき)」というスピーチをご紹介しましょう。

アイデアがセックス!?と聞くと少々驚きますが、彼はアイデア同士を出逢い交わらせてきたことで、人類はここまで繁栄してきたのだと解説します。

人々が協力し「集団脳」をつくり出すことで、革新はより早いスピードになるのだそう。彼のスピーチを簡単にまとめると、

1.技術の進歩は、交易が生んだ複数の物質や技術を使って生み出されたモノが存在するのは、モノ同士を交換する「交易」という人間固有の習慣があったから。2.交易が専門性を高め、人類を繁栄させたアイデアを交換し、役割を分担をすることで、それぞれが専門性を高めてきた。その結果、効率も上がり技術も進歩した。3.集団脳が、能力を超えた成果を生む人間は、アイデアを伝達し合い「集団脳」を作ることで、個々の能力を超えたことを成し遂げられる。

(実際のスピーチ映像は最下部にあります。)

技術の進歩は
“交易”によって生まれた

私たち人類は、どのようにして繁栄してきたのでしょう。それに答えるには、人類の歴史を通してアイデアをどのように出逢わせ交わらせてきたか。言い換えれば、アイデアがいかにセックスしあったかを理解する必要があるのです。

50万年前の原人によって作られた手斧とコンピュータのマウスの画像を見比べてみてください。二つの大きさと形は非常によく似ています。共に人間の手になじむように作られているからです。

しかし大きな相違があります。石斧の形は100万年ほどの間変化しないで、道具としての進歩はありませんでした。ところがマウスは、5年もすれば廃れて新しいモデルが登場します。

th_スクリーンショット 2015-04-27 9.56.16

Reference : Startup Stock Photos via Startup Stock Photos

他にも違いはあります。石斧はひとつの物質からできていますが、マウスはシリコン、金属、プラスチックなどさまざまな物質の集合体です。さらに、プラスチック、レーザー、半導体という技術の集合体なのです。

こういった集合体が生まれる背景には、ありとあらゆるものを別のものと交換する「交易」という習慣があります。

交易が専門性を高め
人類を繁栄させた

ではなぜ、アイデアの交換が生活水準を引き上げるのでしょうか?

デイビッド・リカードの国家間の交易についての論文を、石器時代に当てはめてご説明しましょう。

アダムは槍を作るのに4時間、斧を作るのに3時間かかります。一方で、オズは槍を作るのに1時間、斧を作るのに2時間かかります。

槍と斧作りが上手なオズはアダムを必要としません。でもよく考えると、オズが槍を2本作り、アダムが斧を2丁作ってそれを交換すれば、双方ともに1時間節約できるのです。

これを行えば行うほど節約できる時間が増え、互いに専門とする方の道具作りが上手くなります。交換は、時間を生み出すだけではなく、専門性を高めるのです。

石斧とマウスの話に戻ります。石斧は自給自足の時代に自分のために作られました。一方マウスは、大勢の人が関わり、私やみなさんのために作られました。一人で材料から作り出すのには膨大な時間が必要です。実際には、石油採掘場で働く人、採掘した原油からプラスチックを作る人、それを加工する人など多くの人が関わっています。

このように専門性との交換によって、社会は機能し、人類は繁栄してきたのです。

集団脳が
能力を超えた成果を生む

では、石斧とマウスは誰が作り方を知っているのでしょう。

石斧の場合には、作った人が作り方を知っています。しかしマウスの作り方は、実際誰も知りません。マウス製造会社の社長は経営法しか知りませんし、組み立てラインの工員も石油を取り出す方法やプラスチックを作り出す方法は知りません。

私たちは皆、断片は知っていますが、全体は把握していないのです。

DisruptionReference : Tsahi Levent-Levi

なぜなら私たちは、アイデアを伝達しあい、上手に協力し「集団脳」を創り出しているからです。そうすることで、個々の能力を超えた成果が生み出せるようになりました。

今は、インターネットやクラウドソーシングを通じて、エリートだけでなく誰もがアイデアを持ち、アイデアを出逢わせ交流させられる世界です。私は、革新のスピードが一段と速まるだろうと信じています。

ありがとうございました。

Top photo by Ian Smith / Reference:TED Talks