NHK連続テレビ小説「まれ」は、石川県能登地方が舞台だ。
主人公の津村希(つむらまれ)は、高校卒業後、家族のため公務員となる。しかし幼い頃からの夢だったパティシエを目指すこととなり、横浜で修業に励む。やがて故郷で小さな店を開く――。

さて、その「公務員編」の舞台となっているのが、2002年4月の輪島市だ。
晴れて市役所職員となった希が配属先されたのは、産業振興課の移住定住班。
過疎化と高齢化という2つの問題を抱えている地域だが、能登空港開港を翌年に控えていて、観光だけでなく移住者を呼びこむチャンスと捉えている。彼女の仕事は移住者のサポートをすること。

希の着任早々、先輩職員は「こんな田舎に引っ越したいけ? 空港できて便利になったら、みんな東京に行ってしもうだけでわ。無駄無駄」と愚痴をこぼす。それでも前向きに取り組もうとする希だったが、移住者に振り回された挙句、上司に目を付けられる羽目になる。

輪島朝市。写真はイメージです(Kentaro Ohnoさん撮影、Flickrより)

視聴者「こんな移住者いる〜」

視聴者の関心は今のところ、ドラマで描かれている「都会人の地方移住問題」に集中している。
我が身に染みる視聴者もいるのだろう。同感の声が相次いで投稿されている。

移住者でシタール演奏家の京極ミズハは、近所の住民が自宅前に置いていったおすそわけの野菜を「黙っておいていくなんて非常識でしょ」「ゴミ」と言いのける。しかも自分では片づけず、希に処理させようとする。
「人口が減って困っているんでしょ? わざわざ来てあげたのよ」というお客様気分、というか強烈な上から目線だ。
希の献身ぶりに「ありがと」と耳打ちする場面もあり、変化の兆しも見られるが......。

故郷の能登でカフェを開こうと考えるUターン希望者も登場する(実は希一家の居候先、桶作夫婦の息子・哲也)。彼はカフェを開きたくて産業振興課を尋ねる。しかし奨励金の額を聞いて「たった10万じゃ何もできないよ。これでどうやって定住しろっていうの」と不満を漏らす。
哲也の事業計画の詰めの甘さに視聴者もツイートせずにいられない。

そもそも、津村一家も1994年に東京からやってきた移住者だった。縁者がいたわけではなく、希の母・藍子が投げたダーツが命中した能登を選んだ。

希と藍子、弟の一徹は能登になじんでいくが、田舎生活に慣れない父・徹はすぐに行方をくらましてしまう。結局6年ぶりに能登に戻ってきた徹は市役所の清掃員になる。

ドラマで描かれているのは、「都会ではうまく行かなかったけど、田舎ならやっていけるはず」という都会人の勘違いだ。そんな人ばかりではないだろうが......。

希一家がいつまで経っても新参者扱いされるところに、地方のリアルを感じる視聴者もいる。

一方、「都会人はわがままで、田舎の人は純粋」という番組のレッテル貼りに疑問を呈する人もいる。

希の上司は公務員のステレオタイプか!?

希の上司・紺谷博之を演じているのは板尾創路さん。仕事ができて将来の市長候補という声もある。
相談者のプライベートに口出しする彼女に対し「(公務員は)公私混同するなと言ったはずだな」「この仕事には向いていない」と叱るが、いろいろ面倒見るのが移住担当者の仕事じゃないの?というツッコミも見受けられる。

ドラマが始まってまだ1カ月足らず。移住者は能登に溶け込んでいけるのか、産業振興・移住定住とパティシエがどう結びつくのか。今後の展開から目が離せない。