大腸に棲む腸内細菌の働きは免疫機能と密接に関係している shutterstock.com

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 腸内細菌がクローズアップされて久しい。スパーやドラッグストアを覗けば、ビフィズス菌が入った健康飲料や乳酸菌のサプリメントなどが商品棚を賑わせている。腸の健康が体調管理には不可欠であるということが、もはや現代人の常識になりつつある。

 最近の臨床研究から、特に大腸に棲む腸内細菌の働きは、体の免疫機能と密接に関係していることが分かってきた。大腸がんをはじめ、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、肥満症、糖尿病、自閉症、パーキンソン病などの発症と深く関わっている。腸内細菌は、あらゆる病気の原因を解明する重要なカギになっているのだ。

 腸は、食道、胃に続く消化器で、小腸(十二指腸、空腸、回腸)と大腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸)に分けられる。人間の腸の全長は約7〜9m。その3分の2は小腸、大腸は約1.5m。「神経の網タイツ」といわれる腸壁には、数億個もの腸管神経細胞が張り巡らされ、その数は中枢神経系を形成する脳の脊髄に匹敵するほど多い。腸は24時間休みなく働き、外部から侵入した細菌やウイルスなどの異物を撃退する。こうした優れた免疫機能から、腸は「第2の脳」ともいわれる。

若い世代の腸年齢が老化している

 近年、大腸がんが急激している。厚生労働省の人口動態統計によれば、女性は死因の第1位、男性は肺がん、胃がんに次ぐ第3位。近い将来、男女とも死因ワースト1になるという。

 なぜ大腸がんが急激しているのか? 第1の理由は、食の欧米化が進み、野菜類などよりも高脂肪、高タンパク、高カロリーの肉類、チーズ、バターなどの乳製品に加え、ファストフードやスナック菓子など摂取量が増えたからだ。競争社会のしがらみや複雑な人間関係による精神的なストレス、運動不足も追い打ちをかけている。米国がん研究財団の報告では、食物繊維の少ない肉食中心の食生活や運動不足は、大腸がんの発症リスクを飛躍的に高めると警告している。

 腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌などの体によい働きをする善玉菌、悪い働きをする悪玉菌、よい働きも悪い働きもする日和見(ひよりみ)菌があるのは、よく知られている。健康な人なら、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%の割合だ。善玉菌が多く悪玉菌が少なければ病気に罹りにくい。善玉菌が減り悪玉菌が増えれば、病気に罹りやすくなる。

 また、年をとれば老眼になったり耳が遠くなるように、腸もほかの臓器と同じように加齢に伴って老化する。腸にも腸年齢があるのだ。腸の老化は、加齢とともに腸粘膜の細胞の働きが低下して起きる。腸が胃下垂のように垂れると腸の機能が落ち、腸内細菌のバランスが崩れる。

 善玉菌が減り、悪玉菌が増えるのも加齢現象だ。悪玉菌が増えれば、腸に有害な腐敗物質が腸管から吸収され、腸の働きが悪化する。腸内環境が悪化すると、腸内細菌のバランスがさらに大きく変わる。

 腸内環境は個人差があるので、実年齢に比べて腸年齢が若い人もいれば、老化した人もいる。今の若い世代の腸年齢が、実年齢以上に老化していることが何よりも問題だ。

 今回は、腸内細菌と病気の関わりについて話した。次回は、腸の老化と腸年齢について詳しく話そう。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。