ダウン症の障害への特効薬となるか:「一般的な利尿剤」に注目

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一般に知られている「利尿剤」が、ダウン症による認知障害と戦う助けとなるかもしれない。イタリアでの研究は次のステージへと進み、人間に対する最初の臨床研究が始まるだろう。

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イタリアの研究が、21番染色体を3本もつ(「21トリソミー」)人々、つまりダウン症の人々の生活の質を改善する努力の第一線にいることが示された。

『Nature Medicine』で発表されたジェノヴァのイタリア・テクノロジー研究所(IIT)の研究が、利尿薬として一般的に使われている薬「ブメタニド」が、この遺伝子変異による認知障害を大きく改善するかもしれないことを明らかにしている。いまのところ、動物モデルにおいて得られた結果にすぎないが、ダウン症患者での試験が、早ければ今後数カ月で始まるだろう。[訳註:『Science』では2014年、フランスの研究者らが自閉症に対するブメタニドの効果について報告している。]

21番染色体トリソミーの人々の脳は、ニューラル・ネットワークがシナプスレヴェルでコミュニケーションに欠陥を示すのが特徴だ。

IITの研究者たちは、ダウン症患者の認知問題を生じさせる原因となるこの異常が、神経伝達物質GABA(Gamma-AminoButyric Acid:γ-アミノ酪酸)の機能変異に起因することを発見した。GABAは、通常は、ニューロン間で交換される情報の流れを抑制する分子だが、21番染色体トリソミーが存在すると、反対に機能して、シナプスのレヴェルで過剰な情報の交換を引き起こす。

「わたしたちの脳のさまざまなニューロン間の適正な情報交換は、興奮性と抑制性の2つの神経伝達物質が作用して完璧なバランスをとることで実現します」と、研究のまとめ役となったIITの研究者の1人、アンドレア・コンテスタービレは説明する。

「しかし、ダウン症においては、GABAのもつ抑制作用が興奮作用に変わり、ニューロン間の情報の流れが過剰で無秩序になります。こうしたGABAの作用の逆転は、塩化物イオンという電解質の不均衡に起因しています」

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GABAの機能の変異と戦うには、脳の通常の機能を回復させなければならない。しかし、この種の治療薬は、患者が一生服用しなければならない類のものだ。そして、いままでに知られている神経伝達物質の作用を調整できる薬は、長期間利用するには、どう考えてもあまりに重い副作用をもっていたのだ。

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IITの研究者たちは、GABAの通常の機能を回復すると同時に、人体に十分許容される薬を探した。そして彼らが注目したのが、ブメタニドだった。

一般的な利尿剤であるブメタニドは、脳細胞の中に存在する塩化物イオンの濃度を減少させる特性をもつ。この薬は、人間の染色体トリソミーのものと似たメカニズムによって引き起こされる学習と記憶の欠陥を引き起こす遺伝的欠陥をもったマウスで、テストされた。

「この薬学的治療は、成体の動物における、シナプスのコミュニケーションや学習・記憶のプロセスに、完全な回復を引き起こしました」と、IIT神経科学部門のグループ・リーダー、ラウラ・カンチェッダは語る。「この結果は、臨床的観点で大きな重要性をもちます。ブメタニドはよく知られている薬で、副作用は少ないか、ほとんどありません。したがって、これまでに提案されていたものよりもずっと安全な薬なのです」

発見の重要性を考え、ダウン症患者のグループに対するこの薬の試験が、すでに計画されている。バンビーノ・ジェズ小児科病院の児童精神医学オペレーション・ユニットの協力で行われることになるはずだ。

このローマの小児科病院からは、ダウン症に関するもう1つの重要な発見が届いている。「European Journal of Immunology」で発表された研究によって、21番染色体トリソミーと関係するいくつかの免疫細胞の特定の変異を突き止められたのだ。この研究により、なぜワクチンがダウン症の子どもたちにとって効果的でないように思われるか、解明できることになった。これは、この小さな患者たち専用のワクチンプログラムを設定する必要性を示唆している。

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