アップルが企業を買収したとき、あなたの身近で起きること

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仕事で使っていたソフトウェアの提供元が買収され、突然使えなくなる。企業が次々とつくられては買われるこの時代、決して珍しくはない話だ。AppleのFoundationDB買収を例に、大企業によるスタートアップ企業買収の弊害を考える。

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トラヴィス・ジェフリーはソフトウェア開発者で、自身のスタートアップのプロジェクト向けに「FoundationDB」と呼ばれるデータベースシステムを使用してきた。

ある日、彼はそのFoundationDBのソフトウェアが、ウェブ上から削除されていることに気付いた。ほどなくジェフリーは当の彼らから、無愛想なEメールを受け取った。

「わたしたちは企業使命を進化させる決定を下しました」と、そこには書かれていた。「そして、本日をもってダウンロードの提供は終了いたします」

FoundationDBがアップルに買収されたことを『TechCrunch』が報じたのは、それから数時間後のことだ。われわれの事実確認に対して、両社からの返答はないが、いまのところFoundationDBのTwitterアカウントは更新されていない。この企業の変化を伝える公的な証拠は、サポートサイトに掲載されたメッセージ(ジェフリーがEメールで受け取ったのと同じ文面のもの)だけだ。

FoundationDBのこの“見かけ上の操業停止”が、ジェフリーや彼の会社を破産に至らせるわけではない。しかし、このサポートが本当に終了するなら、その他FoundationDBユーザーは運が悪い。確かに、彼らはこれからも、インストール済みのFoundationDBを使うことができる。しかし、サポートを提供したり、新しいオペレーティングシステムと連携するようデータベースをアップデートしたり、セキュリティパッチを配布する企業は、もういない。

このような話は目新しいものではない。実績のない企業を信頼しすぎることの、訓話のひとつだといえよう。とかくこうした著作権をもつソフトウェアはいつでも消える可能性があるが、とりわけアップルのような巨大企業がさっと舞い降り、企業を買収した場合、消えてしまう。

Design of new department office photo from Shutterstock

このような買収によって巨大企業が、才能ある人材を新しく雇ったり、スタートアップの技術を新しい(あるいは既存の)製品に統合させたりすることは、よくある。しかし、FoundationDBの場合、アップルが、企業向けデーターベース・ソフトウェアの販売事業に参入したいと考えている可能性は低い。このソフトウェアに依存していた企業は不運だ。──スタートアップが打撃を受けるとき、イノヴェイションも打撃を受ける。

理由は明らかでない

なぜアップルがこの企業を買収しようとしたのかは明らかではないが、可能性はいくつか考えらえる。アップルはFoundationDBの技術を用い、iCloudからAppStore、モバイル広告サービスにおよぶ、自身のウェブ基盤を強化したいと考えているのかもしれない。あるいはただ、アップルが自社内で使用する新しいインフラ構築の人員確保のために、この企業を買収するのかもしれない(あるいはその両方かもしれない)。

FoundationDBがアップルの開発者用ツール提供の一部となる、もしくは後日、オープンソース化する可能性はある。しかし、十中八九、このプロジェクトは終わるだろう。

オープンソースの唯一の取り柄

似たような状況はほかにもある。例えば、Couchioという企業 (後にCouchOneという名になった) は、オープンソース・データベース、Apache CouchDB向けのサポートを提供するために、2009年に創業した。この企業は2011年に、別のオープンソース・データベース企業、Membaseと合併した。新しい企業はCouchbaseと名乗り、両方のプロジェクトの要素を組み合わせた、新しいデータベースを生み出す仕事にとりかかった。数カ月後、CouchbaseはもともとのCouchDBプロジェクトへの貢献を完全に終了すると発表した。

CouchDBが著作権をもつ製品だったなら、それで終わりだっただろう。自分たちのソフトウェアを強化するために、CouchDBを使用していた開発者や企業には、サポートを受けられないソフトウェアを使用するか、新しいCouchbaseのデータベースに移行するかの選択肢しかなかっただろう。しかし、CouchDBはオープンソースだったため、他の開発者たちは、引き続きこのソフトウェアを発展させることができた。

FoundationDBがかつて、こうしたことが起こるようなレヴェルのコミュニティ参加を行っていたという保証はない。しかし、製品を主としてクローズドソースで開発すると、それを持続させる外部の開発者コミュニティを築くチャンスがまったくない。

とにかくアップルとFoundationDBは、もっと優雅に買収を処理することもできた。たとえジェフリーの会社がFoundationDBを何か重大なことのために使っていたわけではなくとも、システムを交換しなければならないのは、やはり痛手である。

「ぼくらは、彼らのことで興奮しているのです。アップル製品のユーザーとして、アップルがどのようにFoundationDBの技術と才能ある人々を活用するのか、目にするのを楽しみにしています」とジェフリーは語る。「それでも、もう少し予告があれば、ありがたかったのですが」

ジェフリーは腹を立てているわけではないだろうが、FoundationDBにもっと力や時間を注いできたユーザーたちは、いまごろ、たぶんそれほど寛大にはなれないと思っていることだろう。

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