ファッションライターの川口ゆかりさん。『LEE』4月号での私服公開カット

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 今モデルでもタレントでもない一般人が“ファッションモデル化”している。ファッション誌で昔からある街角ファッションスナップとは違い、おしゃれな一般の人たちにスポットを当てて特集ページを作るなど、ファッションで普通の人たちが脚光を浴びている。インスタグラムでも、おしゃれ上手な人、それも子持ちの主婦だったりするのだが、ファッション業と関係ない普通の人達に5万、10万単位でフォロワーがついているのだ。

 女性ファッション誌『CLASSY.』は、インスタグラムで人気のおしゃれ一般人の私服やスニーカーを紹介する企画で2度にわたり特集している。ヘアアレンジがとにかくかわいいと話題になっている福岡の美容師・Rumiさんも『mina』でヘアアレンジ特集が組まれたりムックが発売されるなど、SNSをきっかけに注目されている。
 
 なぜ近ごろ一般人がモデル化しているのか。「リアリティを求める時代になってきたから」と語るのは、『LEE』や『MORE』を中心に活躍するファッションライターの川口ゆかりさん。川口さん自身も『LEE』で私服を着て見せる2Pの企画が読者の反響を受け、増ページの6Pで誌面に再登場している。

「私服を着て見せることのほかにも、子供がいる自宅で撮ったりするリアリティのある感じが好評だったと聞きました。今はモデルさんで素敵に作ったページよりも、子供がいるとか、自分とリンクして身近に感じられる普通の人が買った物のほうが見たいという声が多いようです」(川口さん、以下「」内同)

 インスタグラムで投稿された洋服コーディネート写真が「おしゃれ」「素敵」と何万ものフォロワー、ファンが付き“タレント化”している一般人は多数。その大半は子持ちの主婦で、ユニクロやGU、GAPといった身近で“プチプラ”な洋服を上手におしゃれに着こなしている。そんな彼女たちが人気を集めているわけは、「リアル」で「身近」であること。

「完璧じゃないところがいいんだと思います。ただキレイなだけでは受けないんですよ。スタイルも顔立ちも全部完璧なモデルと比べても、自分とは違うしと思いますよね。だけど自分と同じように、身長が低いけどかわいく着ているとか、30代で子供がふたりもいても、こんなにおしゃれに着こなせているなら私もなれるんじゃないか、という身近な憧れが受けているのかなと思います」

 全身ブランド品を着ているようなモデルやタレントの真似はできないが、都心部に出ないと買えないブランドではなく、ユニクロやGUなら、買い物に不便な地域に住んでいても身近に買えて、真似できる。そんな「地方にも広がる」感じも人気のようだ。

「背伸びせず無理しない感じが受けるように思います。その人がおしゃれであれば着られるというか。例えば今、女性がユニクロのメンズを着るのがファッションで流行です。シャツもメンズのSなら身幅があるので今年っぽく着られるとか、腰巻きするシャツは旦那さんのものを拝借するとか、ブレスやリュックなど小物をシェアしたり。そういう流行も、有名人や雑誌の編集部発信ではなく、普通の人からの流行だと思います。地方に住んでいて、一般の主婦だけれどおしゃれでフォロワーが多い。そういう人たちが考えてやったところから、すごく流行っている感じがしています」

 そもそも一般人に人気が出たきっかけは、読者がファッションや美容、子育てなどを画像で投稿できる、雑誌『VERY』のソーシャルメディア『tagVERY』ではないかと川口さんは指摘する。プチプラブランド『nostalgia』で一般人モデルのようになっている岡山県の主婦・斎藤寛子さんも、ここへの投稿がきっかけで人気の人となった。

「斎藤さんは、先日は靴の新作発表イベントに芸能人と一緒にゲストで呼ばれたりするほど。『nostalgia』は、外国のモデルを使ってかっこよく撮っていた時にはそこまで認知度はなかったそうですが、モデルを普通の主婦にしたら即完売みたいになって、そこから一気に人気が出た気がします」

 こうした素人のタレント化の流れを作ったのは、『VERY』の大人気モデル・滝沢眞規子さんからだという。主婦でもある滝沢さんは、読者モデルから人気に火がつき、専属モデルへと華麗なる転身を遂げている。彼女の例に憧れる一般女性も多いのではと川口さんはいう。

 これまでのファッション誌を手本に読者がおしゃれしていた構図はいまや逆転。インスタグラムが広がった1、2年前から、ファッション編集部側もリアルが受ける時代の流れを汲み、一般の人からリアルな声を吸い上げようとSNSをチェックし、おしゃれな人を発掘している。

「みなさん、自分が良く見える撮り方もポーズも取れてすごいんですよね。しかも、写真ではそう見えませんが、実際には背が低い人ばかりなんです。160cm以下であることが、すごく受けていると思います。岡山の斎藤さんは、158cmで中肉中背とご自身で言っていますし。これで168cmと言ったらそこまで人気は出なかったのではないかと思います」

 ライターが上手く書いた洋服の説明より、いいことを言わなきゃいけない立場ではない普通の人による本当の感想の方が響いており、信憑性もあることも理由のようだ。

 SNS上でユニクロを着ている女性を「ユニ女」、ZARAを着ている女性を「ザラ女」と呼ぶが、企業側も彼女たちのコーディネート画像をうまく使ってPRしている。例えばインスタグラムのユニクロ銀座店のアカウントは、“素敵なコーデの人を見つけました”と画像をピックアップして紹介している。

「以前、やはり人気の一般の方がインスタでZARAを着てアップしたらすごい反響で、○○さんのこれが欲しいという人がお店に押しかけて、全店舗で完売になってしまったんです。その人が着ると売れるとわかると、企業も芸能人ではなく一般の人に紹介してもらう傾向になっていますよ」

 忙しい芸能人と違い、一般の人なら時間もあるからきれいに見えるようにこだわって撮ることも、たくさん投稿することもできる。一般の人が買った商品からのほうが受けると知り、タレントよりも一般人発のPRにシフトしているようだ。川口さんはこんな言い方をした。

「昔はおしゃれを真似したい有名人がいたけれど、今の時代はなくなってしまったのかもという悲しい気持ちもあります。前に梨花さんが紹介したリュックがばか売れして買えなくなってしまう現象もあったほど。でも今は、20、30代でみんなが口を揃えて“素敵”“真似したい”というファッションアイコンが前ほどいないですよね。だから身近で素敵に見える人を見つけて参考にしているのかな。それが一般人に降りてきた背景という気がします」