頭痛の原因のほとんどがストレスshutterstock.com

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 毎日の生活でよく、「会社で頭が痛いことがあるんだよ」などというフレーズを、無意識に使われる人も多いと思います。この「頭が痛い」という言葉の意味する所は、本当に頭が痛いわけではないですよね。辞書で調べると「心配ごとや悩みごとで苦しむこと」「解決できないことや心配事があり、深く悩んでいること」などとあります。

 しかし、この「心配ごとや悩みごとで苦しむこと」も、度を超して強いストレスや心配ことになってくると、実際に頭痛が誘発されることがわかっています。特に、身体的ストレス(食事や睡眠が取れないといったこと)、社会的、精神的ストレス(人間関係、社会関係にまつわること)が、頭痛を引き起こすといった報告があります。慢性頭痛ガイドライン2013でも、おおよそ次のような項目を頭痛誘発因子として挙げています。

\鎖静因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠(過不足)
内因性因子:肥満、月経周期
4超因子:天候変化、温度差、におい(香水、タバコ)、眩しい光(太陽光)、人ゴミ、飛行機内
た事性因子:空腹、アルコール、コーヒー、化学調味料、個々による食物

 ここで誘発因子の中で真っ先に上がっている精神的因子についてお話します。これは、ドイツの2010年の報告(1)で、629人の片頭痛患者で実際に頭痛を引き起こした原因のあった278人について4つの因子分野、17項目について詳細な調査をおこないました。

すると、上位5位までの何と4項目が精神的因子であったという報告があります。頭痛誘発因子の個数も1人あたり、3個から6個ぐらい持っている人が多く、10個以上の誘発因子を持っている人も278人中の1割程度いたと報告しています。このように、「病は気から」といいますが、頭痛も気から起こるのかもしれません。

<上位5位の頭痛誘発因子>
1急性ストレス後(PTSDに類似した状態)
2まぶしい光(太陽光)、
3精神的緊張(激しい情動の状態)
4悩み事、身体的疲れ 
5睡眠状態(寝不足、過眠など)
大幅な体重減少でも頭痛が改善

 次に、食事性因子の中で肥満との関係について話します。アメリからの報告(2)ですが、極度の肥満患者さんにおいて、減量手術(食べられる食事の量を減らす手術)が行われています。これにより食べ物の摂取制限し減量しようとする手術です。この手術を受けた患者702人中、片頭痛を持っていた102人について、追跡調査のできた81人中、90%が女性でした。肥満になってから片頭痛を来したグループ51人は手術後に48人が改善しました(41人で頭痛がなくなり、7人も部分的に改善)。
 
 一方、肥満症になる前から片頭痛を来たしていた24人は18人が改善しました(11人で頭痛発作がなくなり、7人が部分的に改善)。このように、どちらのグループも減量手術により、大幅な体重減少を来すことによって、頭痛も改善する報告です。ただし、その効果は、肥満になった後から頭痛持ちの体質になった人の方が、ダイエットによる頭痛発作の改善効果が大きいと考えられると報告しています。食事性因子も強迫観念的な食欲からのストレスと考えることもできるかもしれません。

 では、実際の対策はどのようにすればいいのでしょう。まず自分の頭痛の誘発因子を知ることが重要です。その方法は、第2回でお話した、頭痛ダイアリーつけることでした。

そこから、自分の誘発因子を知れば、その誘発因子を避ける工夫が重要です。たとえば、眩しい光や太陽の光で頭痛を誘発する人は、外出時は、サングラスをかける事で、ある程度予防することが可能と考えられます。また食事内容や、アルコールなどが誘発因子となる人は、自分でその適量、あるいは、摂取の中止を検討してみてください。さらに天候(特に雨の日や低気圧など)で起こす方もいますが、このような方は、雨の日の外出を控えたり、予め予防薬的な内服薬を検討することも重要です。そして何よりストレスフルな生活環境を見直してみてください。

 このように、頭痛持ち方でも、自分の生活習慣を見直すことで、頭痛の回数を抑制できる可能性があります。これは、頭痛だけでなく心身ともに健康に生きる基盤となるもので日常生活の基本となる食事・睡眠・排泄・清潔・衣服の着脱の5つの生活習慣を一度、振り返ってみてください。この中に頭痛の予防のヒントがあるように思います。

1. Hauge AW, et al.  Cephalalgia 30(3) : 346-353. 2010
2. Gunay Y, et al. Surg Obes Relat Dis. 9(1): 55-62. 2013


西郷 和真(さいごうかずまさ)
1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。
東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。
日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。