「イヤァオ!」の中毒性を解き明かす/中邑真輔インタビューVol.1【プロレス女子の手記6】
 プロレスの面白さの一つは、選手を長く見ていると試合ごとの戦い方だけでなく、生き様が見えてくること。今のプロレス界を牽引するレスラーの中で、おそらく最もそういった“溜め”があるのが新日本プロレスの中邑真輔選手だ。『中邑真輔自伝 KING OF STRONG STYLE』(上下巻/イースト・プレス)を読むと、長い苦悩の時期を経て弾けた中邑選手の変遷が見て取れる。

 京都府出身。プロレスファンだった幼少期、学生時代を経て、2002年に日本武道館でスーパールーキーとしてデビュー。アメリカで武者修行の後、2003年にIWGPヘビー級最年少王者となる。アントニオ猪木最後の弟子として、デビュー当時から「選ばれし神の子」と呼ばれた。

 現在の中邑選手と言えば、スタイリッシュなコスチュームに、“クネクネ”と形容されるしなやかでセクシーな動き、そして「イヤァオ!」という中毒性のある言葉。「イヤァオ!」の動画をリピート再生したり声に出したりすると、不思議とカタルシスを感じる。まるで呪文のようだ。

「イヤァオ!」の中毒性を解析する上で、一つの鍵となるかもしれないのがその“音”。音声学の観点で、「イヤァオ!」は優れた音である。響きに開放感があり、詰まった音から伸びやかな音に繋がる曲線は、ドラマチックであり、発声もしやすい。中邑選手ご本人にぶつけてみた。「もしかして、音の構成を計算して作った言葉なのですか?」

中邑真輔(以下、中邑):バレたか。……ハッハッハ(笑)! いや、何も考えないで言葉にならない言葉を吐き出したら、そうなったという。それが意図的なのか、そうじゃないのか。結果としてこうなった、ということですね。

――何度も声に出したくなる言葉だなと思うんです。

中邑:そういうのは意識していますね。プロレスにおいて言葉というのは、卓越した感覚が必要とされます。印象に残すということでは、プロレスに限らずあらゆる表現活動において重要だと思うんですけど。言いたくなるというところは、普段から意識していますね。

――「イヤァオ!」以外の言葉も、でしょうか?

中邑:朝青龍の本名とか、言いたくなりますよ。だってドルゴルスレン・ダグワドルジですよ (笑)。そのお兄ちゃんが、ドルゴルスレン・セルジブデ、ドルゴルスレン・ スミヤバザル。言いたくなるでしょ? あとはセンテンスでも、短くてインパクトのあるものがいいですね。滑舌が悪くて、「何を言ってるのか分からない」とよく言われていたので。(滑舌の悪い)長州さんを参考にした部分もあります。

――長州さんはどういった言葉を使っていたのでしょうか?

中邑:もの凄くアクの強いインパクトのある言葉ですね。だって、「てめーの墓に糞ぶっかけてやる」ですよ。スッゲェ……と思いました(笑)。そんなことを言われた日には、どうなってしまうんだろう自分、という。キーワードが「墓」と「糞」ですよ? ビジュアルにいきなり入ってくるくらい容易に想像できる。

あとは有名な“噛ませ犬”発言ですね。「俺はお前の噛ませ犬じゃない」。観ている側には、「噛ませ犬ってなんだろう?」と疑問が残る。フックになる、ということですね。噛ませ犬は英語で’underdog’。ボクシングのチャンピオンシップ前に、慣らし相手として充てられる選手のことです。要は“格下”。そういう意味だと分かると、長州力はそうじゃないぞ、という反骨心が見えるじゃないですか。段階を踏んで自分のキャラクターというか、自分の主張を伝えるっていうのはお洒落な感じがします。

⇒【後編】に続く http://joshi-spa.jp/248796

<取材・文/尾崎ムギ子 撮影/タカハシアキラ>