なぜドローンはホイホイ落ちるのか!? その欠点と充実する保険制度

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最近ドローン(クワッドコプター)が悪い意味で話題だ。首相官邸で見つかったドローンは放射能物質を搭載していたことが分かり、テロとして日本を震撼させている。ただ、いつ誰が飛ばしたのか、なぜ首相官邸に墜落させたのか、犯行声明も特にはなく分かっていない。今回はドローンがなぜ落ちるのか、そしてどう防ぐのかについて考察してみたい。

墜落したのか墜落させたのか分からない首相官邸のドローン

首相官邸で見つかったというドローンは4つのローターを持つマルチコプター、小型カメラと筒のような容器が搭載されており、そのうち直径3センチ高さ10センチの容器に放射能マークが記載、実際に1マイクロシーベルト毎時を観測。放射性セシウム134、137が含まれていたと報道された。

写真を見る限りドローンは裏を向いており、操縦者の意図でハードランディングさせてひっくり返ったか、機体の不良により墜落したかである。

ドローンは墜落しやすい

もちろん機体を黒く塗り、放射性物質を搭載し首相官邸上空で飛行させているのだから、元々テロ目的なのが明らかであるが、なんらかの理由でノーコントロール状態となり墜落してしまったことも考えられる。

安定した飛行をすると世間で思われているマルチコプター。実は4つのローターをもつクワッドコプターをプロは空撮業務に使わない。理由は簡単だ、それは何か機体不良があった場合には即墜落するからだ。

クワッドコプターが墜落する原因は複数ある。下記の4つは主な例だ。

(1)モータートラブル

(2)アンプトラブル

(3)バッテリー不良(バッテリー切れ)

(4)電波障害

現在一般的に使われているブラシレスモーターは、品質にバラつきがあり突然停止することがある。4つのローターしか持たないクワッドコプターで1つのローターが停止した場合、浮力を1/4失うだけではなく安定させることができなくなり即墜落につながる。これは構造上の問題でどんなに熟練したパイロットであっても避けようがない。

同じくモーターに大電流を供給するアンプ『ESC(Electric Speed Controller)』も耐久問題がある。そもそも使われているものは模型用のため耐久時間は50時間程度で、なんの前触れもなく焼き切れるという。

また、油断大敵なのはバッテリーである。飛行すればするほどバッテリーは劣化する。満充電で前回10分とべたから今回も、と思っても10分飛べるとは限らないのだ。温度が低ければパワーがでないし、風が強いときは普段よりもバッテリー消耗が激しくなる。

最後に機体に不具合がないにもかかわらず、墜落するケースがある。それが電波障害である。昔のラジコンでいえば、混信によるノーコントロール状態だ。

現在クワッドコプターを利用している電波は昔のような40MHz,、72MHzといったラジコン専用の電波帯ではなく、主に2.4GHz帯を利用している。これはご存じのように、WiFiにも使われている電波帯である。

ほとんどのスマホはWiFiをサポートしており、多くのユーザーは利便性の高いWiFiをわざわざオフにすることはない。つまり人口が密集する場所では多くの2.4GHzの電波が飛んでおり、これがクワッドコプターの操縦に影響を与える。

クワッドコプター製品のうたい文句では、コントローラの電波が届かなくなった場合 にGO HOME機能で飛ばした元の場所に自動復帰するというが、実はこの人口密集地でこの機能は働かない。そのため花火大会やマラソン大会など人混みに近い場所を飛ぼうとするとノーコントロール状態で、墜落というケースがあるのだ。大都会は常に人口密集地であるため、いつ墜落してもおかしくはない。

プロは6ローター以上を使う

では空撮のプロ、業務仕様の場合はどうか。プロは絶対に6ローター以上、8ローター、10ローターを使う。ひとつの理由として重量級の機材を搭載するためペイロード(搭載重量)を増やすためでもあるが、経験上1ローターが動作停止することを知っており、6ローター以上であれば墜落は免れられるからである。

バッテリーについても2系統搭載し、1つのバッテリーが急激に出力ダウンしても残りのバッテリーがバックアップする。また混雑する2.4GHz帯は使わず、ラジコン専用の72MHz帯を利用することで、混信の不安をなくしている。

墜落を想定して保険を

そうはいってもプロでもクワッドコプターを利用するケースがある。クワッドコプターは軽量コンパクトなため、人里離れた場所で人力で登山して撮影する時や、狭い場所を飛ばしたいといった要求があった場合に便利だからだ。

一般ユーザーが趣味として空撮を楽しむ場合は、どうしてもクワッドコプターになるであろう。というのも現在手頃な価格のホビー用マルチコプターはすべてクワッドコプターだからだ。ただどんなにうたい文句が素晴らしかろうと、必ず墜落することを想定しなければならない。

そういった背景を受けて、最近は保険に注目が集まっている。

日本ラジコン電波安全協会ではラジコン操縦士登録とセットでラジコン保険を行っている。補償は1事故につき1億円が限度で、個人利用時に限られる。

先日発表されたDJIの最新機種『 Phantom3』では三井住友海上と協力し、賠償責任保障制度をつけた。最大補償金額は対人で1億円、対物で5,000万円で業務利用において適用されるという。

東京海上日動火災保険でも『産業用無人ヘリコプター総合保険』の販売を7月から開始、墜落だけではなく盗難やフライアウェイ(行方不明、機体ロスト)も補償の対象という。

墜落の原因のひとつ、パイロットの操作ミスを防ぐ取り組みもある。『3DR Solo』というドローンでは自動操縦機能が充実、ユーザーはカメラマンに専念することができる。

趣味かテロリストか

たとえ一般ユーザーが趣味で飛ばしていたとして、墜落した場合はその責任を問われることとなる。特にこのような事件があった後はテロリスト扱いをされる可能性も高いため、飛ばす場所の選択、安全策、そして万が一の場合の保険と念には念を入れたほうがいい。法規制の動きも加速する中、熱くなったドローン市場に水をさすような事件、事故には注意をしてドローンを楽しみたいものだ。

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【参考・画像】

※ 官邸屋上にドローン 放射性セシウム確認 NHKニュース

※ RCK(財)日本ラジコン電波安全協会 

※ 日本初の「ドローン保険」、東京海上が7月発売 産業利用が加速 (withnews) - Yahoo!ニュース