『金融立国試論』

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よく、日本の金融は弱いと言われることがある。しかし、日本は「オーバーバンキング=預金過剰」が発生するほどに潤沢な金融資産を保有している。一方、アメリカは海外から借金をしている。そんな日本が金融でアメリカに負けるなんてあり得ない! これが著者が本書を書いたそもそもの理由のようだ。

「あり得ない」はずのそんなことがおきているのは、日本の金融が「あり得ない」仕組みで動いているからに他ならない、と著者は考える。そして、「オーバーバンキング」「不良債権問題」「デフレ」「ペイオフ」「郵貯民営化」といった金融の主要トピックを題材にして、日本の金融システムの問題点を切れ味鋭く暴き出している。

「破綻しそうになったメガバンクに対して政府が厳しい姿勢で臨むとなると、破綻した銀行から大量の国債が売却され、国債価格は暴落する」などといわれると、読者としては大いに気になってしまう。また、「国債発行は、将来の国民への税金を意味するので、現在の貸し出しリスクを将来世代に負担させていることになる」ときけば、若者は将来に不安を持つだろうと心配になる。

「預金者が預金保護で手厚く保護されている国の方が、実は銀行危機が頻発している」「われわれ日本人は元本保証ボケである」「だめな銀行は思い切って破綻させた方がよい」「デフレで損をするのか得をするのかは一概には言えない」などなど、「えっ」と思うようなことが、経済学者ならではの理詰めで展開されている。

とかく経済や金融の本は、「わかりやすい」と銘打ってあっても、難解な語を並べ立ててあって、読者はなんとなく煙に巻かれてしまうようなことがよくある。「金融立国試論」という書名はとっつきにくいが、内容は平易に展開されていて、金融をかじりたいと思っている初心者にも、金融を鋭く掘り下げたいと思っている専門家にもお薦めの1冊である。(光文社新書、735円)