アベノミクスの影響で、為替市場では円安が進み、一時1ドル=120円台に突入。株式市場でも、日経平均株価は2万円に到達した。一方で、政府・日銀は物価目標を設定し、インフレ路線に舵を切っている。物価が上がることで現金の価値が相対的に目減りするため、「貯蓄から投資へ」の流れがますます加速しようとしている。これまで、資産運用について真剣に考えてこなかった人の中でも、「投資をしたほうがよいのではないか」と思い始めている人も多いだろう。

 実際、証券会社や銀行の店頭では、投資経験のない人の相談が増えており、その影響もあってか、「ラップ口座」と呼ばれるサービスが人気となっているのだという。ラップ口座は、証券会社や信託銀行が個人と契約して、資金の運用・管理から投資に関するアドバイスまで、資産運用を丸ごと面倒見てくれるというもの。投資ビギナーでも株式や債券、投資信託などで、本格的な資産運用ができる点が好評で、大和証券および野村證券では、それぞれ1社で口座残高は1兆円を突破。業界全体では3兆円に達するのも時間の問題とみられている。

 このように現在の金融業界は、コンサルティングやサポートを充実させて個人投資家の拡大を目指しているのだが、その傾向はFX(外国為替証拠金取引)業界でも強まっているという。ラップ口座のサービス同様、自身で取引するよりも“任せる”ことで、FXで収益拡大を目指す方法があるのだ。それは「システムトレード」(以下、シストレ)という手法。

 シストレは「自動売買」とも言われ、売買プログラムに取引を任せるというもの。今は業界各社シストレに力を入れており、熟練の為替投資家に作成させた売買プログラムを世界各国から取り揃え、顧客はそれを選ぶことで運用が始められるようにしている会社もある。

 FXと聞くとハイリスクという印象を持つ方も多いかもしれない。しかし、FX会社の中には投資信託の運用利率とも似たような年率約5%程度の利益を目指す長期の堅実的な売買プログラムを提供しているところもある。初心者がわけもわからず自分で取引し、すぐに資金を失くす、などということがないよう努めているのだ。

 すぐに市場から退場する顧客がいないほうがFX会社としてもありがたいのは間違いない。実際、金融先物取引業協会によると今年の1月に店頭FXの月間取引高は過去最高の660兆円を超えたが、それはハイリスクの取引を嗜好するFXユーザーによるものだけではないだろう。

 とはいえ、シストレなら誰でもFXで利益が出せる、といった単純なものではない。ファイナンシャルプランナーの松岡賢治氏が語る。

「シストレで成功するポイントは、投資信託などと同様に取引を任せる“相手”が重要。その相手となる売買プログラム選びのサポートを一部のシストレ提供会社が、競うように行っている」

 現在、「売買プログラムを選ぶだけで始められるシストレ」を提供しているFX会社は、合計13社ある。定番的なサポートは、売買プログラムを取引手法のタイプ別に分けて検索ができるようにするサービスや成績順のランキングを提供するというものだ。中には、インヴァスト証券の『ユニット』やFXプライム by GMOの『ストラテジーパック』のように、投資戦略ごとに数種類のストラテジー(売買プログラムの別称)をセットにしたものを用意しているところがある。

 さらに“一歩踏み込んだ”サポートを始めているFX会社も登場している。シストレ最大手のインヴァスト証券では、スタッフがおススメのストラテジーを毎週10本公表し、その中からストラテジーを選択した上で実際社内にて運用し、その成績を常に公開している。

「もし、推奨ストラテジーの運用成績が悪かったら、サービスの信頼性も揺らぐことになる。簡単に言えば、会社の看板にキズがつくことになってしまうのです。その点で、非常に大胆なサポートと言えるのではないでしょうか。」(前出・松岡氏)

 ネットでの取引およびコミュニケーションが基本となるFXでも、こうしたコンサルティングに近いサポートが登場していることは興味深い。もともと対面販売を得意としてきた証券会社や銀行、不動産会社も、今後、資産運用サービスにおいていちだんと具体的かつ踏み込んだアドバイスやサポートを強化していくことだろう。金融機関の真の実力が問われる時代となりそうだ。