東宝を辞め、作家に専念か?(新潮社公式サイト『何者』直木賞受賞記念特別インタビュー動画より)

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 「朝井、会社やめるってよ」
 最近、こんな情報が本サイトに舞い込んできた。なんでも、作家の朝井リョウが、二足のわらじで勤務していた映画会社・東宝を辞めたというのだ。

 朝井リョウといえば、こじらせ男子たちの、嫉妬と羨望の眼差しを一身に集めている作家。早稲田大学在学中の20歳のときに『桐島、部活やめるってよ』(集英社)で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。映画化された『桐島〜』はヒットし、アカデミー賞も受賞。そして、日本でいちばん有名な文学賞である直木賞を23歳の若さで受賞。平成生まれとしては初、男性としては史上最年少と大きな話題になった。それも、伊坂幸太郎、万城目学など何度も落選している先輩作家を尻目に、ノミネート2回目でサクッと。......この順調すぎる作家人生だけでも、嫉妬と羨望を集めるには十分だ。

 が、朝井の場合は、くわえて、テレビ番組で趣味のダンスを披露したり、俳優の佐藤健を「健くん」呼びしてゆる〜い恋愛談義を交わしたり、セカオワハウスの誕生パーティに出かけたり......とあふれ出る"リア充"感。大のジブリファンで自作の装丁をジブリに描いてもらう、アイドルファンで乃木坂46と対談し、24日に発売となるアイドル小説『武道館』(文藝春秋)では、つんく♂に帯を書いてもらい、小説のプロモーション動画ではでんぱ組.incの夢眠ねむに自作を朗読してもらう......という"なんかいろいろ夢かなってる"感。でも、どこからも悪評がきこえてこないどころか、みんな(とくに鈴木敏夫などの大物)からかわいがられていそうな"世渡り上手"感。このあたりが、「リア充、爆発しろ」ならぬ「朝井リョウ、爆発しろ!」と言いたくなる所以だろう。

 そして、なかでもこじらせ男子たちをイラッとさせていたのが、朝井が作家として十分すぎるほど成功していながら、大手映画会社・東宝に就職したことだろう。朝井リョウの就職先が東宝であることは本サイトの須田林が以前スクープしたものだが、やはりネット上では嫉妬と羨望の嵐が巻き起こった。

 あの爆笑問題の太田光も、ラジオ番組で嫉妬を露わにしたほどだ。2013年5月の『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で、朝井についてこんなふうに熱く語っている。

「あの人ね、東宝に入ったんですよ。朝井リョウくんっていうのは」
「東宝ですよ? もう、いいじゃん! 東宝に入んなくてって思うわけですよ」
「『桐島』で、さんざん話題になってるんですよ。だけど、就職活動して東宝に入るんですよ。ね? その理由が、『サラリーマンもやってみたかった』って」
「映画は当てる。直木賞は獲る。それでなんだ? 就職っていうのは」
「俺が何十年かかってできないこと、必死こいてギャーギャー言いながら、みんなに顰蹙買いながら、それでもできないことを、なに涼しげにやってんだバカヤローって」
「(東宝の人が)『いや、そいつが良い奴なんでね...』なんて言うから『良い奴だろうがなんだろうが、俺は絶対にコテンパンにしてやる、この場で』ってことで、もうギャーギャー言って(笑)」
「それでふざけんな、みたいなことで大騒ぎしてる俺っていうのは、よくよく考えてみたら、まさに『桐島、部活やめるってよ』の主人公たちなんですよ」
「っていう話なんですよ。桐島っていうものすごいスターがいて、(ストーリーには)出てこないんですよ。」
「だけど、『部活、やめるってよ』ってことで、大騒ぎするって話なんですよ。まさに、おまえが桐島かって(笑)」
「俺の気持ち、わかんのか、おまえに?って」

 俺が何十年かかってできないこと、必死こいてギャーギャー言いながら、みんなに顰蹙買いながら、それでもできないことを、なに涼しげにやってんだバカヤロー――。
 
 まさに世のこじらせ男子たちの声を代弁するかのような、太田光の言葉。芸人として成功し、エッセイや小説の筆力だってそれなりに評価されている太田をしてこれだけ嫉妬させてしまうのだから、一般こじらせ男子の心情たるや......。

 しかし、その朝井が東宝を辞めた、というのだ。関係者に取材してみると、
「朝井さんが会社を辞めたという話は聞きました。まだ有休消化中かもしれませんが、4月に入ってからはすでに会社に行っていないようです」(文芸編集者)。

 金銭的なことでいえばもともと作家だけでも稼ぎは十分だったはずだから、これは何かトラブルでもあったのか。朝井リョウでもうまくいかないことがあるなんて、メシウマメシウマとさらに取材を進めると......

「朝井は映画館相手に営業する部署に配属されていたのですが、仕事はかなりきちんとしていて、性格もいいですから、社内での評判はすごくよかった。営業ですから現場レベルでは営業ネタとして"朝井リョウ"の名前を使わせようということになってもおかしくないところですが、逆に会社の上層部の方針は「朝井を、もっと大切にしろ」と」(映画関係者)

 なんか、会社でも愛されてる感じではないか。辞める必要などなさそうにも思える。

「就職した時点ですでに売れっこ作家だった朝井に対して、有名人に来てもらっているという意識が東宝側にはあって、かなり気を遣っていったようです。ただ、気を遣われすぎることが、逆に朝井にとっては居心地が悪かったという面はあるかもしれません」(前出・映画関係者)

「朝井さんも、作家の仕事で会社の業務に支障をきたすことがないように、きっちり区別していて、執筆は必ず東宝の仕事が終わったあとの夜や出勤前の早朝。対談やインタビューも仕事終わりにスタートで、夜遅く終わって帰宅し、仮眠して起きて小説を書く、そして出勤。そんな生活ですから、いずれにしても二足のわらじは物理的にも続けるのは厳しかったと思いますよ」(前出・文芸編集者)

 ところで、東宝社員で作家といえば、『電車男』『モテキ』『悪人』などの敏腕プロデューサーとして知られる川村元気。東宝では朝井の先輩にあたるのだが、その川村も3年ほど前から小説を書いている。デビュー作の『世界から猫が消えたなら』(小学館)は20万部を超えるヒットで本屋大賞にもノミネートされたのに続き、2作目の『億男』(マガジンハウス)も本屋大賞にノミネート、と作家としてもヒットを飛ばしている。が、川村が東宝を辞めるような話はまったくきこえてこない。それどころか「出世して、部下もたくさんいます」(前出・映画関係者)という。

 すでに作家として成功したあとで就職した朝井と、ヒット映画をいくつも企画するなど社内で実績をあげたあとに小説を書いた川村。経緯のちがいはあるものの、やはり会社員と売れっこ小説家を両立しようと思えば、ある種の鈍感力が必要なのだろう。そう、たとえば川村のように、映画の仕事で知り合った有名人に片っ端から自作の小説に推薦コメントをもらったり、自作の映画化で人気の俳優をキャスティングしたりするような"図々しさ"が。

 川村元気に比べれば、朝井リョウも意外と繊細だったということか。まあ、単純に「営業の仕事、つまんない」とぼやいていたという話もあるのだが......。
(本田コッペ)