4月からの改変で、朝の情報番組も新番組がスタートしたり、新たなメンバーが加入したりと新体制になりました。各番組の出演者は、いわば同じ部署で仕事を任された同僚のようでもあります。新番組をそんな会社の人事として見ると、好感度の理由もおのずと見えてくるのでは……。朝8〜9時台の番組を中心に見ていきたいと思います。

有働部長に部下イノッチ、柳澤さんは嘱託社員

まず、視聴率も10%台で常に安定している「あさイチ」は、有働由美子さん、井ノ原快彦さん、そして解説委員の柳澤秀夫さんという3人がメインです。この番組を部署の人事に置き換えて見ると、40代の有働さんが部長に抜擢され、その直属の部下がイノッチ、そしてベテランでさまざまな経験もある柳澤さんが、定年後に嘱託でこの部署をサポートしにきている、みたいな感じでしょうか(実際の柳澤さんの立場については調べられませんでしたが、柳澤さんは現在61歳です)。安倍政権は、女性の管理職を2020年までに30%以上にするという数値目標を掲げていますが、朝の番組の中では、唯一、女性管理職をトップで使っている(図式の)番組だと言っていいでしょう。

小倉部長を、エリート美人部下がサポートする「とくダネ!」

それに対して、「情報プレゼンター とくダネ!」は、小倉智昭さんが15年という長きに渡って部長(=メインMC)を務めていますが、部長をサポートする役割が、2012年からは局アナから菊川怜さんへと変わりました。小倉さんがそうだというわけではありませんが、会社の上司というのは、何かわかりやすい結果を残した女性には一目おいたりするものです。菊川さんも東大卒で、オスカーに所属する女優でもあるので、番組の関係性や空気を変えたということは多いにあるのかもしれません。

2014年頃からは、低迷していた視聴率も回復に向かい、ときには視聴率10%を超える結果を出しています。これは、長年やってきた部長が、外部からきた優秀なスタッフたちに刺激を受けて、チームワークをより重視した結果にもみえます。実際、番組では高視聴率のお祝いで温泉旅行にいったとの報道もあります。

加藤浩次と上重アナの体育会系上下関係

さて、今期の人事異動で意外と大変そうなのは、「スッキリ‼」ではないでしょうか。司会者は加藤浩次さんが続投で変わらないものの、長老的な役割であったテリー伊藤氏が降板、その上、コメンテーターの入れ替えもあったことを考えれば、加藤部長の心労は想像がつきます。お互いにまだ新たな空気を掴みきっていない新しいコメンテーターたちとのやり取りにも心理的コストを割いているのではないでしょうか。

ところが、実はいろいろと報道のあった上重聡アナの扱いには(ここではそのことには触れませんが)、加藤部長はあまり困っていないようにも見えます。なぜなら、上重アナは自分でも「いじられキャラ」であることを熟知しているし、甲子園球児出身のバリバリの体育会系でもあり、先輩と後輩の関係性構築はお手の物。加藤さんも、上下関係の厳しい吉本に所属しているため、いじられ役、後輩役を自ら買って出てくれる上重アナとのやり取りはむしろ楽なのではないかとも思うのです。「上重君も、ちゃんと電車で帰ろうね」「必死な時期だもんな」などという言葉は、字面で見るとキツい気がしてしまいますが、実際に番組を見ていると、いじってさげることで、世間の目線を和らげているようにも見えます。

国分太一と真矢ミキの微妙な力関係

今期、唯一の新番組は国分太一さんが総合司会の新感覚ワイドショー「白熱ライブビビット」です。51歳の真矢ミキさんと40歳の国分太一さんの組み合わせは、一見すると「あさイチ」と似ていると思う人もいるかもしれません。ところが、大きく違うのは、有働さんはイノッチの上司ですが、真矢さんは国分さんの上司ではないということです。

国分さんは総合司会ということで、各出演者に話を振る役割もあるし、番組の中では年上の同僚とも言える真矢さんのことも立てないといけません。しかも、真矢さんは外部から引き抜かれてやってきた風の役割なので、有働さんとイノッチのように軽口を叩きあう関係性になるには時間がかかるでしょう。

ただ、この番組で救いなのは、日替わりで登場するコメンテーターが、各分野の識者ではなく、芸人さんやタレントさんが多い点です。芸人が仕切り、くだけた空気になるコーナーでは、新番組の固い空気から柔らかくで砕けた空気になることが多く、良いチームワークが生まれそうな予感も感じさせます。

風通しのいい部署は毒がない「モーニングバード」

最後にテレビ朝日の「モーニングバード」を取り上げますが、実はほかの局の番組は、MCが、すべて局アナもしくはアナウンサー出身者と芸能人の組み合わせになっているのに、この番組だけは元アナウンサー同士の組み合わせとなっています。そのため、感じのいい先輩が部長で、しっかりものの後輩とでやっている部署という印象に落ち着いてしまうのは否めません。

また、この番組にはコメンテーターに芸能人はいても芸人はいません(2015年3月まではロザンの宇治原史規さんがいましたが、4月からは出演していません)。そんな番組の空気からか、同曲の番組審議委員会でも「落ち着いているが毒がない」という意見も出たこともあるそうです。個人的には、羽鳥さんも赤江さんも、ほかの番組を見ていても、アクの強い芸人さんたちとの絡みもいい感じの人ではあると思うのですが……。

こうして番組を会社の部署だったらと見立てて見てきましたが、やはり一視聴者としては、威圧的な関係性が見えたり、単にギスギスしているメンツでやっている番組を見るのはつらいもの。企画や個人の人気というのも、視聴率と深い関係がありますが、出演者の人間関係も、意外と視聴率にも影響しているのかもしれないとも思うのです。

(西森路代)