日曜朝の人気番組「サンデーモーニング」で、Jリーグ最年長ゴールを決めた三浦カズに「もうお辞めなさい」と引退を促した張本さん。傍らに座る山田久志さんも「チームスポーツだから」と、年長者に半分、気を遣いながらもそれを肯定した。プロ野球界のご意見番は、2人揃って現役を続ける三浦カズに否定的な態度をとった。
「キングカズに失礼だ」と、ネットは大炎上したそうだが、この一件は、2人がスポーツ選手の引退を画一的な視点で捉えていることに、そもそもの問題がある。

 プロ野球とサッカー。それぞれの引退には、微妙な違いがある。

 まずそれぞれ組織が違う。プロ野球が12球団なのに対し、サッカーはJ1だけでも18チームある。J2も加えれば40チーム。J3も含めれば52チームに達する。

 Jリーグには選手が出場機会を求めてプレイする場所が、プロ野球の4倍以上もある。全52段の階段は、昇る時だけ利用するわけではない。下る時にも利用する。J1がダメならJ2。J2がダメならJ3がある。無給を覚悟すれば、下る階段はさらに伸びている。「身体が動く限りはやりたい。引退は考えていない」と、カズは言うが、これは、ベテランが数字を残せなくなった瞬間、引退を意識せざるを得なくなるプロ野球にはない考え方だ。サッカーの本質に迫る考え方と言ってもいい。

 Jリーグの各クラブは、全てがJ1優勝を目標に掲げているわけではない。全球団が、日本一を目指しているプロ野球とは違う。存在理由は様々なのだ。実はJ2のままでもいいと考えているクラブもある。予算規模が10億円程度しかない地方クラブが、J1優勝を狙うことは現実問題として難しい。地域密着や健全経営を、まず第一に掲げるクラブがあっていいのがサッカーだ。

 カズが所属する横浜FCがどうなのか定かではないが、カズを雇っている理由は、彼が存在するメリットとデメリットを天秤に掛けた末の判断であるはずなのだ。問題ありというのなら、矛先を向けるべきはクラブになる。だが、ファンがそれを認めているなら、その批判さえ無意味になる。

 プロ野球はサッカーとは違う。他のスポーツとも異なる。引退ひとつとっても競技ごとで事情が違う。これまでにも述べてきたとおり、一番分かりやすい例は「守備」と「攻撃」になるが、それぞれの違いにどこまで気を配れるか。スポーツを語ろうとする場合に、拘らなければならない点だ。スポーツの多様性を認め、違いを尊重する姿勢が求められている。

 スポーツはまさにワールドワイドだ。地球の津々浦々で行われている。競技数も多い。そして、それぞれの競技には、それぞれの流儀がある。独得の匂い、空気がある。さらに国ごとで独自の広がりを見せている。それについて、くまなく把握することはまず不可能。政治や経済よりはるかに難題なテーマだと言いたくなる。
 
 しかしながら、その多様性やスケール感を想像することはできる。その中にあっては、野球とサッカーの違いは、想像しやすい方だが、それはともかく、そこにスポーツの面白さ、魅力を見いだすことができる。異なる競技が同じタイミングで一斉に行われるオリンピックの魅力も、そこにあると僕は思っている。だが、日本のテレビは、そのあたりの追求がとても弱い。張本さんがご意見番役を務める「サンデーモーニング」しかり。
 
「お辞めなさい」発言から一週間後の放送では、一転、張本さんはカズに「あっぱれ!」を出した。「お辞めなさい」を激励と受け止めたカズを誉めあげた。しかし、辞めた方がいいという思いに変わりはない様子だった。選手としての晩年を迎えていた長嶋茂雄さんに「見ていられないので辞めて欲しい」と直に伝えたエピソードを披露し、長島さんの姿がカズと重なるのだと言った。そしてこう要望した。