遥かなるツール・ド・フランス 〜片山右京とTeamUKYOの挑戦〜

【連載・第53回】

 TeamUKYOが目標とする「2017年のツール・ド・フランス参戦」を実現するには、どのような道筋を辿っていかなければならないのか――。チームを率いる片山右京に、その実現性について聞いてみた。すると、実業家としての確固たるビジョンの輪郭が見えてきた。

 TeamUKYOが活動を開始した2012年、片山右京は、「5年後の2017年にツール・ド・フランスへ参戦したい」と宣言した。

 2017年のグランツール参戦を実現するためには、2016年にはプロコンチネンタルチームとしての活動ができていなければならないだろう。プロコンチネンタルチームは、グランツールをはじめとするワールドツアーレースに無条件で参戦できるわけではなく、主催者推薦などを通じて、レースごとに限られたワイルドカードの出場枠を獲得しなければならないからだ(用語説明ページ「チームカテゴリーによる参加資格」参照)。

 つまり、プロコンチネンタルチームは2016年に十分な活動実績を挙げて、各レース主催者が納得するような存在感と戦力を示しておかない限り、2017年のワールドツアーレースの出場枠獲得は見込めない、ということだ。

 そして、2016年にプロコンチネンタルチームとして活動を開始するためには、その前年(2015年)に国際自転車競技連合(UCI)に申請書類を提出し、承認されていなければならない。これはすなわち、来年からプロコンチネンタルチームとして活動するための骨格を、今年のうちに作ってしまわなければならない、ということでもある。

 このスケジュールが与件のものであるとすれば、期限は刻々と迫りつつある。かなり厳しい、と言ってもいいだろう。それならば、仮に来年のプロコンチネンタル化が不可能であったとしても、実現に向けて着実に前進していることを示すことができていれば、ひとまずはそれでも良いのではないか――と、片山に問いかけてみた。

 すると、片山は躊躇(ちゅうちょ)せずに即答した。

「たとえば、『2020年の東京オリンピックに間に合えばいいんだよ』と、一度期限を先延ばしにしてしまうと、いつまでもずるずると延ばし続けて実現できなくなってしまうかもしれない。だから、最初に立てた目標はたとえ厳しくても、あえて変えないでおきたいんです。ひょっとしたら、結果的には1年や2年、遅れてしまうことがあるかもしれない。でも、それはあくまで結果だから、僕たちは当初に立てた目標に向かって進んでいきます。

 それができないのなら、最初からプロチームを運営する資格なんかない。自分でそうきっぱりと決意して動いていると、不思議なものでパズルのピースは少しずつ揃いつつあるんですよ。たとえば、これがまったく前例のない事業で、『ゼロから全部立ち上げます』というのならともかく、すでにヨーロッパでは100年の歴史があって、ビジネスモデルも確立しているものをどうやって日本バージョンに移植するかという、要するにそういうことなんだから」

 そのために必要なのは、サイクルロードレースチームの運営やスポンサー行為はNPO団体やボランティア活動と違い、きちんとした利潤を生み出すことのできるビジネスである――というスキームを作りあげることだ、と片山は考えている。今年2月の新体制発表会の際に、「大きな山」と片山が表現していたのは、まさにこのことだ。

「ときには嵐の日もあるだろうし、数日間キャンプ地でじっとしてなきゃいけないこともある。だけど、山登りがそうであるのと同じように、問題点や課題をひとつひとつクリアしながら着実に一歩ずつ進むことでしか、目標には到達できない。

 たとえば、富士山のヒルクライムで40分を切って登れる選手は世の中に何人いるんだろう、その選手と交渉できる人はいったいどこにいるんだろう、じゃあその交渉のための費用はいくらくらいかかるんだろう、その費用を稼ぐためには僕がどれくらいテレビや講演の仕事をしなければいけないんだろう(笑)......という、要するにそういうことの積み重ねですよ」

 さらに、この活動の延長線上として、今後はトレイルランやウルトラマラソンの支援もしていきたい、と片山は語る。白山ジオトレイル(※)にはすでに協賛をしており、今後は他のレースや世界で好成績を収めながらもスポンサーの獲得に苦労をしている選手を応援したい、とも話す。

※白山ジオトレイル=石川県白山市にある白山麓の登山道や林道をコースとし、7日間で250キロを走破するレース。

「今はまだメジャーな競技じゃないかもしれないし、スポンサーの獲得にも苦労しているかもしれないけど、そういうときこそ、『TeamUKYOは自腹を切ってでも応援しなきゃ』と思うんですよ。それは巡り巡って、僕たちが自転車でやろうとしていることにいずれ必ず返ってくるだろうし、そのときにはスポンサー行為以上のものをきっともらえるはずだから。

 だって、苦しいときに手を差し延べてくれた人のことって、絶対に忘れないでしょ? 僕だって、夢と野心だけはあったけれども、お金がなくて辛かったときにご飯を食べさせてくれた人のことは決して忘れないからね。だから、それだけは信じているし、それでまたお金がいるとか言い出すとキリがないけど、果敢にチャレンジする人を応援することについて、TeamUKYOに"No"はないから」

(次回に続く)

西村章●構成・文 text by Nishimura Akira