70〜80年代にかけて、ブルース・リーからジャッキー・チェンに移り変わる前後のカンフー(功夫)映画界。伝統的な時代劇型から現代劇型への緩やかな移行が始まり、新しいスタイルが求められていた時期とされます。
 そんな時期、やりつくされた感のある時代劇カンフー映画における「獣拳」モノの亜種として、ムカデ、ヘビ、サソリ、ヤモリ、ガマ(カエル)を目玉にした怪作『五毒拳』(1978)が誕生。『キル・ビル』の暗殺団や戦隊特撮モノでオマージュされるなど、カルト界隈でもファンの多い作品です。

 「ムカデ」は手数の多い高速拳、「ヘビ」は軟体ボディで首折り攻撃の美男子、「サソリ」は手裏剣も使う万能型、「ヤモリ」は謎パワーで壁に張り付く異能者、「ガマ」は全ての攻撃を跳ね返す無敵の気功ボディ、という色分け。
 しかも同じキワモノ怪作でも出演者ほぼ全員が超ポンコツだった『片腕ドラゴン』とは違い、本格カンフー・アクションが繰り広げられるので何だかお得な気分。肝心のネタ(ギミック)技はコメントに困るけども!

 これだけ聞くと、正統派の元WWEスターに加えて、テクノ・デストラクト(メタルバンドGWARのマスコット)など変態ギミックレスラーを集めたゴチャマゼ興行を行っている「Freakshow Wrestling」的なキワモノ感が先行しますが、実は本作の面白さはストーリーにあるのです。

 悪行の限りを尽くし、人民から金品を強奪していた五毒門(五毒拳使いの通称)。責任を感じた彼らのお師匠は、5人の弟子たちを倒すため6番弟子を育てるも、道半ばで不死の病で時間切れに。「もう教えられんから、善き心を持つ兄弟子のひとりと組め。あと、ワシの同期が管理しとる盗品の財宝を兄弟子どもが狙っとるハズ。先に見つけてどっかに寄付しとけや!」という遺言を受けた6番弟子ヤン・ドー(主人公)は、五毒門粛清の任に就くが......

 冒頭回想シーンでは五毒門全員が仮面を着けており、今となっては別名で身分も不明。さらに修行時期が重なるムカデとヘビ、ヤモリとガマがコンビを組み、サソリだけが一匹狼で、お互い素性を知らない設定。
 劇中では(警官になっていた)ヤモリ&ガマがややベビーフェイス寄りの立ち位置で、ヒールコンビのムカデ&ヘビに対し、正体不明のサソリが手を貸して......といった形で主導権争いに発展します。

 五毒全てを習いながらも未熟だった主人公は、仲間となる某兄弟子との特訓で開眼。ついでに某兄弟子の元同僚も加わり、「2(ヒール側)対2(主人公側) with セコンド」という何ともプロレス的なカードで最終決戦へ!(そして意外なあの人が!)

 序盤のお互いに正体を知らないサスペンス感や、背後から事件を操るサソリの正体のミスリード演出はなかなかのモノ。ストーリー的に添え物状態だった主人公が、開眼後もタッグチームにおける繋ぎ(ヤラレ・サポート)役で終わるというのも面白いところです(主人公は五毒門の5人という説もあり)。

 最終決戦で(ヤモリ技がシュール過ぎる等)若干ズッコケますが、ハードな拷問シーンに、ベタなコメディも押さえた良質な娯楽作であり、キワモノ作品として観ると謎の満足感を得られる不思議な作品となっております。

(文/シングウヤスアキ)