「安倍首相はバカ」発言していたのに……楽しげに写真に写る太田光(YouTube「FNNnewsCH」より)

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 なんだよ、それ? 18日、新宿御苑で開催された安倍晋三首相主催の「桜を見る会」の模様を知って、こうつぶやいたのは筆者だけではないだろう。

 この会には、毎年、政財界人にまじって多くのタレント、文化人、スポーツ選手らが招待され、彼らが時の権力者に尻尾をふる気色の悪い様子が大々的に報道される。ただ、それも毎年のことだし、芸能人も身すぎ世すぎというものがあるのだろうと、気にとめないようにしていた。しかし、今年はそうはいかなかった。その中にあの爆笑問題・太田光がいたからだ。

 周知のように太田はほんの1ヵ月ほど前、ラジオで安倍首相を「バカ」と罵倒して炎上したばかりだ。

 3月29日放送のTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』でのこと。太田は米軍基地の辺野古移設をめぐって、沖縄の民意を無視し、翁長雄志沖縄県知事に会おうとしない安倍首相をこう批判した。

「安倍っていうバカ野郎」「私は個人的に(安倍首相を)バカだと思ってますけど」「沖縄は日本ですよ。何で日本を守らないのあのバカは」

 これに対して、安倍首相を支持するするネトウヨ、ネトサポたちがヒステリーを起こし、「一国の首相をバカよばわりするとは」「芸人風情が政治に口を出すな」などといった的外れな論理で太田攻撃を展開したのだ。

 しかし、本サイト・リテラはもちろん、この太田の発言を全面擁護してきた。太田の「バカ」という言葉は、選挙で示された民意を踏みにじり、翁長知事に幼稚な嫌がらせをする安倍首相の政治的態度に向けられたものであり、当然の形容である、と。お笑い芸人が権力者を罵倒し、揶揄することについても、他の民主主義国家では当たり前に行われていることであり、芸能人がバッシングを恐れて政治的発言ができないこの国のほうが異常であると指摘。むしろ、そんな状況の中で、太田が自分の意志を鮮明にしたことを高く評価してきた。

 ところが、その太田が安倍首相の誘いに応じて、あんな権力者の宣伝のための宴にノコノコ出かけていたのである。しかも、当日の様子を見ても、さらに翌日のTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』のトークを聞いても、批評的な言動をした形跡はまったくない。

 それどころか、安倍首相のほうから近づいてきて「一緒に写真を撮りましょう」といわれ、隣でおどけたポーズをとったあげく、「番組に出てください」などと依頼。安倍首相から「もちろん」と快諾されて喜んでいる始末だ。

 なんだろう、この腰砕けっぷりは......。もちろん、嫌な予感はしていた。太田光という芸人はこれまでもこうした転向と日和見を繰り返してきたからだ。

 たとえば、10年近く前、太田は雑誌連載や単行本、さらにはラジオで、教科書問題、歴史認識、靖国神社などに踏み込み、右傾化の風潮を徹底批判していた。日本国憲法についても「人類が行った一つの奇跡」と敢然と擁護していた。

 ところが、2006年、こうした言動に対して右翼団体から抗議を受けると、太田の連載やラジオの発言から徐々に憲法や歴史認識などを扱う機会が減り始め、07年ごろには、こういうイデオロギー的なテーマに触れることはほとんどなくなった。

 また、最近も「NHKで政治ネタをボツにされた」と告発しながら、後になって「政治ネタをやらないというのは、打ち合わせの段階で僕らは了承している」「言論統制なんてない」と前言撤回している。

 こうした太田光の転向には、常に光代夫人の意向が強く働いているといわれ、今回も「バカ発言」の後に、光代夫人はツイッターで「無礼です。」「バカと言う言葉は、いけません。」と説教していた。

 そのため、本サイトも「(太田の安倍政権批判が)またしても光代氏によって封じ込められるとするなら、残念で仕方ない」と懸念を表明していた。しかし、まさか「桜を見る会」の招待まで受けるとは......。

 そもそも、安倍首相サイドが「桜を見る会」に太田光を呼んだのは、このお笑い芸人を懐柔しようという意図があったのは明らかだ。

 安倍政権になってからの「桜を見る会」の招待客の人選を見ていると、話題のタレント、人気がブレイクした芸能人以外に、ワイドショーや情報番組で発信力のあるMCやコメンテーターをターゲットにしている傾向がある。

 太田についても同じだ。『サンデー・ジャポン』(TBS系)という政治のニュースも扱う情報番組のMCをつとめ、ラジオ等で再び政治的発言を口にし始めていた。そんな芸人を取り込み、批判を封じ込めるために、これといった大きな話題がないにもかかわらず太田を呼んだと考えるべきだろう。
 
 そして、太田が「バカ発言」をした後も、官邸は招待をキャンセルすることなく、逆にわざとニュースになるよう安倍首相が太田にアプローチし、プラスのイメージを拡散させた。ようするに、太田は安倍首相の宣伝戦略、情報操作戦略に全面協力してしまったのである。この浅はかさにはもはや、言葉もない。

 しかも、こうした安倍首相の思惑に乗っかった芸能人は、太田だけではない。昼のワイドショーの中でも高い視聴率を誇り、官邸がマークしているという『ひるおび!』(TBS系)のMC・恵俊彰や、安倍首相の靖国参拝を「海外ではヒトラーの墓参りと受け取られる」と批判した春香クリスティーンも招待され、嬉々として駆けつけた。

 結局、権力者からのアプローチには誰もさからえないのか。今後、『ひるおび!』からさらに政権批判が減り、春クリが歴史修正主義批判を一切口にしなくなるような気がしてしようがないのだ。

 あ、それからついでに言っておくと、個人的にショックだったのは、ももいろクロ―バーZだ。ももクロは13年にもこの会に招待されているが、その年の夏に出版された古市憲寿の著書『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)に収録された対談で反戦への思いを語り、「日本でも、韓国にいいイメージを持たない人もいるのと同じで、韓国には韓国の言い分があるじゃん。もっとちゃんと韓国の言い分も知りたい。歴史のこととか」と、一方的な嫌韓の空気も批判していた。

 さすがももクロ、政権に尻尾をふって広告塔に接待役まで務めるAKBとはまったくちがうと思っていたのだが、今年、そのももクロが再びこの宴に参加して、安倍首相と仲良く写真を撮っている姿を見て、ああ、ももクロちゃんたちまであっち側に行ってしまったのか、とかなり絶望的な気分になったのである。そもそも、ももクロはおまえらの側にいねーよ、と笑わば笑え。筆者はとにかく期待していたのだ。

 実はこの「桜を見る会」のあった日、あるネトウヨらしき読者がリテラ編集部宛てに「ねえねえ、どんな気持ち?」とのコメント付きで会の模様を報道した記事を送りつけてきた。

 どんな気持ちか、だと? はっきり言おう。ちょっと鬱気味である。
(エンジョウトオル)