外国人にはなかなか理解できない漢字の意味と由来。「Chineasy」は、そんな複雑な言語を一目で学ぶことができる学習方法だ。この未来の学習法は、文化の理解にさえつながるかもしれない。本誌VOL.15(3/10発売)の総力特集「ワイアード・バイ・デザイン(WXD)」より転載。

「複雑な漢字を一瞬で学ぶ、未来の学習法「Chineasy」#WXD」の写真・リンク付きの記事はこちら

『Chineasy: The New Way to Read Chinese』
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Chineasyで学べる400以上の漢字を1冊に集めた書籍。大手出版社Thames&Hudson刊。イラストは、『WIRED』日本版の表紙などを手がけるグラフィックアーティストのノーマ・バーが担当している。日本ではamazonで購入可能。

グラフィックで漢字の成り立ちを理解しながら、中国語を習得できる学習法「Chineasy」を生み出した、台湾出身のシャオラン・シュエ。2014年2月、彼女は生まれ故郷でプレス向けの会見を行った。「中国語のネイティヴに漢字を教えるわけではないのに、台湾で記者会見をやるべきだったのかいまだに確信がもてません」と、彼女はそのときを振り返る。

会見後、現地の記者たち30人に取り囲まれたシュエは、記者たちを「テスト」した。「『女』という漢字は、何を表していると思いますか? と、記者たちに尋ねてみました。もちろん彼らは『女』の意味は理解しています。けれど、この漢字が床に伏せた女性が男性に向けて、おじぎをする姿が基になっていることを知っている人は、誰ひとりいませんでした」

Shaolan Hsueh | シャオラン・シュエ
台湾大学を卒業後、ケンブリッジ大学やハーヴァード大学ビジネススクールで学ぶ。2013年のTEDでのプレゼンをきっかけにChineasyのプロジェクトが広く知られるように。現在、Chineasyで培った学習法をベースに、14の言語の学習法を開発しているそうだ。chineasy.org

Chineasyの最大のポイントは、数千もの漢字を覚えやすくするために、漢字に意味を与えたことだ。「中国語は長い間、学ぶのが最も難しい言語のひとつとされてきました。膨大な数の漢字と、その複雑さが主な理由です」

現在はロンドンに暮らすシュエは、自分の子どもたちに中国語の読み方を教えるために、楽しく視覚的に学べる方法を探したが、そういった学習法は見つからなかったそうだ。「イギリス生まれの子どもたちに中国語を教え始めたとき、英語のネイティヴにとって、漢字を学ぶことがいかに難しいかを実感しました」と彼女は言う。「子どもたちにとって、中国語の勉強はまるで“拷問”だったのです」

そこでシュエは、数千の漢字を読み解くプログラムを開発した。漢字を部首などの小さなパーツに分けて、それぞれが互いにどのように関係しているかを分析するというものだ。「それは、まるでレゴでつくったお城をバラバラにするような作業でした」。漢字には重要な構成ブロックがあり、それらを組み合わせて、より複雑な熟語や文字を形成するのだと彼女はすぐに理解した。しかし中国語のネイティヴスピーカー以外が、そのような構造を理解するのは難しい。「そこでイラストを採用したのです」。

学習者が覚えやすくするために、それぞれの漢字をイラストで表現した。例えば、「人」という漢字は、もともと人が立っている姿を叉骨(鳥の胸のさこつ)のような形であらわしていたが、Chineasyでは「人」に頭と靴を付け加え、人が歩いている姿に見えるようにした。同様に、「大」という字は「人」に両手がついた直線が付け加えられており、人が大きさを表現する際に手を広げる様子を表現している。

最初のレッスンでは「口」「人」「木」などの漢字の意味を学ぶ。

各文字のデザインを開始する前、Chineasyのメンバーは、文字の意味や成り立ち、歴史を調べあげた。彼らのゴールは、漢字の構成ブロックを軸にストーリーを描くことであり、それによって、複雑な漢字もストーリーで理解を促せるのだ。「新しいイラストができるとすぐに、自分の子どもたちに見せました。子どもたちに見せたとき、すぐにどんな意味の漢字かわかれば、そのイラストが正しかったのだと確信し、字の意味がわからなければ、スタジオに戻ってやり直しました」

ChineasyはKickstarterから始まったプロジェクトだ。現在シュエは、書籍を出版し、スマートフォンやタブレット向けアプリもリリースする予定だ。書籍とアプリでは、学習者が中国語の基礎から学べる内容になっている。彼女は「Chineasyは、総合的な言語学習法の代替になるものではありませんが、未来の学習法の基礎として優れたものになると考えています」と語る。

彼女のゴールは、しばしば誤解と緊張を生む欧米とアジアの隔たりを埋めることだという。「欧米の人々が、自身の目を通して中国と中国文化に対する知識と理解を深めるようになることを願っています」。

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