「ソニーを変えていく道筋はできた」と平井一夫社長

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 一時は2年間で7000億円超の巨額赤字を垂れ流し、現在も経営再建中のソニーだが、ここにきて“V字回復”の期待感に包まれている。株価も実に6年ぶりとなる高値圏で推移。「一連のリストラにメドがつき、ようやく利益を生み出せる見通しがついた」(証券アナリスト)と評価する声がもっぱらだ。

 業績の好転は数字にも表れ始めている。2月に開かれた経営方針説明会では、2015年3月期(連結)の営業損益を従来の400億円の赤字予想から一転、200億円の黒字に上方修正している。さらに、平井一夫社長は新しい中期経営計画を発表し、「2017年度に営業利益を5000億円以上にする」と高らかに宣言してみせた。

 ここまで大幅な業績改善が見込めるのはなぜか。エース経済研究所の安田秀樹アナリストに聞いた。

「数字上はスマホ事業の不振により減損処理していた費用やリストラ費用などが減ってくることが大きいのですが、成長が著しい事業分野もあります。

 スマホのカメラに使われている画像センサーは、高性能化で世界一のシェアを握っていますし、家庭用ゲーム機の『PS(プレイステーション)4』も日本以外の欧米地域での販売が好調。この2事業だけでも2000億円規模の増益要因になると思います」

 平井氏も「画像センサー」「ゲーム」、そして「音楽」「映画」の4事業を成長分野に位置づけ、事業拡大と集中投資をはっきりと明言している。

 だが、ここで違和感を覚える人も多いはずだ。ソニーの本業であったテレビやビデオ、音楽プレーヤーといった消費者向けのエレクトロニクス(エレキ)製品の事業が一つも入っていないからだ。

 ソニーは昨年来、パソコン事業の「VAIO」を売却したりテレビ事業を分社化したりと不振部門を次々と本体から切り離してきたが、今後は本社を純粋持ち株会社として、エレキをはじめすべてを事業会社にしてぶら下げる方針を打ち出している。ここにはどんな狙いが込められているのか。

「これまでの経営スタイルだと、例えばウォークマンが何台売れてどのくらいの利益が出ているかは把握していても、部門別に資産を把握してウォークマンがどの程度利益に貢献しているのかといった細かいバランスシート分析をすることができませんでした。

 そこで、それぞれの部門を独立させれば、より収益構造がはっきりしますし、部門トップの責任も明確になります。もちろん、業績が振るわなければ外部の資本を入れたり、ソニー本体が持っている株を他社に譲渡したりするなど、事業を手放す選択肢も取りやすくなります」(前出・安田氏)

 儲からない事業はたとえソニーの礎を築いてきたエレキ事業であっても切り捨てる――。10年赤字を垂れ流してきたテレビ事業の売却について、平井氏が〈一切考えないということではない〉と含みを残しているのも、そんな腹があるからなのだろう。

 平井氏が掲げている分社化や、ROE(株主資本利益率)10%以上の目標は、いずれも少ない資本で最大の利益を上げることがベースになっている。だが、一歩間違えればソニーブランド消滅の危機を招きかねない。

「いくらセンサーが儲かるからといって、部品事業にばかり経営資源を投入していると、最終製品が売れなければ他社と共倒れする危険もある。シャープが液晶事業に頼り過ぎて躓いたのと同じ構図だ。いまは利益が出なくてもウォークマンを開発したときのように独創的な商品を育てなければ未来はない」(経済誌記者)

 前出の安田氏も、「ソニーは何の会社なのか、改めてビジョンを示す必要がある」と指摘したうえで、こう話す。

「平井社長は説明会で〈ソニーはお客様に刺激を与え続ける会社でありたい〉と熱を込めましたが、具体的なビジョンには全く触れませんでした。いま、短期的にV字回復できたとしても、今後も持続的な成長を目指すなら、“ソニーブランド”の革新的な新製品が次々と出てこなければ厳しいでしょう」

 徹底的な効率経営で、今後のソニーはどう変わるのか。完全復活を印象づけるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

●撮影/横溝敦