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●『ガンダム』や『仮面ライダー』ではなく、なぜ海外の映画作品だったのか皆さんは、バンダイから発売中の「クレイジーケース」シリーズをご存知だろうか。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する「デロリアン」や、『バットマン』に登場する「バットモービル」などを模したiPhoneケースなどがラインナップされているケースブランドである。この説明だけ聞くと「ふーん。そうなんだ」という感じかもしれないが、実物を見ると「えええっ!?」と驚いてしまうに違いない。

なぜかって、めちゃくちゃ精巧に作られているのだ。以前、縁あっていくつかの「クレイジーケース」をレビューする機会を得たのだが、そのクオリティの高さたるや、箱から出すなり「マジかよ……」と思わず苦笑いしてしまうほどであった。特に『スター・ウォーズ』のミレニアム・ファルコンICカードケースは、オフィシャルの設定資料をもとに作りこんだらしく、映画に出てこなかった部分まで完全再現。外装はもちろん、ほんの数ミリしかないアンテナ内部のパーツまで完璧に作られていたのには心底驚かされた。

こだわっているのは見た目ではない。例えば「バットモービル」のiPhoneケースは、iPhoneのライトをつけることでバットシグナルが点灯するし、タイヤ部分をスライドさせることでカメラを露出させるというギミックが搭載されている。「ミレニアム・ファルコン」ICカードケースに至っては、ICカード端末にタッチすることで、本体後部がハイパードライブをイメージしたブルーに発光するようになっているのだ。すごすぎて笑えてくる。

薄々感づいているかもしれないが、これらのギミックには「かっこいい」という以上の意味は何もない。ということはつまり、開発者は「ケースとしての機能性を高めるためにギミックをつけた」わけではなく、「つけたいからつけた」ということになる。要するに、「クレイジーケース」とは、純度100%の「作品愛」が生み出したシロモノなのだ。

……ていうかこれ、どんな人が作ったんだろうか。そして、その人の頭の中はどうなっているのか。いろいろ気になって仕方ないので、直接バンダイにお邪魔して話を聞いてみることにした。インタビューに応じてくれたのは、本シリーズの仕掛け人である開発者のボーイズトイ事業部グローバルチームサブリーダー・矢野航亮氏と、ジョンズ・パトリック氏、プロモーション担当の事業戦略チームサブリーダー・大田原智康氏だ。

○なぜiPhoneケースだつたのか。生まれた経緯

――まずは「クレイジーケース」が生まれた経緯から教えてください。

矢野:私はもともとフィギュアが好きなのですが、自宅に飾るだけでなく、もっとオープンなあり方――日常生活の中でもっと"見せていく"場面があってもいいのではないか、と以前から思っていました。そこで思いついたのがiPhoneケースです。iPhoneケースには、さまざまな商品がありますが、かっこいいものや面白いものは意外と少ない。それならかっこいいフィギュアと組み合わせることで、大人が持ち歩ける面白いガジェットを生み出せるんじゃないかと考えたのです。

――"見せる"ということなら、常に持ち歩くことになるiPhoneケースはぴったりですね。ただ、なぜiPhoneケースだったのでしょう? 他にも持ち歩けるものはいろいろあると思いますが。

パトリック:他の案として、ポーチや筆箱もありました。ただ、市場の大きさを考えると、やはりiPhoneはシェア率も高いですし、日常生活にはかかせないものです。話題にもなりやすいですし。

――となると、次になぜ『バットマン』や『スター・ウォーズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といった海外の映画作品だったのか――というコンテンツの選択についてはどうでしょう。例えば、まず商品化を考えた時、バンダイが持つ強力なIP『ガンダム』や『仮面ライダー』などのアイデアはなかったのでしょうか?

矢野:もちろん候補には挙がっていました。ただ、まずは"大人"を夕ーゲットに突き詰めることにしました。大人が持っていてイケてるもの、オシャレ感を感じるものにしたかった。そうすると世代的にも「バットモービル」や「デロリアン」はファンも多いし、見た人が誰もが憧れますから。

大田原:『ガンダム』や『仮面ライダー』も、今や世代をまたいで人気を獲得している日本産のコンテンツなので、純粋な国内市場を考えれば、選択としてはありえますね。

矢野:そういった中で第一弾を「バットモービル」にしたのは、iPhoneにばっちりはまりそうな形をしているので企画しやすかったということもあるんですよ。

――「バットモービル」を見て「iPhoneにはまりそう」という発想もなかなか出てこないと思いますが……(笑)。

矢野:そうですかね?(笑)。

――ただ、こうして立体化されるものを見ると大きさもちょうどよく、iPhoneケースでなくとも、フィギュアとして普通にありそうなサイズです。

矢野:そこもボイントですね。iPhoneはモデルが変化していくので、ケースもいつか買い換えることになります。そういう中で「クレイジーケース」は、造型的にも完成度が高いので、ケースの役目を終えた後も、普通にフィギュアとしてディスプレイを楽しめるんです。

大田原:仕事によっては「クレイジーケース」をつけられない方も、逆にプライベートと仕事で付け替えるという楽しみ方もできますね。

●泣く泣く断念した「デロリアン」のギミック――確かに。これだけクオリテイが局いなら、飾っておきたいとも思えます。

矢野:ただ、やはり一番はiPhoneに装着して持ち歩いてほしいです。例えば会議や飲み会の時に机の上に置いておく。そういうシーンでも、普通のケースよりも絶対「バットモービル」や「デロリアン」の方がかっこいいのは問違いない! 取引先でさりげなく出したら、「おおっ! ってなりますよ(笑)。営業の話のタネとしてもぴったりじゃないでしょうか。

――「バットモービル」が出てきたら「えっ!?」っと驚きますね。

矢野:でしょう! しかも光ったり動いたり音が鳴ったりしますからね。めちゃくちゃかっこいい!

○ギミックへの情熱とこだわり

――そのギミックについてもお聞きします。身も蓋もないことを言ってしまうと、触っていて楽しいけれど、iPhoneケースとして必要なギミックではないですよね。どうしてケースにギミックをつけようと?

矢野:人によっては無駄だと思うかもしれませんが、このギミックこそが「クレイジーケース」の真骨頂です。私が原作映画の大ファンということもあり、ファン目線ならここを再現してほしいと思う部分を突き詰めました。

例えば「デロリアン」なら、ワープの発光ギミックは絶対に必要なんです。造形的に「ミスターフュージョン」(突出した原子炉)はなくした方がいいという話も出たのですが、それじゃダメなんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』ではミスターフュージョンがゴミ箱になっていて、あそこに燃料を入れるのが良いんですよ! だから絶対残しましょうと押し切りました。

――情熱が伝わってきます(笑)。

大田原:ちょっと変わったケースだけなら他にいくらでもありますが、ここまで精巧に再現しつつ、これだけのギミックを取り入れることは技術的にもバンダイにしかできないことだと思います。これまでに玩具で培ってきた企画やデザイン、設計などの技術を注ぎ込みました。

――ギミックで苦労したことはありましたか?

矢野:iPhoneケースとしての仕様上、仕方なくあきらめたこともあります。「デロリアン」のボンネットは、普通の車と逆で前に向かって開く。なので商品でもそういうギミックをつけて、開いたところからカメラを出そうとしたのですが、どうやってもiPhoneの写角と合わない……これは泣く泣く断念しました。

――ここまで趣味性の強い商品なら、いっそのことカメラ機能は無視するという案はなかったのですか?

矢野:それはダメです! なぜなら、そんなケースを私は使いたくないですし、造型だけなら弊社でなくても作れます。これだけのギミックを搭載していながらも、きちんとカメラが使えて、指紋認証もできて、操作しやすいiPhoneケースにしたかったのです。

パトリック:他にも、ヘッドライトを光らせるためのアクリルパーツが入っているのですが、普段はこいつがカメラを覆ってしまっているんですよ。だからカメラを使おうとしたらアクリルパーツをスライドさせて開けてやらないとダメです。この調整が本当に大変で大変で……。

矢野:できた時は感動したよね。できたーーーーーーーー!!!!! って。

大田原:iPhoneの底面もきちんと空けてあるんですよ。イヤホンやLightningケーブルと干渉することなく使えるんです。

パトリック:「バットモービル」の方も iPhoneを固定しているバックルにこだわっています。ホームボタン部分を空けてあるのですが、そうすると指紋認証するのに指が届かない。そこで、ホールの縁を斜めにカットすることで指が入るようにして、バックルをつけたまま指紋認証できるように調整しました。

矢野:この径を調整するのがめちゃくちゃ大変で……。

パトリック:何度も直しましたよね。

――そこまで苦労しても付けたかった、と。

矢野:欲しいでしょう! 「iPhoneを守れ!」みたいな。

大田原:僕らは考え方が基本的にボーイズトイだよね(笑)。

矢野:後はケースをつけたままコントロールセンターを呼び出せることも、かなり苦労しました。iOSの仕様で、こちらからはコントロールできないこともたくさんあります。

――そこはもう、どうしようもないところですよね。

パトリック:企画が動き出したときは、iPhone5用に開発していたのですが、その後iPhone6が出るという話になり、改めて開発し直しましたからね。

矢野:やっぱりiPhone6でしょうと。でも単に拡大すればいいわけじゃなくて、中の構造からすべて変更しないといけなくて、これもすごく大変でした。

大田原:苦労話は尽きませんね(笑)。

●YouTubeはバンダイトップクラス! 海外からも大きな反響――完成度の高さを目の当たりにすると、苦労された結果がしっかり形になっていると感じます。ギミックもそうですが、造型としてもすごいですよね。ディテールの再現度には驚かされます。こんな表面の細かい部分まで作りこむのか! と。

矢野:ありがとうございます。iPhoneケースというと、皆さん「だいたいこんなもんかな」と想像するじゃないですか。それを超えたかった。実際、再現度には自信があります。とはいえ、実際はやはりiPhoneケースとしての制約があるので、本物に比ベると若干のデフォルメがかかっているんですよ。

例えば「デロリアン」のiPhoneケースは、車体横のシルバーと黒の比率が本物とは違っている。なぜかというと、iPhoneが入らないといけないので、本物よりも車高が高くなってしまいます。「デロリアン」なので本当は薄くしたいのですが、構造上どうしようもないのです。そこで車体の黒の比率を多くすることで、ボディを少しでも薄く見せることができました。ここは何度も修正したところですね。

――ものすごいこだわりですね。

○YouTubeはバンダイトップクラス! 海外からも大きな反響が

パトリック::かげさまで映画会社の皆さんにも好評をいただくことができました。先日、「デロリアン」をユニバーサルスタジオジャパンに持っていったのですが、すごく反応がよくて、めちゃくちゃびっくりされました。

矢野:バンダイ社内でも使っているのですが、そっちの反応もすごいです。「今まで一番いい仕事をした」なんて言われますよ(笑)。

――ちなみに、なぜ「クレイジーケース」というプランド名に?

大田原:ブランドとして覚えやすいことと、海外で販売しても内容が伝わるからですね。

――実際、海外での反響も大きいと聞いています。

大田原:そうですね。「デロリアン」の PVはYoutubeで60万再生されて、バンダイトップクラスの再生数になりました。コメント欄もほぼ海外ユーザー様からの書き込みなんです。「なんてクレイジーなんだ!」なんてコメントがあるとうれしくなりますね(笑)。これだけの造形とギミックを詰め込んだケース、全世界を探してもここにしかないでしょうからね。

矢野:友人が「クレイジーケース」を持ってニューヨークへ行ったらしいのですが、お店に入ったら店員さんにすごく驚かれたそうです。

――わかります(笑)。ただ、こうした尖った企画は前例がないわけですから、果たしてヒットするのか不安になりませんでしたか?

矢野:ヒットするという確信は正直なかったですね。でも、何より自分が欲しかったんですよ。自分だったら買っちゃうんだから、じゃあ皆、欲しいはずだよなと(笑)。

○尖った企画はどのようにして生まれるのか

――こうしたアイデアは、どのようにして生み出されるのでしょう。アイデアについて心がけていることはありますか?

矢野:単純に言えば、常に考えることです。私は机の前に座って考えるのは苦手で、町を散歩したり歯磨きしたり、音楽を聴いたりしている時に思い浮かぶことが多い。それから、雑誌や映画を見たり、漫画を読んだりと、流行っているものにはジャンル問わず触れておくのは大切でしょう。ただし、トレンドを追うだけではダメです。トレンドはすぐ過去のものになってしまいますから。むしろ過去のトレンドを見ることで、周期的にやってくるブームを読むことが重要です。

「デロリアン」にしても、2015年は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の未来にあたる年ですから、盛り上がることはわかっていて、2年前から企画をスタートさせていました。一歩先を行く発想を心がけています。

――そんな矢野さんはまもなく香港勤務になるそうですね。今後挑戦したいことなどありますか。

矢野:最近、アジアでも日本のアニメや特撮が人気なんです。文化は違っても、面白いと思う瞬間って、国籍はあまり関係ないと思います。香港ではアジアの子供たちが夢中になれる商品を生み出せたら最高ですね。

ファン目線の作りこまれた造型と、こだわりのギミック、そして実用性を兼ね備えた「クレイジーケース」は、担当者の熱い情熱があったからこそ生み出された商品だった。果たして、今後はどんな"クレイジー"なケースが登場するのだろうか。

2015年6月発送予定『CRAZY CASE TAB BATMOBILE PREMIUM COLOR EDITION(クレイジーケース タブ バットモービル)』と『CRAZY CASE TAB MILLENNIUM FALCON PREMIUM COLOR EDITION(クレイジーケース タブ ミレニアム・ファルコン)』、そして『CRAZY CASE BACK TO THE FUTURE II DELOREAN TIME MACHINE(クレイジーケース バック・トゥ・ザ・フューチャーII デロリアン タイムマシン)』は、現在「プレミアムバンダイ」にて予約受付中。

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(山田井ユウキ)