地方が元気になる 自治体経営を変える改善運動

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英国のエコノミスト誌編集長をつとめるジョン・ミクルスウェイトらが執筆した「増税よりも先に『国と政府』をスリムにすれば?」(講談社 2015年1月 原題:THE FOURTH REVOLUTION〜THE GLOBAL RACE TO REINVENT THE STATE)は、自由主義を信奉する立場から、国家の肥大化の制御の重要性を指摘し、行政サービスの効率化を提言する。著名な経済学者ウィリアム・ボーモルは、公共部門に典型の「労働集約型」の作業は生産性が上がりにくいと指摘していたという。その改善策は、国有資産の売却、特定の利権団体への補助金の廃止、給付金制度(社会保障、高齢者向け医療保険、低所得者向け医療費補助)のスリム化だとし、テクノロジーを生かした公共サービスの効率化がカギだという。

日本では、総務省が現場レベルの業務改革に取り組みはじめ、本年4月に「クオリティを追求し自ら変革を続ける行政の実現に向けて」(行政イノベーション研究会報告書1.0(第一次報告書))を公表した。

地方自治体、特に市町村は、多くの現場を持ち、市民に直面していることから、その業務改善運動(カイゼン)の動きはかなり前から進んでいる。地方公務員向けの月刊実務情報誌「ガバナンス」(ぎょうせい)では、各地の自治体の様々な分野での意欲的な取組みが紹介されるほか、有力な論者が自治体実務に関連した有益な論考を毎号寄稿している。

阪神大震災の被災経験から行政経営改革へ動き出す

また、自治体職員による自発的な業務改善運動には、全国都市改善改革実践事例発表会やカイゼン・サミットという年一度の全国レベルでの関係者が集まる場も存在する。本年3月27日開催の新潟県三条市での第9回発表会(越後三条カイゼン工房)には39自治体が参加し、翌日には新潟市で第5回カイゼン・サミット2015 in 新潟が開催された。前者の発表会は、自治体間で取り組んでいる事例を共有することに眼目があり、後者は運動自体を進化させていくために、全国の「同志」が腹を割って話す場を提供している。「K-NET」(メーリングリスト)は改善運動を進める「同志」の自発的なネットワークだ。

この取組に参画している有志が、平成25年に「自治体カイゼンマネジメント研究会」を組織し、その成果を今般世に問うたのが「地方が元気になる 自治体経営を変える改善運動」(元吉由紀子編著 東洋経済新報社 2015年4月)だ。ホームページ「自治体改善の輪」やFacebookでの取組も開始した。編著者の元吉氏は、阪神大震災の被災経験から、組織・地域を越えて連携する必要性と公務員がコーディネート機能を果たす重要性を痛感し、生活者起点で時代最適に進化し続ける自治体になるよう、行政経営改革のプロセスを職員と一緒につくっている。元吉氏の他の著作である「どうすれば役所は変われるのか」(日本経済新聞社 2007年)や「期待される役所へー行政経営のムリ・ムダ・ムラを突破する」(ぎょうせい 2012年)もこの観点で書かれた良書である。本書では、各自治体で改善運動を実践した自治体職員6名が6都市の実践事例(さいたま市、埼玉県所沢市、東京都中野区、横浜市、三重県、福岡市)を熱く紹介する。「公務員革命―彼らの<やる気>が地域社会を変える」(太田肇著 ちくま新書 2011年)で、地方公務員のモチベーションを改善し、積極性を引き出すことの重要性を指摘していたが、まさに、「カイゼン」がそれだろう。このような取組みを皆で後押しすることが「地域創生」の取組にも大きく貢献するものと確信する。

経済官僚(課長級)AK