世界最高のプレイヤーが集うマスターズが幕を閉じた。初日からトップを譲らなかったジョーダン・スピースが通算18アンダーと驚異的なスコアで優勝。唯一の日本人選手、松山英樹も通算11アンダー5位と大健闘した。

 今回はその激闘から離れて、ティーチングプロ、ヨッシー小山さんがギャラリー目線で「マスターズ」の違う魅力を伝えてくれた。

※ヨッシー小山
 アメリカLPGA ClassAティーチングプロフェッショナル。2000年からから家族に帯同してアメリカに移住。「子供が学校の間にゴルフ」のスタイルで3年目にはシングルプレーヤーになり、5年目でアメリカLPGAティーチングプロに。
 カリフォルニア州サンノゼを中心にレッスンを展開し、2011年に日本へ帰国。帰国後はWEBレッスン番組「美☆スイングゴルフ」に出演し、ジュニアやレディースを中心に力を注いできたが、2015年よりVision54認定コーチとして、笠りつ子プロや藤本麻子プロを始め、ツアープロやトップアマチュアへのメンタルアドバイスも行っている

 水曜日(4月8日)のスペシャル・アトラクション「パー3コンテスト」が終わると、木曜日から本戦が始まり、これまでのサービス心あふれる和やかな光景からうって変わって、選手も真剣モード。

 本戦からはカメラ持ち込みも禁止となり、観客も選手のショットの前には静かになり、ルールをわきまえて、観戦を楽しみます。

 お目当ての選手に付いて回る人、お気に入りの場所に座ってやってくる選手を見る人、適当に場所を変えながら歩き回り、その時にプレイしている選手を見る人......観戦の仕方は人それぞれ。私が本戦初日、観戦の場所に決めたのは、「アーメンコーナー」。

 オーガスタ・ナショナルGCは11番ホールから13番ホールがゴルフ場のコーナーになるよう設計されていて、グリーン回りのクリークには橋が架かっています。

 赤・白のアゼリア、緑の木々、真っ白なバンカー......その景色のきれいさは一際見事で、ここはポスターにもなっている代表的な美しい場所です。しかし、選手にとってはピンの位置が難しいだけでなく、落としどころを少しでも外すとグリーンからクリークにボールがこぼれ落ちたりもするため、ここが勝敗を分ける運命の分かれ道! まさに「アーメン」と選手たちの祈りの声が聞こえてきそうなホールなのです。

 練習ラウンド時には3分咲きほどだったアゼリアが本戦のころにはすっかり満開になっていました。まぶしい夏のような日差しの中で、白〜薄ピンク〜濃いピンク〜赤のグラデーションが見事に映えます。ジョージアならではの大きな雲の流れ、小鳥のさえずり、そして、湿気のある暑さを忘れさせてくれる心地よいそよ風......こんな景色や自然をも楽しみながら、設置した椅子に座って、やってくる選手たちのアーメンプレーを堪能したのでした。

 クリーク越えの時やグリーンからこぼれ落ちた時のアプローチは「低い弾道で止める打ち方」が主流になっていました。ティーチングプロとして「これは帰ってから、すぐみなさんに紹介しないと!」と、食い入るようにスイングを見ている自分がいました(笑)

 今回は練習ラウンド2日、本戦2日という4日間の観戦日程で来ていたので、第1組から最終のグループまで一か所でしっかり見届けた次の日、つまり予選2日目は、お土産屋でショッピングを楽しんだり、流れていく人の波を横目に、カフェでご一緒した老夫婦やグループの方たちとの会話を楽しんだり、これからコースに出ていく試合前の選手たちの練習風景を芝に座って眺めたりという時間を過ごしておりました。

 カフェは会場内に何か所か設置されていて、ラインに並んでレジまで進みながら、好きな食べ物や飲み物を取っていく形で購入します。

 去年よりも少々値上がりしましたが、それでもポテトチップスやマフィンは1ドル、サンドイッチも1ドル50セント〜3ドル50セント、ソフトドリンク1ドル50セント、ビールも4〜5ドルという安さ。ジョージア州の食べ物は日本人の口に合う味付けのようで、ここで食べるものは、かなりおいしく感じます。特に玉子サンドやブルーベリーマフィンは日本の味そのものかと思うくらい、違和感なくおいしいです。

 飲み物は水ボトルとコーヒー以外はオリジナルのプラスティックカップに入っていて、飲み干したあとのカップは持ち帰れるのでお土産にする方も多く、カフェひとつとってもなかなか楽しいのです。

 ここで買ったものは、外のテーブルだけでなく、好きな場所に持っていって観戦しながら飲食ができます。いつもすごいなあと感心するのは、これだけ飲食自由になっているのに、会場内にごみが落ちていることがほとんどないこと。そこここにごみ箱が設置されているということもありますが、観客一人一人のマナーの良さも素晴らしいのだと思います。

 これまた感心なことに会場内数か所にあるトイレもいつもきれい!
 
 これだけどこもかしこもきれいなのは、この大会、このコースがパトロンやボランティアや観客、すべての人々に本当に愛されている証拠ですね。

 会場入り口近くにあるお土産屋さんにも足を運びました。常ににぎわっていて、時間によっては長蛇の列! わざわざ並んでまで荷物を増やすのもどうかと、到着日にある程度買うものの目星をつけて、帰る日にまとめて買おうと思っていたら、既に売り切れなんてものも! いやはや、お土産は最初のころに買うものだという学びもあったり(笑)。

 練習場にも行きました、木の陰になっている芝の上に腰を下ろし、そこで涼みながら選手たちのアプローチ練習を眺めていると、目の前にやってきたのはローリー・マキロイ。私がいた場所からロープを挟んで2mくらい。話す声まで聞こえる間近さで、世界ランク1位の選手の練習を見ることができました。

 こんなあり得なさそうなことにいくらでも遭遇できて、選手も惜しみなく技の数々を見せてくれる。マスターズはやっぱりすごいい!!

 今年は練習場やコースで、ほぼ全員の選手を見ることができ、ガソリン満タンになったような満ち足りた気持ちで会場を去ることができました。

 以上になりますが、前回のレポートで、私が「マスターズは"ゴルフワンダーランド"である」と書いた理由をおわかりいただけたでしょうか?
 
 世界最高峰の舞台で繰り広げられる最高のプレイ、そして世界最高の盛り上がりを見せるゴルフトーナメント「マスターズ」。選手のスーパープレイだけでなく、景色の美しさ、ごみ一つ落ちていない会場のきれいさ、観客のマナーの良さ、パトロンや選手たちとの一体感......

 テレビには映らないけれど、来た人にしか味わえない素晴らしさがここにはたくさんあります。何度訪れても新しい感動と驚きをもらえる、最も心躍るエキサイティングな場所、それが「マスターズ」なのです!

ヨッシー小山●文 text by Yoshie Koyama